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狭間の濃霧
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矢の刃は長く、手を伸ばしても刃の部分までしか届かずに断念したり、シャツを思いきり引きちぎろうとして引っ張れば、引っ張る方向を間違えてシャツで自分の首を絞めたりと、おかしな事になっていたのだ。
かと言って立ち上がろうとすれば、鋭く長い矢に肩を切られてしまう。タカオ1人ではどうにもならなかった。
「紙一重でそんな刺さり方をするとは、さすがですね。シアの為に本当に申し訳ない。……あなたには、感謝しても感謝しきれないほどです」
ライルは涙を拭うと真面目な顔で言う。けれど、タカオはライルの感謝の言葉など聞こえもしない。
「早く助けてください!」
それだけ言うと疲れきったようにぐったりとしてしまった。
あまりにもぐったりとするので、ライルは慌ててタカオを壁からようやく引き剥がした。タカオはぐったりとしながら、先程の感覚が消えずにいた。
物音がよく聞こえて、それがなんだか違和感のする音になって聞こえてくる。遠くで聞こえた音がすぐ近くで聞こえているようだった。何かのフィルターを通したようなくぐもった音や、はっきりと聞こえる音もあった。
タカオは頭がぐらぐらとして、気持ちが悪くなってしまった。そんな状態でも、ライルの声はよく聞こえる。
けれどおかしい。ライルの声で何か他の事を言っているのだ。それは頭の中で重なるように響いている。
いつかライルに言われた言葉が、出てきては消えて、そして実際のライルの声が聞こえて、タカオの頭の中はぐるぐるとライルの声がいくつも重なってく。
「金色の瞳を片目に持つ者は、精霊に認められ守られる者……」
食事の時に聞いた言葉だ。
ーーどんなことがあっても、闇の者に攻め入られはしません。エントがいるかぎり安全です。ですから地下に……。
初めて聞く話、けれどそれはライルの声だった。
「そうしてその者は……」
ーーグリフォン。あの子を助けられるのは、あなただけです……。
さっき聞いたライルの声と、いつ聞いたのか分からないライルの声が重なっていく。
ーーエントはずっと悔やんで……たとえ偉大な力を失っても……彼は……。
「他の者を守る、精霊と共に」
その言葉を最後に、暗闇が襲った。
かと言って立ち上がろうとすれば、鋭く長い矢に肩を切られてしまう。タカオ1人ではどうにもならなかった。
「紙一重でそんな刺さり方をするとは、さすがですね。シアの為に本当に申し訳ない。……あなたには、感謝しても感謝しきれないほどです」
ライルは涙を拭うと真面目な顔で言う。けれど、タカオはライルの感謝の言葉など聞こえもしない。
「早く助けてください!」
それだけ言うと疲れきったようにぐったりとしてしまった。
あまりにもぐったりとするので、ライルは慌ててタカオを壁からようやく引き剥がした。タカオはぐったりとしながら、先程の感覚が消えずにいた。
物音がよく聞こえて、それがなんだか違和感のする音になって聞こえてくる。遠くで聞こえた音がすぐ近くで聞こえているようだった。何かのフィルターを通したようなくぐもった音や、はっきりと聞こえる音もあった。
タカオは頭がぐらぐらとして、気持ちが悪くなってしまった。そんな状態でも、ライルの声はよく聞こえる。
けれどおかしい。ライルの声で何か他の事を言っているのだ。それは頭の中で重なるように響いている。
いつかライルに言われた言葉が、出てきては消えて、そして実際のライルの声が聞こえて、タカオの頭の中はぐるぐるとライルの声がいくつも重なってく。
「金色の瞳を片目に持つ者は、精霊に認められ守られる者……」
食事の時に聞いた言葉だ。
ーーどんなことがあっても、闇の者に攻め入られはしません。エントがいるかぎり安全です。ですから地下に……。
初めて聞く話、けれどそれはライルの声だった。
「そうしてその者は……」
ーーグリフォン。あの子を助けられるのは、あなただけです……。
さっき聞いたライルの声と、いつ聞いたのか分からないライルの声が重なっていく。
ーーエントはずっと悔やんで……たとえ偉大な力を失っても……彼は……。
「他の者を守る、精霊と共に」
その言葉を最後に、暗闇が襲った。
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