契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

文字の大きさ
上 下
211 / 272
新たなる風

15

しおりを挟む
「こうやってみると、なんだか親子みたいですね」

 タカオはレノにそう言う。暴れる2人をレノは微笑ましく見つめながら、近くの木のベンチに腰掛ける。

「昔ね、王子が身寄りのないグリフをつれてきて、色々あったけど、最後はライルにグリフを預けたの。でも、本人にはきっぱりと断られてるのよ。あの子、迷わず言うの。断るって」

レノはおかしそうに笑うと続けた。

「それでも私たちには、もうずっと前からグリフは家族だわ。グレイスも、イズナもね。これまで全然顔を見せないから、どれだけ心配したか」

 レノはイズナに視線を送る。イズナは居心地が悪そうに視線を逸らしていた。そうこうしている間にライルはグリフに逃げられ、地面にへばっていた。

「あら、また逃げられちゃったみたいね」

 レノは腰をあげると、イズナに手伝ってもらいながら、ボートに乗り込む。レノの話を聞いて、タカオの中にはふいに迷いが生まれていた。

「レノさん、心配じゃないですか?シアンやシアだけで森へは行かせないでしょう。彼らもここにいるほうが安全だとしたら……」

 家族だと言うのなら、グリフやイズナもこの村にとどまるべきではないだろうかと、自分が向かおうとすることに、巻き込むことを恐れていた。

 イズナが何か言いたそうにしていたけれど、それよりも先に、レノは本当に輝くほどの笑顔で、タカオを見上げていた。

「シアンとシアを助けてくれて、なんてお礼をいえばいいか分からないほどよ。ありがとう」

 それから目を鋭くした、凛とした視線をタカオに投げる。

「でも、グレイスやグリフ、イズナを無理に止め置くことはできないわ。この子達は、いつも自分達のやることを決めて歩くのよ。その危険さも、責任も、分かっていて進んでいるの」

 タカオはつい、思いだしていた。ウェンディーネの湖に向かうまえ、グリフが倒れた時のことを。あのイズナの冷静さを。

ーー覚悟があるんだ。危険なことも、その責任が命と引き換えになることも。分かっていて進んできたんだ。彼らは。

「止められるはずが、ないですね」

 タカオはそう呟いて、息を吐き出した。レノは答えをもう知っているかのように聞く。

「あなたも、そうなのね」

 レノの声がタカオに返ってくると、タカオは静かに頷いた。

「それなら、私たちにできることは、止めることじゃないですね」

 そう言ったのはライルだった。ライルはボートに乗り込み、タカオを見上げる。

「手を差し伸べることも嫌がられていますし」

 ライルはグリフに殴られただろう腹をさする。

「彼らが自分達のやり方で道を進んでいくのなら、私たちも、私たちのやり方で進むだけです」

「私たちのやり方って?」

 タカオがそう聞こうといいかけた時、ユミルの家からシアンとシアがライルとレノを呼んでいた。

「ああ、もう行かなきゃ。それじゃあ、タカオさん。また明日」

 ライルはそう言うと優しい笑顔を見せてユミルの家に向かった。ライルの船が小さくなると、タカオは、自分が今、困った事態に陥ったことに気が付いた。

 グリフは先ほどのライルとのやり取りで姿を消していた。イズナはライルの船に乗っていたし、ジェフも姿が見えない。

「みんなどこで寝泊まりしてるんだ?」

 人の家の庭先で、タカオは1人途方にくれていた。
しおりを挟む

処理中です...