職業・種付けプレス士ですが、貴方の奥さん寝取っても大丈夫ですか?

黒瀬るい

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 それから俺も風呂に入って、バスローブ一丁になる。

 そうして――なんにせよまずは実践。
 ということで、石井さんと椿さんのセックスを目の前で見ながら俺は思う。

 ――へっっっったくそだなコイツ。

 へったくそ。
 マジでへたくそ。

 誰が下手くそってそれはもちろん石井さんだ。
 今どき珍しいぐらいAVかぶれのセックスの仕方だった。
 乳首は強く抓ればいいと思っているし、ガシマンが正義だと思ってる。
 あ~~~椿さんいたそ。というかてめぇ自分のアナルそんなにガシガシされてぇかよ、という言葉は一応飲み込んだ。仕事だからね。

 挿入も、まぁ、うん。椿さん感じてないね? って感じ。腰の振り方が悪いのな。ピストンするたんびにぺちぺちいってる金玉の音がこのうえなく滑稽だ。

 まぁ一番酷いのはやっぱり前戯だ。あんな前戯じゃあ、挿入への期待を高めることなんて無理だろし、そうなれば挿入したときの快感だってかなり弱いはずだ。

 事実、椿さんは全然気持ち良さそうじゃない。あ~演技だね、ってわかる喘ぎ声だった。

 そうこうしているうち石井さんがフィニッシュした。セックスが始まって20分。いや短すぎる。前戯込みで20分は、今まで見た中でも最短だった。

「ど、どうでしたか……」

 肩で息をしながら石井さんがこちらを振り向いた。椿さんも椿さんで、セックスの余韻なんて微塵もないと言わんばかりにすぐに起き上がる。

「う~ん……、……そうですねぇ、基本的には、俺がクライアントを抱いてレクチャーするって感じなんですけど……」
「えっ!? そうなんですか!?」
「そうなんですよ~」
「まさか、そんな、嘘でしょ。てっきりこう、言葉のやり取りでするのかと思ってたんですが……」

 その通りです大嘘です。
 そんな寝取られみたいなこと。禁止されてはないですけど、基本的にやってはいけないんです。

「言葉だけだと伝わらないことも多々ありますからね。だからこそ実技、実践なわけです」
「そ、そんな……」
「まぁでも大丈夫ですよ。だって奥様、旦那様とのセックスですごく喘いでらしてましたから」
「で、でも……」

 石井さんが俯く。
 その隙に、ベッドの上で、気遣わしげにこちらを見つめる椿さんに視線を投げる。

「奥様はどうですか?」
「えっ……」
「旦那様とのセックスに満足いっている、というのならレクチャー無しでももちろん大丈夫です。でも……」

 ――でも貴方、満足していないでしょう?

 言外の意図を感じ取ったらしい椿さんからは戸惑いの気配を感じる。

「あの……少し、だけ、お願いできませんか」

 俺は椿さんに問いかけてるのに、しゃしゃり出てきたのは石井だった。
 セックスが下手な男はこういう傾向がある。
 こっちは奥さんに聞いてんのに。それを遮って自分のことを話し始めるのだ。

「……大丈夫ですよ。椿さんはどうですか?」
「あ……、わ、私からもお願いしたいです……」
「わかりました。ではそうですね……最初からやってみましょうか」
「……最初から……?」
「そうです」

 もう石井の方など見ずに、椿さんの隣に座る。
 彼女の瞳が揺れる。困惑と、これからする行為に期待するような揺れ方だった。

「キスするところから……なんだったらその前から。女性はその場のムードすら快感として拾うんです。だから、そういうところから」
「な、なるほど……? ではそれでお願いします」

 だからお前には聞いてないんだよ。
 椿さんに代わって答えた石井さんに内心毒づきつつ、改めて椿さんを見つめる。

「ではそういうことで、……奥様、いえ、椿さん。そうですねぇ……、……ただするだけでは参考にならないでしょうし、ちょっとロールプレイやってみましょうか」
「……ロールプレイ……?」
「そうです。今だけ、貴方の夫は俺ということにしてください。そうすることで、石井さんも、夫がどういう振る舞いをすれば妻をドキドキさせられるか、わかるはずですから」

 石井さんから返事はない。なら肯定と取っておこう。

「……では改めて椿さん。いいですか、ここからは俺を、本当の夫だと思ってくださいね」
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