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しおりを挟む「ええと、それで。今夜のことは旦那様からお聞きしていますか?」
「あっ……はい。あの……種付けプレス士の方に、せ、……セックス……のレクチャーをお願いした、と……」
ベッドの上。俺の隣に座る椿さんは、頬を少し赤く染めながらもじもじとと答えた。それを見て俺は、思う。
――やばい。そそる。やばい。
喉元まで出かかった欲望を飲み込んで、努めて冷静に答えた。
「そうなんです。えーと、そうですね、レクチャーの前に夫婦の時間についてお聞きしなければならなくて」
「夫婦の時間ですか……?」
「はい。旦那様とのセックスの満足度といいますか……。ちゃんとイけてるのか。とか。そういう話です」
あからさますぎる単語に反応したのか、椿さんの、ほんのり赤かっただけの頬が一気に真っ赤になった。
石井椿――もとい吉野椿。あ、吉野は旧姓――は、俺の高校時代の先輩だった。
俺より一個上の椿先輩。接点があったとかじゃない。俺の一方的な片思いだった。
――高校の時。俺はサッカー部で、椿先輩は陸上部。確か彼女は短距離をやっていたはずだ。
そして俺は、サッカー部としての練習をこなしながら。ポニーテールを靡かせて、颯爽と走る椿先輩に初恋を奪われたのだ。
でもそのときにはもう椿先輩には彼氏がいた。同じ陸上部、同い年の男だった。
仕方ないよなぁと率直に思った。
だって椿先輩、とっても綺麗だったから。
ちょっと垂れてる大きな目。ちっちゃい唇。口元にあるほくろが妙に色っぽかったのを今でもよく覚えている。
そんな思い出の、初恋の椿先輩。
椿先輩は俺のことを知らないと思う。だって本当に全然接点がなかった。
たまーに彼女のことを思い出すことはあっても、でもそれだけだった。もう結婚して子供もいるんだろうな~なんて考えたこともあったが――まさか、クライアントとして自分の隣に座る日がくるなんて。人生なにがあるかわからないもんだ。
成就することのなかった初恋。
引きずってなんていなかった。
でもいざこうして目の前に現れると話は違ってくる。あのとき死ぬほどシコり倒した椿先輩。その先輩が、今、俺の隣にいる。それは、終わった初恋の感傷を擽るのには十分だった。
「奥様は、その、旦那様とのセックスでちゃんとイけていますか?」
「……えっと……」
「正直に答えてください。でないとこちらも正しくレクチャーできなくなりますからね」
「あっ……、そう、ですよね……。……あの……夫とのセックスでイけたことは一度もありません……」
頬は赤く染まったまま。椿先輩の顔は、ぐっと悲しい色になった。
「……でも旦那様は、奥様はイっていると思われていましたが……」
「……喜ぶかな、って……だから演技は、その、してて……」
「なるほど」
これまたよくある話だ。
夫のセックスが下手。奥さんは場を盛り上げるため演技する。そしたら夫は調子に乗って、下手なまま突っ走る。
そうして奥さんは不満を抱えたまま、どっかのタイミングで妊娠しちゃって有耶無耶に――なんてのが黄金パターンだった。
「奥様のお気持ちとしてはどうですか?」
「わ、私ですか……?」
「はい。気持ちよくセックスしたい。そんな思いはありますか?」
沈黙が流れる。
椿さんの表情には迷いが滲んでいた。
はっきり自分の願望を言っていいのか。きっとそんな迷いだ。もしここで迷いを認めたら――すなわち、夫とのセックスに満足していない、という肯定になってしまう。
夫のことを思って演技までする彼女のことなら尚のことそう考えるだろう。なんら不思議ではない。
「――椿さん。俺たち種付けプレス士は、女性のセックスの満足度を高めるのも仕事の一環なんですよ」
名前の呼び方を変えて、そっと椿さんの腰に手を回す。
「椿さんは見たことありますか? たとえばそうですね……SNSなんかで、裏垢男子、とかそういうの」
「……す、少し、は……」
「それに出てた女の子たち。どうでした? すっごく気持ちよさそうでしたよね?」
「あっ……」
困ったように椿さんが目を伏せた。
震えるまつ毛が情欲を煽る。流れる汗が高校時代を思い出す。そういえば椿先輩の足でシコったこと何回もあったな、なんて。
「……そうですねぇ。視覚的なものでいえば潮吹きとか。見たことあります?」
「す、少しだけ……」
「実はあれ、少し厄介なんですよ。なんでかわかりますか?」
「え、いや、その、……わかりません……」
思わせぶりに腰を撫でて、それから俺の方に強く引き寄せる。小さな悲鳴が聞こえたが、拒絶する様子はなかった。
「あれってね、……まぁ飛ばす距離にもよるんですけど……潮ってサラサラしてるから、吹いちゃうと愛液も一緒に流れちゃうんです」
「そ、そうなんですか……?」
「えぇ。手マンやクンニで吹くならまだしも、ハメ潮だとちょっと厄介なんです。潮で愛液が流されちゃって、潤滑油がなくなって滑りが悪くなる」
「……」
「……でもね、椿さん。そこにね、糸を引くローションを垂らしてあげるんです。男のちんこずっぽり咥えてる女性のおまんこに、繋がってるところに、たーくさんローションを垂らしてあげるんです」
赤くなっている耳元で、内緒話をするように囁く。
事実これは内緒話だった。だって普通、クライアントにここまですることは御法度だから。基本的に夫がいるところでしか女性には触れない。それが、暗黙の了解。
でも俺は、――椿さんが初恋の女の子だったから。それだけの理由で、暗黙の了解をたった今破ったところだった。
「知ってますか? 女の人のおまんこってね、興奮したら少し肥大するんですよ。それにね、血流がよくなって真っ赤になるんです。それこそ口紅を塗った唇みたいな。そこにぬるぬるのローションを沢山垂らしてあげるんです」
「……っ……」
「そしたら滑りがすっごいよくなる。滑りが良くなるとどうなるかわかりますか? 女性の感度もよくなってね、愛液がたくさん溢れてくるんです。そしたら――、――俺は男だからわかんないんですけど、ちんちんの硬さとか、大きさとか、はっきりわかるらしいんですよ」
「そ、そんな、……でも、ゴムつけてたら……」
「……生セックスってとっても気持ちいいですよ。ちんこにね、女の人のぬるぬるの襞が絡みついてくるんです。もっと言うとプレイの幅も広がる。素股しながらうっかり入っちゃったとか、そういうのもできるようになるんですよ」
椿さんの手を取る。
彼女の手は火傷しそうなぐらい熱かった。その熱い手を、俺の股座まで導く。
スラックス越し。もう勃起してる陰茎を無理やり触らせた。
「かっ……硬くなってませんか……!?」
「……旦那さんには秘密にしてくださいね? 椿さんがあんまり魅力的だから勃っちゃったんです」
退こうとする手を絡めとる。恋人同士みたいに指を絡めた。指と指の間も汗ばんでいた。
――夢、みたいだった。
陸上部時代。バトンを握っていた手が、布を隔てているとはいえ俺のちんこに触った。童貞でもないのに、それだけで射精しそうになった。
絡めた指。このままハメ倒したい。後ろ暗い欲望を抱えながら、とっておきの低い声で囁いてみせる。
「俺、想像しちゃったんですよ。椿さんのおっぱいをたーくさん可愛がって、それで……そうですねぇ、ぷっくり腫れたクリトリスを指で優しく撫で撫でするのを」
「……っ、やめてください……っ」
「これも仕事の一環なんです。言葉責め、とかそういうふうに言っときましょうか。ほら椿さん、わかります? 俺の指。中指、それに薬指」
恋人繋ぎだったままの手を、そのまま椿さんの前に掲げる。でも椿さんは、訳がわからない、と言わんばかりに首を振るだけだ。
「すっごい深爪でしょ? 椿さんのおまんこをたくさんぐぽぐぽするために切ってきたんです」
「お、っ……お仕事ですもんね……」
「その通りです。俺の仕事は種付けプレス士です。だからねえ椿さん」
絡めていた手を離す。
それから、汗がじっとり滲む椿さんの手のひらに、中指をつつ、と這わした。
「どの指でぐぽぐぽされたいですか? あんまり慣れてないうちは中指で、……慣れてきたら薬指入れたり……余計な力が入らないから、中指と薬指でたぁくさんするのが俺はおすすめなんですけどね」
「指なんでどれも同じで……っ」
「同じじゃないですよ。それにねぇ椿さん。俺の人差し指。わかりますか? 人差し指だけ、ちょっとだけ爪が長いんですよ」
「え、……あ、……そ、そうです、ね……?」
「これ、椿さんの乳首をカリカリするためのものなんです」
「……っ……!?」
「想像してくださいよ。まぁ今日はバスローブですけど……今の時期だったらヒートテックとか。うっすい服の上から、ノーブラの乳首をたくさんカリカリするんです」
扉の向こうではまだシャワーの音が聞こえる。それをいいことに、バスローブをかき分けて、椿さんの白い太ももに触れた。
「最初からはしませんよ? まずはゆっくりおっぱいを揉んで、それから乳輪をさするんです。くるくる~って。これから乳首をたくさんカリカリしますよ~って教えるために。そしたら乳首がぷっくり立ち上がり始めるんです。そのときにね、まずは乳首の先っぽを、人差し指で引っ掻いてあげるんです」
「やっ……」
「薄いとはいえ布越しですからね。ちょっとぐらい強くしても全然痛くないんですよ。カリカリ~ってしたら乳首って硬くなるから、今度はそれをぎゅうって摘むんです。そうですねぇ、親指と中指で乳首を摘みながら、人差し指でカリカリ~とかもできますよ」
「……もうやめてください……っ」
「……これも仕事の一環なんですってば。でも順番が前後しちゃいましたね。椿さん、覚えておいてくださいね、まずはそうやって胸を愛撫してから、とろとろになったおまんこに触るんです。もちろんおまんこだって最初から指を入れることなんてしません。貴方の性感を高めることから始めます」
フェザータッチで太ももを触る。もう走ってはいないのだろう、高校時代にはすごく逞しく見えた太ももも、今ではすっかり柔らかいものだった。
その太ももをそっと撫でる。つ、つ、と触れるか触れないかの距離感で撫でて――いきつく先。豪奢なレースの施された、黒い下着が見えてきた。
「そ、それ以上はいけません……!」
「もちろん今はこれ以上はしませんよ。でも椿さん、少しだけでいいんです。足を広げられませんか?」
ちょっと間があって、椿さんがゆっくり足を開いてくれた。
それきた、と、今度は内腿を撫でる。そこは外側の太ももよりもっと柔らかくて、指が埋まりそうなぐらいだった。
「わかりますか? 今、椿さんの内腿を撫でる俺の手。これがねぇ、椿さんのおまんこをぐちょぐちょにするんです」
「やめ……」
「今やってるみたいに、興奮してぷりぷりになったクリトリスを、俺の指でたくさん可愛がってあげますからね。優しく、……椿さんが望むなら、人差し指で引っ掻いてあげても大丈夫ですよ?」
「……っ……」
そこまでしたことろで。
シャワーの音が止まった。
残念。時間切れ。そっと手を離しながら、――俺は確かに見た。椿さんの黒いショーツに、染みができたいたのを。
「……とまぁ、こんな感じです。まずは旦那様とのプレイを見せていただくところからですが……知らない男に色々されるのは怖いでしょうし、今のはちょっとした戯れです」
「そ、そうでしたか……」
「はい。安心してくださいね。俺は国が認めた種付けプレス士ですから。椿さんの悪いようにはしませんよ」
常に携帯している資格証を椿さんの前に出す。
資格証には、種付けプレス士が所属する省庁の名前が記載されている。それから俺の顔写真も。
公的機関でも身分証明書として使えるそれを見せて――やっと、椿さんは肩の力を抜いたようだった。
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