借金ホスト

美国

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プリンス

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結果から言うと面接には通った。オーナーの一色さんは、俺の顔を見ただけで採用、の一言。まあ自分でも顔が整っている方だとは自覚していたので、予想通りといえば予想通りなのであるが、こうも呆気ないと拍子抜けした。だが、初日に出勤して、自分よりずっと男前なホストばかりが働いていて、ランキング争いは壮絶だと思い知った。ナンバーワンの蓮二さんは、今をときめく若手俳優よりもずっとオーラがあって、男の俺でもしばらくポーッと見惚れてしまった。

ホストクラブ《プリンス》で働き始めてから三ヶ月が経って、俺個人の売り上げも順調に伸びてきていた。最初はヘルプとして駆り出されてばかりだったが、指名を固定しないような女性からは、たまに指名がもらえるようになったり、新規のお客さんからは永久指名宣言をいただいたり。
ホストの給料とはやはり真面目に働く何倍も多く、蓮二さんたちに比べれば足元にも及ばないながらも、俺は内心心踊っていた。

このまま行けば、一年以内に借金完済は確実。今の汚いボロアパートも引き払って、狭めの2LDKぐらいのマンションに引っ越してもいいな。それなら、従兄弟が部屋に女を連れ込んでも前ほどイラつかないだろうし。今まで極貧生活を送り続けてきたんだ、これからは少し贅沢できるかも、と考えると顔がにやける。

「おー、おつかれ瑞樹。今日指名多かったな。3ヶ月目なのにお前すげーよ。」
声をかけてきたのは、年は同じだがホストとしては2年先輩の和哉。仕事終わりは一緒に飯を食いに行ったり、ホスト仲間の中では1番仲がいい。

「ありがとよ、ランキング争いしてるお前には言われたくないけどなっ。」
こいつは、人懐こい性格とキリッとした爽やかな容姿を押し出し、いつも5位前後をマークしている売れっ子だ。

「多分、俺なんかお前にはすぐ抜かれちまうよ。俺にはあそこまでお客さん金出してくんねーもん。」
たしかに、和哉は万人受けするが、大金を出してくれる客は少ないように見える。対して俺は、周りのイケメン達に埋れてしまって、名前はあまり売れていないが、ファンになってくれた人はいくらでも高い酒を頼んでくれる。蓮二さんには、瑞樹は庇護欲掻き立てるから、私が可愛がってあげたいって思わせるんだよ、と言われた。

「瑞樹は年上キラーだからなー!!」
和哉がいじるように笑う。

今まで、借金やらなんやらでクラスメイトからは遠巻きに見られたり、バイト先でもなんやかんやと噂されたりでまともな友達もつくれなかったが、この世界では借金だなんてザラにある話で、誰も俺のことを奇異の目で見てきたりはしなかった。このホストクラブは、俺の居場所になりつつあった。

和哉の存在も、借金で心の休まらない俺にとってはありがたかった。

いつまでも、このままだったらいいなと、思っていた。
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