借金ホスト

美国

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先輩

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オーナーの一色さんに気に入られているようだと感じたのは入ってすぐだった。新人の俺を何かと気にかけてくれ、たまに食事にも連れて行ってくれる。もともとは、どこかのホストクラブでナンバーワンを守り続けたカリスマらしく、その名残は今でも残っていた。たまに囁く言葉が甘く、赤くなって固まってしまうこと多かった。そのあとは、からかったかのように笑っていたが。
俺にとっては、親のようなものになりつつあった。理由をつけては面倒を見てくれる彼は、暖かくて、優しかった。

蓮二さんも、俺のことを贔屓してくれていた。競争率の高いホストクラブでナンバーワンなだけあって、太客も多い蓮二さんは、気前のいいお客さんが来客すると、必ず俺をヘルプにつけてくれた。気に入ってもらえると、蓮二さんに指名が入って手が離せない時などは、俺を指名してくれるようになった。俺の売り上げもぐんぐん伸びて、和哉とランキング争いをするまでに上りつめた。


それをよく思わなかったのが俺よりもずっと前からいた先輩たち。今まで地道に指名客を集めたり、キャッチなどで売り上げを守ってきたようだが、俺がオーナーや蓮二さんからゴリ押しされることによって、流動層が俺に流れてきてしまったことに、危機感を覚えると同時に不満感を覚えたようであった。


「お前、どうやってオーナーたちに取り入ったんだよっ、おら!」
両腕を二人掛かりで羽交い締めにされ、無防備にボディーブローをくらう。彼らは、あくまでも目立たないところしか攻撃しなかったが、それでも相当こたえた。
度々店の裏の路地に呼び出されたり、身体を殴られたりした。
俺を呼び出すのは決まってこの3人だった。リーダー格の毅一と腰巾着の鈴、琢磨。
この3人は、俺がプリンスに入って最初の一週間ほどは店のルールなどについて教育係として教えてくれていたが、俺が売れてくるとだんだんと嫌がらせをするようになってきた。他にも俺を嫌うやつはたくさんいたが、こいつらが俺をしめていると知っていて任せているようだ。

俺は、抵抗しなかった。確かに彼らからすれば理不尽な話だと思う。オーナーたちが俺をここまで可愛がってくれて幸せな分、不満が出るのも当たり前だ。
俺は、彼らの鬱憤を受け入れる。代わりに、オーナーたちからの恩恵も受ける。それが、俺なりの筋だった。今まで虐げられてきた人生で、俺が習得した、心の安定の取り方だった。
だから、普段は遠慮がちな性格な俺でも、少し多めに殴られた日などは、オーナーの誘いに積極的にのるようになって行った。それが、さらに彼らの怒りを買い、負のループになっていったが、それでもいいと思っていた。

「くっそ、この、この!!」
今日はかなりあたりのキツイ日だった。仕事が終わったらすぐ帰ればよかったな、などと考え事をしているとまた強く蹴られる。
「…お前、それ蓮二さんにもらったらしいな。」
それは、無意識のうちに庇っていた時計だった。普段安物の時計しか着けていなかったが、それじゃ女に見下されるぞ、と言ってその時つけていた、軽く何台かの車が買えてしまうような高級時計をその場でくれた。蓮二さんがいつもつけているものだったので、断ろうとしたが、もらって欲しい、と熱く言われると逆らえなかった。
尊敬する人からもらったとても大事な時計。壊すわけにはいかなかった。

「…っくそ!くそ!そんなもの壊してやる!おら、手退けろよ!」
手を狙って蹴ろうとしてきたので、時計をお腹に隠すように丸まる。すると、さらに腹を立てたようにどつかれる。
「くそ!んな大事そうにしやがって…!俺らが!どんなに痛めつけても!けろっとして尻尾振りながら蓮二さんのとこ行きやがって!おら、手を出させろ!」
鈴と琢磨に両腕を取られて、抵抗する。
「やめ、やめろ!」
一瞬2人は固まったが、毅一に声をかけられてはっとし、また強く腕を掴む。

「蓮二さんが人にものをあげるなんて、今まで一度だってなかったんだ。それなのにお前にだけ…。」
俺の左手の時計をなぞりながら、呟く。顔は辛そうだった。こいつ、もしかして…。
「もしかして、蓮二さんのこと好きなんですか?」
まあ、あれだけ綺麗な人だったら、同性の壁など越えてもおかしくはない。というか俺でもたまに越えそうになるので、あり得るものとして、毅一に問いかける。

「は、はあああ?おま、お前バカじゃねえの????」
少し顔を赤らめて、動揺したように後ずさる。おやおや、なるほどな…。
「だから、蓮二さんに構われてる俺が許せなかったんですね。なるほど、納得がいきました。すいません、気遣いもできず。大丈夫ですよ、俺と蓮二さんはそんな関係じゃないので。」
フォローのつもりで言うと、毅一は顔を真っ赤にさせて眉を吊り上げる。
「違うって言ってるだろ!!!俺は…って、お前ら笑ってんじゃねえよ!!!」
俺の両脇にいる鈴と琢磨は腹を抱えて笑っている。おいおい、親分に対してそんな扱いでいいのか?

「ははは!ごめんごめん、面白くて。まさか蓮二さんが好きだったとはね。」
「ぶふっ。応援するぞ、毅一。」
明らかに馬鹿にした笑いだ。この二人も知らなかったのか、それとも見当はずれなのか。


「今度、蓮二さんにご飯に誘われた時、毅一さんも誘うように言ってみますよ。それで、いいですか?」
喜ぶと思って言ってみたが、さらに怒ったように顔を赤くする。

「なんだと、それで俺がお前のこと許すと思ってんのか!ごら!」
胸ぐらを掴まれ、顔を近づけられる。きつい眼光で睨まれ、俺はその目を見つめ返す。

「…っ、この!」
しばらく見つめあっていると、また違う感じで顔を赤らめる。なんだかわからないがまた怒らせたのだろうか。

もうなんだかわけがわからず、左腕をつかんでいる琢磨の方を向く。そしたら、琢磨もこっちを向いていた。
またしばらく見つめあうと、彼は急にすごい勢いで顔をそらす。
「誘惑してきやがった…。」
こいつもまたわけのわからないことを呟く。

仕方ないので次は右腕を掴んでいる鈴の方を向く驚いたように目を見開いたが、またしばらく俺と見つめ合う。
すると、いきなり顔を掴まれた。
「なになにぃ?可愛い顔で見つめてきたりなんかして、どうしたいの?」
少し赤らめた顔でにやにやと聞かれ、どうしたいもこうしたいもはやく離してくれないか、と言おうとすると、そのまま顔が近づいてきて、キスをされる。

何が起こったかわからず固まっていると、口を割り舌が侵入してくる
「ん、んちゅ、くちゅ、んふ」
かなり慣れているようで、鈴の舌技に翻弄され、腰が抜けそうになったが、鈴の手によって支えられる。
ろくに抵抗もできず、されるがままにしていると、急にはっと我に返ったように、残りの2人が俺と鈴を引き離す。

「鈴!何やってんだ!!!」
「やめろ、このバカ!」

俺は左腕を掴んでいた琢磨にそのまま引っ張られたが、足がふらついてまともに立てず、琢磨に寄りかかる形になってしまう。
さっきの余韻で、熱を帯びた頬のまま、荒い息を整えつつ涙目で琢磨を見る。

「うっ」
一瞬顔を歪ませた後、今度は琢磨が俺の唇を奪う。舌がにゅるりと歯の間を通り抜け、上顎をなぞる。それにおれが反応すると、さらに勢いをつけて上顎を責めてきた。あまりの気持ち良さに、思わず勃起しかけたが、その前にまた他の2人に引き剥がされる。


「琢磨ちょっと長すぎ~!」
「お前まで!!!何やってんだ!!!」


次は毅一に手をとられ、腕に抱き込まれる。やっと終わった、と思っていると、意図せずして、引っ張ったはずみで毅一の太ももに勃起しかけた股間が強く擦れて、甘い痺れが腰に駆け巡る。

「んあっ」
甘い声をあげてしまい、少し恥ずかしくて俯く。ちらっとすぐ近くにある毅一の顔を見上げると、驚いたように、しかし真っ赤にした顔でこちらを見つめていた。


「すいません、気持ち悪い声出して。毅一さんにはもう迷惑かけませんから。蓮二さんのこと好きなら、そりゃ俺なんか嫌いしょうし。キスしてきた2人はよくわかりませんけど。どうせ俺のことが嫌いだからホモだとかって言いふらすつもりなんでしょ。もう、好きにしてください。」

このままでは殴る蹴るじゃ済まなくなりそうなので、彼らの憂さ晴らしに付き合うのも今日限りにしようと思い、そう言い残し去ろうとしたが、後ろから鈴と琢磨に手を掴まれる。


「違うよ!ごめんね、今まで。最初に瑞樹が入ってきて、教育係としてそばにいて、なんか弟みたいで、ずっと可愛がってあげたいと思ってたんだ。なのに、3日目には指名とっちゃうし、俺たちが最初だったのに、和哉とか蓮二さんとか人気な人にどんどん気に入られて、俺たちみたいな下っぱなんか近くに行けなくなって…。独占したかったんだよ、瑞樹のこと。だから、近づくためにこんな方法しかできなくて…。ほんとにごめん。」
「最初は、入ってばかりで何していいかわからなくて、俺の後ろをちょこちょこついてくるお前が可愛くて、長い時間かけていろいろ教えてやろうと思ってた。なのに、俺なんかすぐ追い抜いて、ヘルプも完璧だし、キャッチは大漁だし。先輩面してたのが、恥ずかしくなったんだ。だから、こんな制裁なんかして、先輩の威厳保とうとして…。すまない、こんなことしたって、またお前が後ろについて来てくれるわけじゃないのに…。」

鈴と琢磨が順に俺に許しを乞うように話した。俺は、急なことで驚いたが、2人の気持ちを考えると、何故か微笑んでいた。

「わかりました。2人の気持ちは分かりました。もういいですよ。そんなこと考えなくても、教育係として皆さんに教えてもらったことは、今も使わせてもらってるんですよ。先輩たちのおかげで、今の俺があるんです。近づきづらくなんてありません。俺は、今も1番後輩で、1番下っ端なんですから。俺、最初はなんで急に話しかけてくれなくなったのか、悩んでたんですよ。まだ、教わることはたくさんあるんですから、是非ビシバシ教育してください。」

満面の笑みで2人にそう言うと、泣きそうな顔で、強く頷く。嬉しくて、また少し笑みがこぼれる。
それに反応したように、腕を掴んだ2人がさらに俺を引き寄せる。


「今までのお詫びに、俺が手当するよ。身体、たぶんあざだらけでしょ。今日家においで。一晩中看病してあげるから。」
「そんなこと言って、手当と称して服脱がせて何やる気だ。俺が病院に連れてってやるよ。傷跡も残らないようにしてやる。でももし残ったら、俺が一生かけて責任とってやるよ。」

甘い顔で身体を摺り寄せ、両耳に囁かれて、全身がぞくぞくする。それに気を良くしたように、2人は俺の全身を撫で回し、際どい部分を掠める。軽く服をめくり、「ここ、あざになってる」と言いながら傷をさすられ、鈍い痛みが走りのけぞる。そのあと、お詫びとでもいうように、乳首やへそ、太ももなど敏感な部分を絶妙な強さでさすってくる。

「ん、は」
尻を強く揉まれて声があがる。気持ち悪いだろうと思ってすぐ口を閉じるが、「声出して」と耳元で囁かれさらに感度が増す。

ついには2人の手が股間に伸び、鈴は前を揉み上げるように、琢磨は会陰部分をぐりぐりと押す。慣れたような手つきに、たまらず足腰が砕け、声があがる。

「は、ひゃ、やだ、やめてくださ、たっ勃つからあっ」

涙目ですがるように2人のシャツを片手ずつで掴み、上目遣いで懇願する。

「うわっ、やば」
「…」
それを見て2人は顔を赤らめたが、手の動きは止まらない。立っていられず、2人に腰を支えてもらっているが、あまりの気持ち良さに、腰が揺れる。

「あっ、は、も、や、やめて、くださ」
しばらく抜いていなかったためすぐに股間に熱が集まる。

「腰動いてるよ、カクカクして、はは、かーわい」
欲情したような声で俺をなじる。だが、羞恥よりも、快感のほうが強く、抵抗もままならない。次第に腰の動きも小刻みになり、限界が近づく。

「イけよ」
琢磨に耳の奥を嬲られながら囁かれ、直後に下着の中で精液を放出する。
「あっは、ああああああっんあっは、ふあ…はあ…」



荒い息遣いのまま脱力した俺は、2人に支えられたままだったが、太ももに感じる異物が、2人の完全に勃起したものだと分かり、即座に身構える。だが、すぐにでも襲ってくるかと思ったが、それはなかった。


「ごめん、無理やりこんなことしちゃって。もう、瑞樹の嫌がることはしないから。」
「誰かが瑞樹を傷つけようとしても、もう俺らが黙ってないから。お前を全力で守るから。」

真剣な顔で言われ、少しどきっとした。直後、

「「すきだよ」」

二人に引き寄せられ、耳元で囁かれ、流石に俺でもこれが、恋愛感情を持ったものだと理解する。
今までに受けた仕打ちは許しがたがったが、この人たちは反省し、これからは味方になってくれる確信があった。だからもう、過去のうらみは忘れてあげることにした。


「わかりました、もう怒ってません。さっきも言った通り、また後輩として可愛がってください。ホストとして、2人のこと尊敬してますから。」

そう言うと、2人は照れ臭そうに、だが嬉しそうに笑った。

「へ、返事はまた今度でいいから。昨日まで殴られてたやつに言われても困るだろうし。改心した俺を見て判断して欲しいから。」
「俺も、これからはお前に好きになってもらえるように努力するから、それから考えてほしい。」


返事…?ああ、すきだよ、の返事か。なるほど、男同士でも付き合ったりってあるんだな。確かに、嫌われてたと思ってた相手にこんな下手に出られるのは変な気分だ。でも、さっきの話からいうと結構前から気にかけてもらってたようだし。


「わかりました。ふふ、せいぜい俺に好きになってもらえるように頑張ってくださいね。」
今までの仕返しとばかりに悪どい笑みで言う。


「なにその笑顔、いい…!!!」
「小悪魔…」

2人は顔を赤らめ、さらに瑞樹にはまってしまうが、そんなことには瑞樹は気づかない。





「お前ら、勝手なことばかり抜かしやがって…!!!!」
さっぱり忘れていたが、毅一は今の今まで呆然として声を掛けることもできなかった。


「あ、いたの」
「忘れていた」
普段行動をともにする2人にさえ忘れられていた。

「お前らばっかり調子のいいこといいやがって…!!!!!俺だってなあ…!!!」
鬼の形相でずかずかと近づいてくる毅一に俺は少し体が震える。


「ちょっとおー、やめてよ、瑞樹怖がってるじゃん。」
「毅一、あんまり近づくな。」
鈴と琢磨にひしっと抱きつかれ身動きが取れなくなる。


「お前ら!!!そいつを離しやがれ!!!」
「やだよー、毅一すぐ殴るもん。」
「俺も、瑞樹を守るって約束した。」
仲間割れが始まったようだが俺にはどうしようもない。


「もーいーじゃん、俺たちの八つ当たりだったんだし。」
「瑞樹はお前のこと蓮二さんに言ってくれるって言ってるんだから、少しは待遇もよくなるだろ。」
断じて俺のことを離す気はないらしい2人は、毅一をなだめにかかる。でもたしかに、目当てが蓮二さんなら、気に入られてる俺ならどうにかなるかもしれないし、ひきさがってくれるだろうと思った。

「いくらお友達の毅一でも、まだ瑞樹に何かするって言うなら、俺が黙ってないからねー」
「俺がずっと瑞樹のそばにいる。お前は近づけさせない。」
3人の不穏な空気に冷や汗が流れる。乱暴な毅一のことだ、どうなるかわからない。



「俺は、俺は…。俺だって、

俺だって瑞樹といたいんだーーーーーーーーーーーー!!!」

突然の叫びに、俺も含め3人がぽかんとなっている間に、俺から2人を引き剥がす。

「俺だって、お前が蓮二さんや和哉に取られて悔しかったんだ!最初に教育係として仕事教えて、服も小物も全部安物ばっかつけてるお前に、全部買ってやろうと思ってたのに!オーナーからスーツ仕立ててもらうわ、蓮二さんから時計もらうわ、俺の出る幕なしで!
俺らのヘルプにつかせてやろうとしても和哉や蓮二さんに持ってかれるし!俺が、俺が一人前にしてやろうと思ってたのに!あの人たちに牽制されてプリンスじゃ近づけないわ、お前は俺に見向きもしないわ…!」


早口にまくしたてられる。だが、この人も同じなのだと分かった。でも、俺はそんなに優しくない。殴られ蹴られ続けたこの人に、自ら優しく歩み寄るつもりはなかった。


「…認めたくなかったけど、すきなんだ…瑞樹…」
毅一は、消えそうな声で呟いた。


「すいませんが、今まで中心として俺に暴力を振り続けたあなたを簡単に許すことはできません。」
そう冷たくいうと、毅一の身体が一瞬びくっと反応した。彼は、俯いたまま顔を上げない。


「…ですが、これからその分罪を償っていただければ、いつかは気持ちも変わるかもしれません。」
毅一の顔がばっと上がり、期待を含んだ目で俺を見つめる。

「もっと、この業界のこと教えてください、先輩。」
軽く微笑むと、毅一が破顔する。泣きそうに、でも嬉しそうに顔を緩めた。
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