気づいたら日本まるごとゲーム世界でした!?

黒鳥カラス

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第1章_ベースとギルドと大阪と

決戦前夜

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 梅田との決戦が正式に決まった夜。
 難波ギルドの本拠地は、戦闘準備と訓練で慌ただしく動いていた。
 いつもは酒場みたいにわいわいしてるロビーも、今夜ばかりは緊張感に包まれている。

「……明日には出発か」
 サニーを膝に乗せて弦を磨いていると、智樹がやってきて腰を下ろした。
「お前、やたら楽器に手入れすんのな」
「相棒やからな。飯食う前に歯磨きするやろ? それと同じや」
「例えが雑やな」

 智樹は剣を磨きながら、ふっと笑った。
「でも、わかる。俺も、剣は磨くと心が落ち着く」
「へぇ、クールキャラのくせに意外と神経質やん」
「……お前にだけは言われたくない」

 二人でくだらないやり取りをしていると、ロビーの隅で歌声が聞こえてきた。
 柏木未来が小さなバイオリンを奏で、他の仲間たちがそれに合わせて声を出している。
 緊張をほぐすための即席セッションだ。
 戦いの前夜だからこそ、少しでも笑っていたい――そんな空気が漂っていた。



 その後。
 俺は外に出て、ひんやりした夜風にあたりながらサニーを軽く鳴らしていた。
 すると、背後から雅の声がした。

「……こんな時間まで練習?」
「いや、指が勝手に動くんや。緊張してる証拠やな」
「わかる。私も魔法陣を描く手が震えるの」

 雅が隣に腰を下ろす。月明かりに照らされた横顔は、普段より少し柔らかかった。

「ねえ、遼」
「ん?」
「……あなたの音、本当に不思議。聴いてると、不安が少し消える」
「……そんなん言われたら、照れるやん」

 俺は顔をそむけ、無理に笑う。
「まぁ、俺は飯のためにやってるだけやし」
「ふふっ。そういうことにしておいてあげる」

 雅が小さく笑う。その笑顔に、胸が少し熱くなった。



【システム通知】
【特別状態:士気上昇】
効果:次戦の精神抵抗+10%



 システムが空気を読んだように通知を出してきて、俺は思わず吹き出した。
「なにこれ、俺らの会話まで監視されてんの?」
「いいじゃない。結果的に強くなるんだから」雅が肩をすくめる。

 ……そうやな。
 こうして笑える時間があるから、明日も戦える。



 深夜、ギルド全体が静まり返ったころ。
 堂島が一人、ロビーでドラムスティックをコン、コンと鳴らしていた。
 まるで出陣前の太鼓のように、リズムが建物全体を震わせる。

「……いよいよやな」
 小さく呟く声が、夜に溶けた。



【メインクエスト進行度:55%】
『梅田中枢への進軍を準備せよ』
状況:決戦前夜/士気上昇



 決戦は、もう目前だ。
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