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ミチコ・オノ日記 ②
第14話 たまたま と たまたま ②
しおりを挟む松田 類さん
通称 猫力 (ねこじから)
彼女は映像部でも 軽音楽部でも無い
帰宅部だ
ただし歌が上手いと
去年聴いた人はみんな口を揃えて言う
私は今日が初めてだ
彼女は大勢の前で歌う
事が好きではないらしい
猫力さんが軽く自己紹介をした
話によると猫力さんは
今まで3匹の猫を飼ったらしい
1匹目がサム(オス)
2匹目がトム(オス)
3匹目がたまこ(メス)
猫力さんは初め サムキャットと名乗った
すでに使用されていた
サムが死んじゃった後にトムを飼った
当然 トムキャットにした
すでに使用されていた
タマコキャット はなぜか抵抗感があった
それぞれの猫に貰った力から
猫力にした
自己紹介が終わった
最後まで グラサンの説明は無かった
猫力さんの要望で
今上映した映像を 音源だけ消して
流しておく事になった
「サムと トムが死んじゃった時
これでもう猫を飼うのをやめよう
そう思っていたのに
私はたまこを飼いました
たまこの目線から
それを歌にしました
タイトルは
【たまこは たまたま】
聴いてください」
静かに歌が始まった
長い髪をボサボサにした
デッカいマリモ
みたいなあんたは
ひとりぼっちの あたしを
拾ってくれたね
たまたま たまたま たまたま
台風の日のキャンパス通り
コンビニの横の階段の裏
あんたはやさしい 声で
呼んでくれた
たまたま たまたま たまたま
バカみたいに熱い夏の部屋
エアコンがあたしに悪い
あんたは汗をかいて
ねむっていた
たまたま たまたま たまたま
怖い夢を見たわ 女優になって
レッドカーペットを歩くと
それはみーんな
赤い蟹になるの
たまたま たまたま たまたま
仲間を連れて来た日曜の朝
あんたはモンプチを買いに走る
無理するなよ いつも
あるやつでいいんだから
たまたま たまたま たまたま
たまたま たまたま
言っているけど
勘違いしてない?
その たま じゃ 無いわ
出掛けてしまった部屋の
あんたの林檎が剥けない
あたしの爪じゃ
たまたま たまたま たまたま
やさしいあんたは
たぶん あたしに
するのと同じ笑顔をふりまくわ
たまたま たまたま たまたま
勘違いしてない?
その たま じゃないわ
あたしは もう あなたを待てないわ
たまたま
たまたま
たまたま
たまたま
勘違いしないで
あたしは そんな たま じゃないわ
歌を聴き終わったわたしは
考えていた
やはり人を惹きつけるのは
その人のパワーなんだろうか
わたしはそのパワーがないのかな
たまこも猫力さんの
力に引き寄せられたんだろう
凹むなぁ
わたしは部室に戻り
改めて自分の絵を見て歩いた
2週した時
それが 見えた
5分くらいそれを睨んだ
窓を開けて息を吸った
遠くに猫が 1匹いた
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