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133.『ブラックスニーカーの正体』

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。
 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。
 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。
 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。
 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
 夏目警視正・・・EITO副司令官。
 愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。警部。丸髷警察署に普段は勤務している。
 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。伝子と一時付き合っていた。警視庁副総監直属の警部。EITOに出向。
 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。喫茶店アテロゴのマスター。
 物部(逢坂)栞・・・伝子の大学の翻訳部の同輩。物部の妻。
 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
 依田(小田)慶子・・・やすらぎほのかホテル東京副支配人。依田の妻。
 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進んでいたが、現在は建築事務所非正規社員。
 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。後に福本と結婚する。
 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師だったが、現在は妻と塾経営。
 南原(大田原)文子・・・父の経営していた塾を引き継ぎ、夫と経営。
 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。現在は、海自事務官。
 山城(南原)蘭・・・南原の妹。美容師。
 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。
 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。
 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長
 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。EITO大阪支部メンバー。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
 副島はるか・・・伝子の小学校の書道部の先輩。彼女の父が書道部顧問。EITO東京本部準隊員。
 兼子省吾・・・副島の父の弟子。伝子と愛宕の恩師。
 宮本貞子・・・副島の弟子。
 天童晃(ひかる)・・・EITO東京本部武術顧問。
 松本悦司・・・EITO東京本部武術顧問。
 須藤桃子医官・・EITO東京本部勤務。
 池上葉子院長・・・池上病院院長。高遠の中学卓球部後輩の母。
 本庄病院副院長・・・本庄病院副院長。

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
 ==EITOエンジェルズとは、EITO大阪支部の、女性だけの精鋭部隊である。==

 貞子は笑った。「どうだ、大文字。副島はるか先輩の無様な格好を見るがいい。静かに見送ってやれ。見ている余裕はないかな?兼子の力が尽きた時、両刃カミソリは頸動脈を切る。兼子の力尽きなくとも、お前が動けば私が頸動脈を切る。さあ。時間稼ぎに面白い話をしてやろう。隠れ家を探していた私は、偶然書道教室を見付けた。高校に潜入し、私が成り代わった女子高生達から評判を聞き、悪くない選択だと感じた。書道は昔習ったことがある。私たち那珂国人から見れば、お笑いぐさの『芸術』で、単なるデザインに過ぎない。アメリカ人なんかも、文字の意味なんか関係無くデザインとして愛好している。兼子はイギリスではなく、アメリカに渡るべきだったな。副島は私を有能な弟子と認め、師範代にした。他の『幹』の動向や作戦をべらべらとしゃべってくれたよ。」
「何故だ?」と、なぎさは大声で尋ねた。
「副島は、『男を知らない女』だったから、『女同士の喜び』を与えてやったからだ。EITOが忙しくなり、もうあまり生徒達の指導は出来なくなっていた。お寺での『習字教室』は辞め、自宅での書道教室が忙しくなったから、と帰国した兼子を迎え入れ、副島は共同経営を始めた。大昔、副島早雲の弟子だった兼子は、ヨーロッパに書道を広めたいと言いだし、早雲と喧嘩別れしてイギリスに発った。しかし、誰も相手にしなかった。あるとき、出逢ったフランスの画家が認め、兼子は居候になった。書道を認めたんじゃない、漢字をデザインとして興味を持ったのだ。画家は去年無くなり、遺産は兼子が引き取った。そして、日本に帰国した。兼子を見た時『鴨葱』だと思った。私は、書道教室だけでなく、兼子の『躾け』も続けた。陥落し、言いなりになった所で、兼子に言いつけて副島に『女としての喜び』を与えた。私は、副島にEITOを引退させ、『3人でのめくるめく愛情の世界』に浸る一方、ブラックスニーカーとしてNew tubeを立ち上げ、EITOにメッセージを送り始めた。」
「お前がブラックスニーカーだった、というのか?」尚も、なぎさが尋ねた。
「そうだよ。僕の言い方はよく知っているくせに。尤も、キーボードをタイプしてメッセージを送っていたのは、副島はるか。お前の先輩さ。詰まり、もうとっくにお前の先輩は正義の味方なんかじゃなかった。ブラックスニーカーの葉っぱに過ぎない。兼子はまあ、枝の一本かな。」
 稲森が力尽き、倒されようとした時、ドームの天井が開いた。
 空自の複座戦闘機F-15Dが10機やって来て、パラシュートで隊員が降りて来た。いや、隊員でなく、EITOエンジェルズだった。
 貞子や部下は上空に気を取られていた。
 電動スケーターに乗った、般若面の女が貞子の背後にやって来た。
 背後の人物は言った。「おとぎ話って、眠くなるんだよな。」貞子の肩に注射器が刺さった。倒れる瞬間、貞子が見たのは、EITOエンジェル姿の伝子だった。
 集団のリーダーが気づき、「おい、何をした?」と叫んだ。
 部下の数人が貞子の方に向かった。
「おっと、ここからは、私たちのターンだ。フォーメーションA、B、C!!」となぎさは、インカムに叫んだ。
 エマージェンシーガールズは戦闘態勢に入った。10人のEITOエンジェルもパラシュートを脱ぎ、戦闘に加わった。
 ホバーバイクがやって来た。降りて来た飯星に伝子は注射器を渡した。
 井関は装置の解体に取りかかった。
 飯星は、「救急車が向かってます。こいつはどうします?」と、伝子に言った。
「眠っている時間は?」「3時間。」「転がしておけ。」
 2台のホバーバイクが到着した。そして、1台のジープが到着した。
 装置を瞬く間に解体した井関の合図で、ホバーバイクから降りた筒井と夏目が、兼子と副島を別々に装置から引き離した。
「俺達の出番はまだあったかな?」ジープから降りたケンが言った。
「ケン、ジョー、ジャック!!猫の手も借りたいところだ。よろしく頼む。」と、伝子は3人に感謝し、3人は戦闘に参加した。
「猫の手だってさ、行こうぜ、猫ブラザーズ。」ケンはジョーとジャックに声をかけた。
「ニャおーん。」「みゃーん。」3人と伝子は、主を失った暴徒達の中に突っ込んで行った。
 待機していた救急車が2台、到着した。
 久保田管理官の車が到着した。
 2台のストレッチャーに副島と兼子を救急隊員が乗せた。
「副島準隊員の方は、私が乗ろう。誠、お前はそっちだ。」久保田管理官は、久保田警部補に指示した。
 救急車が発車した後、夏目は言った。「今日は私がパトロールしよう。筒井は前線に。」
「了解。なーご。」「お前・・・ま、いいか。猫の手には違いない。」
 筒井は走り去った。
 愛宕と橋爪警部補が乗った囚人護送車が到着した。
「こんな可愛い女の子が敵の幹部ねえ、おっかないなあ。」と、橋爪警部補は言った。
「眠っているウチに早く済ませましょう。目が覚めると襲われるかも。」
 二人がかりで拘束衣を着せ、収容すると、護送車はすぐに出発した。葡萄館出口で、そっと見ている人物がいた。服部に挨拶をした、夢見堂の主人の親戚だった。
 副島が乗った救急車。
「管理官・・・。」「しゃべるな。カミソリが・・・あ!」しゃべった為、カミソリが動き、出血し始めた。
 副島の頸動脈近くのカミソリを井関と救急隊員が急いで除去し、止血を始めた。極めて難しい状況になった。
 久保田管理官は、救急病院でない、最短の病院に依頼し、その病院に救急車を向かわせた。
 午後5時。ある病院。
 この病院は今では救急病院ではないが、昔は救急病院だった。従って、手術設備はある。ドクターヘリでやって来た池上院長と本庄副院長が手伝って、手術を行った。輸血用血液は間に合ったが、出血と本人の体力の消耗が問題だった。
 遡って、午後4時。東京ドーム。
 MAITOが到着し、集団の真上から消火弾、続いて水流弾を落下させたので、集団の銃や機関銃は使い物にならなくなった。
 エマージェンシーガールズやEITOエンジェルズは慣れているので、殆どの隊員は濡れなかったが、集団は瞬く間に濡れ鼠になった。
 伝子達が到着するのと同時だった。伝子は五節棍を使い、ケンとジャックは三節棍を使い、ジョーはヌンチャクを使って、敵に挑んだ。
 エマージェンシーガールズやEITOエンジェルズは、シューターやブーメランを使う班とバトルスティックで闘う班に分かれて闘った。
 シューターとは、先にしびれ薬が塗ってある、うろこ形の手裏剣である。
 芦屋二美が運転するマセラティが到着し、ガルウイングが開いて、田坂と安藤は弓矢で後方支援をした。
 本郷と高木はこしょう弾を撃って後方支援をした。
 警察の機動隊が到着した。ジュラルミンの盾のバリケードが出来、前進していく。稲森は、少し倒れて様子を見ていたが、入り口近くで草薙が手招きするので、ジュラルミンの盾の壁伝いに移動した。
 ワゴン車の中に入ると、理事官がいた。「身代わりご苦労。稲森隊員。少し休め。敵の通信はどうだ、渡。」「妨害電波システムは、こちらのスクランブルで機能していません。高遠さんは、通信機能麻痺させるだろうと言っていましたが、ここまでやるとはね。」
 二人の会話を聞いた稲森は、「高遠さんって、どういう・・。」と言いかけたが。3人揃って、「魔法使いさ。」と応えた。
 午後5時。漸く闘いは収まった。渡が警官隊と『お掃除隊』に連絡した。
 お掃除隊とは、シューターを回収し、ゴミが散らかっていたら掃除をする、陸自の部隊で、訓練として、EITOの闘いに間接的に参加している。
 バイクがやって来た。高遠が運転している。「伝子。副島さんが虫の息だ。白バイに先導して貰って、病院に行こう。」伝子が後方を見ると、白バイが続いていた。
「了解。」伝子は、ヘルメットを被らず、そのまま高遠の後ろに乗った。エマージェンシーガールの頭部は実はヘルメット内蔵である。
 2人を見送った後、「我々も急ごう。」と、なぎさはエマージェンシーガールズ、EITOエンジェルズ両方に声をかけた。
 午後7時。病院。
「最後にあなた達に逢えたのが、せめてもの救いね。」と、池上医師は肩を落した。
「今、兼子さんのストレッチャーを移動して、対面させました。我々が出来るのは、ここまでです。」と本庄病院副院長が言った。
「副島準隊員の葬儀はEITOで行う。みんなで弔おう。」と、斉藤理事官は言った。
「お父上の副島早雲氏は、九州小倉の出身だと愛宕が思い出してくれたので、連絡を取りました。お身内での葬儀は後回しになりますが、司法解剖も必要となりますから、了解を頂きました。」と、久保田警部補が伝子に言った。
「ありがとうございます。」と、伝子はぽつんと言った。伝子は急に目眩がして、倒れた。
 30分後。伝子は目を開けた。
 伝子を覗き込む大勢の目があった。「おねえさま。脅かさないで下さい。」なぎさが言い、皆涙ぐんでいた。
「死なせたりしないわよ。こんなに大勢の医者の目の前で死なれたら、日本の恥だわ。」
 池上医師が言う通り、EITOから須藤医官も駆けつけたので、この病院の院長副院長を含めて医師が5人いる。簡略な検査の結果、疲労だろうということで、点滴が終り次第、伝子は帰宅することになった。
 翌日。午後1時。副島の菩提寺の寺。
 読経が流れている。遺体はないが、簡略な『会社葬』が執り行われた。
 副島はるかには、一応殉職なので、『筆頭名誉顧問』の称号が与えられた。天童、松本も参加した。
 丸髷署署長、副総監、陸将、海将、空将、警視総監。蒼々たるメンバーの弔問客だ。
 更に翌日。午後7時。副島の菩提寺の寺。
 九州の親族が上京し、お通夜。司法解剖の為、遺体が間に合うかどうかが危ぶまれたが、どうにか間に合った。
 弔問客には、お寺の習字教室や、自宅の書道塾の生徒や父兄が多かった。
 幸い、どこからも「攻撃」は無かった。勿論、厳戒警備体制だったから抑止力が働いたのかも知れない。
 伝子達『DDメンバー』も参列した。
 更に翌日。午後1時。副島の菩提寺の寺。
 葬儀から納骨まで、愛宕と伝子は付き合った。
 あっけない程、何も起こらなかった。
 同じ頃。服部のアパート。
 レコードプレーヤーに服部はレコードをかけた。
 鳳が辞退したので、ダビングしてプレゼントした上で、入手した、副島早雲のレコードだ。

 希望という名の あなたをたずねて
 遠い国へと また汽車にのる
 あなたは昔の 私の思い出
 ふるさとの夢 はじめての恋
 けれど私が おとなになった日に
 だまってどこかへ 立ち去ったあなた
 いつかあなたに またあうまでは
 私の旅は 終りのない旅

 希望という名の あなたをたずねて
 今日もあてなく また汽車にのる
 あれから私は ただひとりきり
 あしたはどんな 町につくやら
 あなたのうわさも 時折聞くけど
 見知らぬ誰かに すれ違うだけ
 いつもあなたの 名を呼びながら
 私の旅は 返事のない旅

 希望という名の あなたをたずねて
 寒い夜更けに また汽車に乗る
 悲しみだけが 私の道づれ
 となりの席に あなたがいれば
 涙ぐむ時 その時聞こえる
 希望という名の あなたのあの歌
 そうよあなたに また逢うために
 私の旅は 今またはじまる


【希望】
 作詞:藤田敏雄
 作曲:いずみたく
 歌:岸洋子

 ―完―
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