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2.【かの国の衰亡】
しおりを挟む======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『かの国』。『日乃本』でも『火乃本』でもない。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。
「水没」しかかっている国に行って、民の願いを聞くのが仕事だ。
願い?「殺してくれ。」に決まってるだろ?『殺す』のは、国とは限らない。
例えば、先日の場合、「年貢」に苦しむ民の願いを聞いて、首謀者達を「ブラックホール送り」にした。
収入はない。依頼主とターゲットがある。気の向くままの旅だ。
マルチバースって、知ってるか?昔はパラレルワールドって言っていた、「多次元併行宇宙」だ。
国の機関、政府事務棟。ある部屋。
この国の言葉ではない、言葉が行き交っている。
まるで、ここも違う宇宙のようだ。
「だから、この国を滅ぼしたら、元も子もなくなるじゃないですか。なんで、他国人を増やして、人口調整しているのか分からない。なんで。他国人からはタクス取らないのか分からない。もう、私、山田は辞めます。」
山田は出て行った。俺は、そっと尾行した。
政府事務棟の外の公園。
「山田さん。良かったら、私に愚痴ってみませんか。これでも私、『聞き上手』なんですよ。」
黒い帽子に黒い鞄。それで、セールスマンとでも思ったのか、私に不信感を持たず、山田は話した。
「ああ。あなたは、そのう、ハーフ、なんですね。だから、折り合いが悪かった。いや、止めたりしませんよ。飛び出した限り、『揺るぎない決心』だった筈だから。」
「信じてくれるんですか?」
「信じない人を呼び止めるもんですか。悩んでいる貴方を放っておけない。そう思ったもんですから。」
山田の話では、山田の部署では、民が嫌がるのを知っていて、他国人移住政策を政府に唆し、他国人はタクスと呼ばれる国への金は払わなくて済み、医療費もタダと銘打って、どんどん移住させる計画を進める為、自国民は。今以上にタクスを払わなくてはいけない、という「一方的契約」を国の宰相が決めてしまい、民は苦しんでいる、という。
前に訪れた世界と似たり寄ったりだな、と俺は思った。
「で、そのメンバーは、随意頭という民族ばかりなんですね。あなたは、この国の民の血が半分あるからイジメに遭っていた。その部署『モスキートネット』は不要だと思いますか?」
「ええ。民の為ならね。あれ?」
彼が返事をした時、私は『かくれんぼ』をしていた。
政府事務棟。モスキートネット。
俺は、堂々と入って行った。誰も見咎めない。見かけは山田だから。
「おい、山田。お前、どこ行ってたんだよ。仕事貯まってるぞ。」
「確かに。」
俺が手をかざすと、大金庫は消えた。
明くる朝。どの家の郵便受けにも郵便が入っていた。
封筒を開けると、札束に化けた。そして、手紙が入っていた。
「この国は、間もなく滅びます。せめてものお詫びに、大金庫に「預かっていた」お金の一部を国民の皆さんにお返しします。政府・モスキートネット。」
不思議と、会社・政治家・政府関係者の郵便受けには、何も入っていなかった。
そして、政府の建物は、全て無人になった。
存在していた筈の人々は「写真」になった。
風が吹いた。雨が降った。ゲリラ豪雨だった。
写真は、全て吹き飛ばされた。
これが、俺が経験した、いや、経験させた『かの国』の衰亡の始まりだ。
俺は、また違う次元の世界に跳んだ。
―完―
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