異次元の殺し屋・万華鏡

クライングフリーマン

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26.【洗脳(brainwashing)】

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======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『迷の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。

跳んで来たのは、ある川。
父と子供が溺れかけている。
俺は、素早く衣類を隠し、飛び込んで、2人を助け出した。
上流で細工をすることも出来なくはなかったが、一番早いと思ったのだ。

2人を助けたロープは、父親の荷物の中にあった。
父親の心を読んで、全てを悟った。
2人は、『2回目の親子心中』をしようとしていた。

俺は、素知らぬ顔で119番した。
20分ほどして、救急隊員が来たので、俺は説明した。
「俺は通りがかりの者ですが、どうやら水遊びに夢中になり、上流の増水に気が付かなかったようです。」
よくある、夏の水難事故だ。

行きがかり上、病院まで付き添った。
「バードウォッチングしていて、通りがかったんです。」
医師は簡単に信じた。

病室に2人になると、俺は父親に尋ねた。
「殺してくれ、という言葉が頭の中一杯になる位の事情って?」
父親は、俺に名前を聞くのも忘れて、語りだした。

彼は、『迷の国』役所の職員だった。
インフルエンザで病欠し、登庁すると、上司を含めて見知らぬ者ばかりだった。
同期の者は皆、早期退職していた。
上司は、提携している、通称尾金谷国の示範市から人員補充したのだと言った。
「規則が変わってね。『迷の国』人は、給料が10分の1になった。それで、皆辞めたんだよ。君はどうする?」
遠巻きに、『肩叩き』されたも同然だった。しかも、異国人に。
「来月末まで待っていただけませんか?子供の転校手続きも要りますし。」
「いいだろう。では、書類を作っておく。仕事はなるべく引き継ぎしないで終らせてくれ。」

父子家庭だった。
再就職の見込みなど無かった。
『迷の国』人の公務員の募集などどこもしていない。
他の仕事に就く自信は無かった。

根底の原因は、国の移民政策だった。
最初は『少子化対策』と言っていたが、鼻から『少子化対策』する気は無かった。方便だった。
ある経済学者でもあるタレントは、「30年かけて人口が減るように誘導されたんだよ。今日の為にね。」と言ったが、1年も経たない内に「自然現象だよ。このまま減ると危ないよ。」と、言い始めた。

そして、国策会議議員が入れ替わっていたことが分かった時には、『迷の国』人の議員は半分以下になり、尾金谷国人議員だらけになり、議会は有名無実、小さい法案ばかり議論し、内包閣総大臣は『内包閣決定』で大きなことを決め始めた。
『迷の国』の侵略は、かなり進んでいた。

俺は、助けた父親の田所鱒二に、「そのタレントの名前と、大まかな住所分かりますか?」と尋ねた。

タレント・標本家亨の家。
「誰に『洗脳』された?」
彼が答える前に、心を読んで答を得た。
ついでに、洗脳から解放した。
衣類で見えないが、彼の体には、色んな『跡』があった。

マインドコントロールと洗脳の違いは、どちらも他者の思考や行動を操作する点で共通しているが、その手法と強制力に違いがある。マインドコントロールは、心理的な手法で相手を誘導する。占い師やスピリチュアルなんとかが使う手だ。
しかし、洗脳は、より強制的な手法、例えば暴力や脅迫を用いて、相手の自由意思を奪う。拷問やクスリ等も使う。

国策会議堂議員会館。
外からは、出入り口は見えない。

中に入ると、そのオンナはいた。
異国語でオンナは尋ねた。「誰?」
「地獄で大勢待っている。洗脳を解く『キーワード』は?」と俺は言った。

オンナがそのキーワードを思い出した時、オンナは持っていた、毒を塗った短剣で自らを去った。

夕刻。テレビのニュース。夕刊、SNSで、キーワードが流れた。
『アンモンテンは濡れ衣』

タレント・標本家亨の家。
「俺は・・・俺は、どうしちゃったんだろう?」

田所さん、いつか戻って来るよ、将来の内包閣総大臣田所省三に会う為に。

さ、次の世界はどんなかな?

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

―完―
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