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41.【無風地帯(windless area)】
しおりを挟む======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『来の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、ある大学の教授の部屋。
教授は、鴨居にロープをかけていた。
側に、踏み台がある。
「手伝いましょうか?」と、俺は声をかけてみた。
「どこから現れたんだ?戸締まりは完璧だった筈だが。」
「確かにね。遺言書もあるし。死ぬ前に、お話しませんか?」
俺達は、書斎に移った。
俺は教授が出してくれたお茶を啜って、話を聞いた。
「私は地震学者だった。地震の予測をしていた。2つの大きな地震が半世紀中に起こることが予測された。1つは、20年以内に起こる首都直下地震、もう1つは国の西部に起こる地震。こっちは40年から50年以内に起こる地震だ。どちらが時間的に近い?」
「西部ではなく、首都の方ですね。」
「だろう?私達グループは、災害対策局から追い出された。そして、新たなグループが入った。首都の方は、整備するのに事案がかかるとか、通勤が遠くなるから官庁移転は出来ないとか・・・相手は『自然』だよ。結局、首都の方は無視された。そして、40年じゃ遠い未来だから実感が沸かないから、30年に『負けろ』と言い出した。まるで買物して値切るみたいに。相手は自然だよ。そして、去年辺りから、どこかで地震が起こる度に、やたらマスコミを利用して気象局が騒ぐようになった。だが、予測論争以外に真意が見えた。遅すぎたかも知れない。今の話も政治的思惑だが、この国は・・・。」
「隣国に支配される予定だった。だから、首都が壊滅しても構わなかった。」
「どうして、それを?」
俺は、ここでも教授に南極ぼけを使わず、正直に話した。
「実は、他の次元でも同じようなことが起こっています。じわじわと侵攻していた隣国が正体を現わし、政治家・官僚は手先になっている。トリガーを弾かないようにしなくてはいけない。」
教授は、引き出しから色相票を出した。束になっている。
少しずらすと、見事なグラデーションだ。
「君の言う『併行世界』とは、こんな感じかな?重なっている部分もあれば、そうでない部分もある。どこかに根源の次元があるとも言われている。宇宙の誕生と衰退のように、『内側』にいる我々には計り知れないが。残念ながら、トリガーは弾かれたようだ。昨日の『敗戦の日』、慰霊式典で詩総は、『過去の過ちを反省し』と述べた。」
「80年後談話ですか?80年目談話?」
「余所では、そう呼ばれているのか。それに相当する『エイティズ・コンクルージョン』なら、周りが必死で食い止めたよ。でも、その演説は、それに相当するものだった。今直ちに隣国の支配は始まらないが、『外国人優先法』を成立させる積もりらしい。与党野党共に隣国出身の者が『合法的植民地化』を進めようとしている。少し前だが、選挙の時に新党の党首が『自国民優先』と言ったところ、政治家・マスコミは袋だたきにした。根底にあるのは、これだ。『外国人』と言えば、他民族全体を指すように聞こえるから、便利に使ってきただけで、中身は隣国の『改国人』だ。」
俺は、前に跳んだ世界で『リペア』という言葉を聞いた。
どう『繕う』べきか。悩むところだ。
俺は、とにかく、教授に自殺しないでくれ、と頼んで姿を消した。
「あら?お父さん。このロープ、どうするの?」
「ああ。倉庫を整理しようと思ってね。」
財務庁。資料生産室。
俺は、時間軸を1日前に跳んだ。
俺は、自分の意思で次元を跳ぶことは出来ない。
だが、同じ土地のタイムリープは出来るのだ。
「やはり、大金庫があるな。銀行以上だな。」
「誰だ、貴様は!!」
俺は、いきなり拳銃で撃たれた。
弾は皆、壁にめり込んだ。
微妙な時間移動は、瞬間消えたように見える。
ことに、撃とうとする人間の考えを読むと、俺はすぐに反応する。
詩総が読む原稿は、すぐに見つかった。
翌日。敗戦の日。
詩総が読んだ文章に、皆は度肝を抜かれた。
「『反省』すべきは私自身です。私は隣国の『改国』に外交に行った際に、ハニトラにかかり、『行為』の映像を元に言うことをきかされ、彼らの思うままの『操り人形』として『間違った政策』を押し進めてきました。英霊を目の当たりにして、英霊の声が聞こえてきました。反省すべきは、国民全体ではありません。戦争の責任者は、既に長きに渡る裁判で罰せられております。この場において、隣国に『来の国』を植民地として献上する公言をするよう指令が出ていましたが、『主権』は国民です。数々の無様な政策、国民の皆様に選挙を通じて審判を受けたことを受け止め、ここに辞意を表明します。臨時総裁選には立候補しません。誠に申し訳ありませんでした。」
置いてあったマイクを手に取って話していた詩総は、後ろを向き、マイクを置いて聴衆に土下座をした。
言葉は文章を紡ぐ道具だ。そして、心を伝える道具だ。彼は、読んでいる内に目覚めたのだ。
いつの間にか、この国の『陛下』が、泣きじゃくる彼を立たせ、聴衆に深く礼をした。
ちょっと長引いたが、俺の役目は終ったようだ。
教授の家の倉庫の片付けの手伝いは、娘さんに任せよう。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
―完―
※この世に「悪意」がある限り、書き連ねたいと思います。「希望」を見いだす為に。
クライングフリーマン
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