中年探偵幸田の日記

クライングフリーマン

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106.浮気の代償

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 ○月〇日。
「ちゃうねん、ちゃうねん。」お決まりの台詞や。往生際の悪い奴の決め台詞。
 浮気調査で、現場に踏み込んだら、大抵の男が言う。
 そうでない場合は、もっと巧みに浮気をしているんやろう。
 前に、倉持に質問されたことがある。
「思いつかへんねやろ。しょうもない。」
 今回の場合も、その台詞で逃げようとした。
 女房の剣幕に、男は窓から飛び降りた。
「倉持、ここ何階やったっけ?」
「三階です。」倉持はもう救急車を呼ぶ為にスマホを取り出してプッシュしていた。
 ふと見ると、女房は、相手の女を投げ跳ばしていた。

 事務所に帰って、所長に報告をした。
 倉持は書類仕事をしている。
 すっかり、いつもの倉持や。来月、式を挙げるから、気持ちの整理がついたか。
「で?入院したんか。」「入院手続きしたら、女房が『半年位泊めておいて』って言って、看護師長に怒られてましたわ。『ウチはホテルちゃう。』って。」
「そら、言うわなあ。花ヤンとこは?」
「学歴詐称。噂通りでした。政治家やあるまいし。そこの社長も堅い。」
「体裁悪いんかなあ。まあ、クビにしたら一緒やけどな。」
「その社員、訴えたる!って。どっちもどっち。アホ臭い。」
「はい。提出しますで、学歴詐称。」と、横ヤンが横から書類を出した。
 横ヤンは、トシの割りに書類仕事が早い。

「ほな、素麺食べたら解散。暑いしな。芦屋さんがな、余ったから言うて配達してくれたんや。余った風な包装ちゃうけどな。」
 総子が珍しく、素麺の鍋やらつゆやらを、狭い食堂に用意した。
 今日は、パートの事務員は遅い盆休みや。

「お嬢。今日はEITOはええのん?」
「今日は訓練日。訓練ない人は休み。兄ちゃん自分専用のホバーバイク届いたから、乗り回して喜んでる。自転車に初めて乗った子供みたいに。」
「自転車、初めて乗れた時は感動やったなあ。ウチは一番遅かったから。」と、横ヤンが意外なことを言った。
「いつも友達のんを見学。寂しいもんやで。」

 午後7時。俺の自宅の夕食も、冷や麦やった。
 夏の定番やな。
「ウチも一番遅かったから、横山さんの気持ち分かるわ。大体、乗せてくれへんねん。持ってる子。」
「まあ、そんなもんかな。俺は姉ちゃんの『お下がり』やったからなあ。ようワコ乗せて走った。」
「あんた。本気で『浮気』してもええよ、ワコちゃんなら。ウチよう産まんし。」
「お前まで。怒るで、しかし。子供、『里子』でもええやん。お前はようやってるで。総子やないけど、『二足の草鞋』、オカミサンと女将さん。」
「日記につけとくわ。」

 ―完―
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