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111.護衛
しおりを挟む○月〇日。
珍しい客が来た。
会議室コーナーで昨日の報告会をしていると、ドアがノックされ、男が顔を出した。
「あのー。興信所言うたら、何されるとこですか?」
「わしが応対しますわ。」と花ヤンは相談コーナーに行った。
南部興信所の個室は所長室しかない。
俺達は声をひそめて報告をした。
5分ほどすると、花ヤンが顔を出した。
「所長。この人にとっては『一大事』ですわ。」
誰が言うともなく、俺達はファイルを閉じ、倉持が呼びのパイプ椅子を出し、『依頼人』に勧めた。
花ヤンは、ビニール袋に入った封筒と中身の手紙らしきものを皆に見せた。
『必ず殺す』
そう書いてある。
「手書きやな。所長、後で府警の鑑識に廻して貰いますわ、内緒で。」と、横ヤンが言った。
「よし。他の案件は後回しや。今から『警護』する。え・・・と。」
「小宮進さんです。」と花ヤンが言った。
「倉持と幸田は日本橋で防犯カメラを仕入れてくれ。総子、銭。」
総子は、今日はEITOの休み。但し、緊急時には出動。受付け事務のおばちゃんが帰省中なので、事務を行うこともある。
総子は、金庫から財布を出して、倉持に渡した。金は既に小分けしてある。
「花ヤンと俺は小宮さんの護衛に入る。後で合流する。総子は、あっち行く時はメール。」
日本橋。馴染みの店で防犯カメラと盗聴器を買う。小さい店だが、気の良い店主がまだ頑張っている。
「幸田さん、捕り物ですか?」「さあな。企業秘密やで。」
買物して倉持と、万代池の近くの小宮さんの自宅に着いたのは、午後3時半を回っていた。
4人で手際良く、防犯カメラと盗聴器を買う。小宮さんの安全確保もあるが、我々の『アリバイ』作りでもある。
前科者データで何か出ればいいが、小宮さんは命を狙われる覚えはない、と言う。
去年まで、自宅で『雑貨店』を営んでいたが、女房が他界したのを機に閉業した。
お客とトラブルがあったとすれば、昔のことかも知れない。女房が生きていたなら、何かヒントが見つかるかも知れないのだが、と話していた。
花ヤンと横ヤン、所長の手腕で、漸くヒントが出てきた。
去年、外装屋、遺品整理屋、不動産屋が立て続けに訪問したことがあった、と言う。
特殊詐欺かと思ったが、小宮さんが家を売らず引っ越さないことが知れてしまった。
横ヤンが、法務局の知り合いに確認した。
周辺で3軒、家を手放している。
昔、『地上げ屋』が横行したが、今は法律で縛られている。
家の売却は、家人次第だ。
所長は、佐々ヤンに電話した。
ピンポーン。
インターホンには出ないように、所長は小宮さんに合図した。
「先日、お伺いした『占いフレンド』の者ですが・・・はい。では。」
一人芝居した男は、門扉を開け、中に入り玄関に向かった。
道具を出そうとした瞬間、佐々ヤンが男に手錠をかけ。現行犯逮捕した。
連行していく途中、インターホンに向かって、佐々ヤンは頷いた。
後から聞いた話だと、待機していた男の仲間も一網打尽。
後は、真壁の『尋問』待ち。警視庁の新里、大阪府警の真壁は『落としのプロ』と呼ばれている。
芦屋一美と真壁の『二股不倫』は、真壁が見破った。
さて、小宮さんの件だが、バックに那珂国のブローカーがいる、土地買収の一団だった。
『空き巣のプロ』を使ったようだが、こちらもプロだった。
小宮さん宅の盗聴器は回収、防犯カメラは調査費の込み込みで引き取って貰った。
午後7時。夕食をしながら、今日の顚末を話していたら、澄子は戸締まりの確認をしまくった。そして、総子に勝って貰った、ベビードールに着替えた。
こっちの『防犯』は、どうしたらええんやろう、と考えながら、「大根、よう、染んでるな。」と呟いた。
『よう染んでる』とは、関西弁で『よく煮込んでいる』ことを指す。
澄子は、よう染んでる。
―完―
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