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11【冬夜Diary】欲情の朝(四男)
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ふらふらと自室へ戻った冬夜は後ろ手でドアを閉めると、ため息とともにベッドに倒れ込んだ。うつ伏せになって手足をだらんと伸ばし、まくらに向けてもう一度大きなため息をつく。
……眞空に、イヤな言い方しちゃった。
風邪気味で思考が鈍っていたとはいえ、あんなきつい言い方をするべきではなかったと冬夜は素直に反省する。心配してくれていたのは、痛いほど伝わってきていたのに。
でも、眞空だっていけないんだ。……あれ、キスできる距離だったんだよ?
額を重ねたときのよそよそしい反応を思い出して、冬夜はやはり落胆を感じずにはいられなかった。熱っぽくてだるいからだにムチ打って、少なくとも自分は仕掛けているつもりだった。こちらから歩み寄ったのに自分を欲してくれなかった気弱な兄に、いけないと思いつつもやきもきしてしまう。
なんとなくだが、冬夜は眞空の想いに気づいていた。生まれ持った美しい顔立ちのために男女問わず好意を寄せられる機会の多い冬夜は、いつしかそういう秘めごとの類いにとても敏感になっていた。どういうわけか最近眞空の気持ちがわかりやすく言動に表れていたため、そろそろ兄もその気になってくれたのかと期待していたのだが、さっきのあの態度を見る限りまだまだ煮え切らないのだろうと冬夜は改めて肩を落とす。
そういう冬夜は兄への、兄に対して持つべき以上の特別な感情をしっかりと自覚していた。もう十年も眞空しか見えていないのだから、まちがうはずがない。ひとりぼっちだったひばり園で、たったひとつの光だった人。親がいなくて、たった六年の生命に希望をなくしていた自分に、あたたかい手を差し伸べてくれた人。
両想いのはずなのにちっとも縮まらないこの距離がもどかしくて、冬夜はまたまくらにため息を押しつける。眞空は何も言ってくれない、何もしてくれない。……僕が弟だから?
眞空は焦ってくれないのだろうかと、冬夜は数日前に偶然知ってしまった海斗と亜楼のことを脳裏によみがえらせた。偶然亜楼の部屋の前を通ったら聞こえてしまった、禁断。いけないと思いつつも、冬夜は好奇心に負けてそのままこっそり盗み聞きをしてしまった。なんだか、すごいことになっていた。でも海斗は亜楼を好きだと、ちゃんと伝えていた。
あの筒抜け双子のことだから眞空も知ってるはずなのに……。ねぇ眞空、僕はちょっと焦ってるよ? 先、越されちゃった……なんだかなぁ、もう。
冬夜はぐるぐるする気持ちをかき消すように、乱暴にタオルケットを頭からかぶった。ふと薄暗くなった視界の中で、さっき眞空と額を合わせたことを思い返す。
瞳と瞳が近すぎて、互いの長いまつげがぶつかりそうだった。あと少し近づけば、口唇と口唇が簡単に触れそうだった。小さい頃から慣れ親しんだ眞空の匂いを近くに感じると、いつしか冬夜は安心を通り越して欲情するようになった。
……眞空の匂い、した。眞空の……好きな人の、匂い……たまんない。
冬夜は瞳を閉じると、頭からかぶったタオルケットの中でからだを横向きにし、そろそろとパジャマのズボンに手を入れた。朝からこんなこと……と思いつつも、滑り込ませた手は器用に下着をずらし、熱くなり始めている欲を丁寧に取り出す。そのまま手で包み、慰め始めた。
「……っ、」
冬夜は閉じたまぶたの裏で、先程の続きを想像する。額を付き合わせたあと、眞空は僕をやさしく抱きしめてくれる。髪を撫でながら、大丈夫? と訊いてくれて、僕が小さくうなずくと、眞空は僕のあごを指先ですくって上を向かせる。そのあと僕を熱く見つめた眞空は我慢できなくなって、噛みつくように少し乱暴に口唇を押しつけてくる。
「……っ、あ、……っ」
リビングにはまだ本物の眞空がいるのに、上下に擦る手を止められない。過保護な眞空が体温計と薬を持って部屋を訪れるかもしれないのに、単調な動きをくり返す手も、いやらしい想像ももう止まらない。
眞空の舌が恥じらう僕の口唇をこじ開けて、無理やり入ってくる。眞空の舌が僕の舌を引っ張り出して、激しく絡めてくる。息継ぎの箇所がわからないほど絶え間なく舌を求められ、立っていられなくなった僕は眞空の首に腕を回してしがみつく。しがみついた僕の腰を、眞空が荒々しく抱き寄せる。
「……んっ、……は……」
振り動かす冬夜の手は加速していき、からだはどんどん熱くなった。元々熱っぽかったせいか、興奮のせいか、どちらの熱かわからずに肌の上で混ざり合う。よく知った自分の好いところを器用に追い詰めていき、架空の眞空で硬くした根を、強く振る。
「……まそ、らっ……」
兄の名を小さくつぶやいて、タオルケットにもぐった冬夜は射精した。今までも、もう何度も、想像の中の眞空にくちづけられたりからだをまさぐられたりしながら抜いている。
……眞空、早く、僕を求めてよ。早く、僕を、眞空のものにしてよ。
焦れる欲のかたまりを虚しく自分で慰めながら、冬夜はタオルケットの中でしばらくうずくまった。
……眞空に、イヤな言い方しちゃった。
風邪気味で思考が鈍っていたとはいえ、あんなきつい言い方をするべきではなかったと冬夜は素直に反省する。心配してくれていたのは、痛いほど伝わってきていたのに。
でも、眞空だっていけないんだ。……あれ、キスできる距離だったんだよ?
額を重ねたときのよそよそしい反応を思い出して、冬夜はやはり落胆を感じずにはいられなかった。熱っぽくてだるいからだにムチ打って、少なくとも自分は仕掛けているつもりだった。こちらから歩み寄ったのに自分を欲してくれなかった気弱な兄に、いけないと思いつつもやきもきしてしまう。
なんとなくだが、冬夜は眞空の想いに気づいていた。生まれ持った美しい顔立ちのために男女問わず好意を寄せられる機会の多い冬夜は、いつしかそういう秘めごとの類いにとても敏感になっていた。どういうわけか最近眞空の気持ちがわかりやすく言動に表れていたため、そろそろ兄もその気になってくれたのかと期待していたのだが、さっきのあの態度を見る限りまだまだ煮え切らないのだろうと冬夜は改めて肩を落とす。
そういう冬夜は兄への、兄に対して持つべき以上の特別な感情をしっかりと自覚していた。もう十年も眞空しか見えていないのだから、まちがうはずがない。ひとりぼっちだったひばり園で、たったひとつの光だった人。親がいなくて、たった六年の生命に希望をなくしていた自分に、あたたかい手を差し伸べてくれた人。
両想いのはずなのにちっとも縮まらないこの距離がもどかしくて、冬夜はまたまくらにため息を押しつける。眞空は何も言ってくれない、何もしてくれない。……僕が弟だから?
眞空は焦ってくれないのだろうかと、冬夜は数日前に偶然知ってしまった海斗と亜楼のことを脳裏によみがえらせた。偶然亜楼の部屋の前を通ったら聞こえてしまった、禁断。いけないと思いつつも、冬夜は好奇心に負けてそのままこっそり盗み聞きをしてしまった。なんだか、すごいことになっていた。でも海斗は亜楼を好きだと、ちゃんと伝えていた。
あの筒抜け双子のことだから眞空も知ってるはずなのに……。ねぇ眞空、僕はちょっと焦ってるよ? 先、越されちゃった……なんだかなぁ、もう。
冬夜はぐるぐるする気持ちをかき消すように、乱暴にタオルケットを頭からかぶった。ふと薄暗くなった視界の中で、さっき眞空と額を合わせたことを思い返す。
瞳と瞳が近すぎて、互いの長いまつげがぶつかりそうだった。あと少し近づけば、口唇と口唇が簡単に触れそうだった。小さい頃から慣れ親しんだ眞空の匂いを近くに感じると、いつしか冬夜は安心を通り越して欲情するようになった。
……眞空の匂い、した。眞空の……好きな人の、匂い……たまんない。
冬夜は瞳を閉じると、頭からかぶったタオルケットの中でからだを横向きにし、そろそろとパジャマのズボンに手を入れた。朝からこんなこと……と思いつつも、滑り込ませた手は器用に下着をずらし、熱くなり始めている欲を丁寧に取り出す。そのまま手で包み、慰め始めた。
「……っ、」
冬夜は閉じたまぶたの裏で、先程の続きを想像する。額を付き合わせたあと、眞空は僕をやさしく抱きしめてくれる。髪を撫でながら、大丈夫? と訊いてくれて、僕が小さくうなずくと、眞空は僕のあごを指先ですくって上を向かせる。そのあと僕を熱く見つめた眞空は我慢できなくなって、噛みつくように少し乱暴に口唇を押しつけてくる。
「……っ、あ、……っ」
リビングにはまだ本物の眞空がいるのに、上下に擦る手を止められない。過保護な眞空が体温計と薬を持って部屋を訪れるかもしれないのに、単調な動きをくり返す手も、いやらしい想像ももう止まらない。
眞空の舌が恥じらう僕の口唇をこじ開けて、無理やり入ってくる。眞空の舌が僕の舌を引っ張り出して、激しく絡めてくる。息継ぎの箇所がわからないほど絶え間なく舌を求められ、立っていられなくなった僕は眞空の首に腕を回してしがみつく。しがみついた僕の腰を、眞空が荒々しく抱き寄せる。
「……んっ、……は……」
振り動かす冬夜の手は加速していき、からだはどんどん熱くなった。元々熱っぽかったせいか、興奮のせいか、どちらの熱かわからずに肌の上で混ざり合う。よく知った自分の好いところを器用に追い詰めていき、架空の眞空で硬くした根を、強く振る。
「……まそ、らっ……」
兄の名を小さくつぶやいて、タオルケットにもぐった冬夜は射精した。今までも、もう何度も、想像の中の眞空にくちづけられたりからだをまさぐられたりしながら抜いている。
……眞空、早く、僕を求めてよ。早く、僕を、眞空のものにしてよ。
焦れる欲のかたまりを虚しく自分で慰めながら、冬夜はタオルケットの中でしばらくうずくまった。
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