乙女ゲーの世界に落ちましたが、目の前には推しのご先祖様!?異世界チートで魔王を倒すはずが、いつの間にか恋に落ちていました。

高崎 恵

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避けられているみたいです。

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「ねぇ、聞こえてるーー? 次はどこに行くつもりなのよ」

「……あっちだ」

「遠いんだけど。全然声が聞こえないよ」


 私達は今荷物を纏めて移動中である。もうあのダンジョンではレベルが上がらないと判断して次の街へと移動しているのだが、一つ問題がある。彼の距離が遠いのだ。私の5メートル先を歩いている。
 この前の温泉事件以来、彼は「俺の半径5メートル以内に近づくな」と言って距離を空けてくるのだ。



「そんなに怒んなくたって良いのに……」


 最近やっと仲良く冒険生活を送れていたのに、また彼との距離が開いてしまって少し寂しくなる。
 その開いた距離を保ちつつ暫く歩くと彼が立ち止まる。どうやら港町に着いたようだ。


「今日はこの街に泊まる。宿が空いてないから探してくるから、お前はそこのベンチで待ってろ」

「えっちょっと!」


 私が声を掛けるよりも先に彼は走り出してしまう。どうしよう、このままではいけないと分かっているのだが、明らかにあの温泉での一件が原因だろう。
 私が明らかに悪いからどうして良いか分からない。



 ブーッ、ブーッ。
「通信機……? はい、ユリです。ミラー様? ええ、今は港町に居て……。はい、ちょうど海沿いにいて、大きな青い船が停まっているのが見えます」


 胸につけた通信機が振動し、応答すると連絡してきた相手はミラー様だった。久々に連絡をくれのだが、なんとミラー様も港町に来ていたらしい。


『うん、そうそう。恐らく同じ街にいるから会えるかな?  今はどの辺りにいるの?』

「大きな通りの先にある、海が見えるベンチに座っています。近くに花屋が見える所です」

『分かった。今そちらへ行くから待っててくれるかな?』

「はい! お待ちしています!」

『くくっ、そんなに嬉しそうにしてもらえるとこっちも嬉しいよ。じゃあ』


 ユーリと気まずい空気の私は、ついミラー様が来るのに嬉しくなって声のトーンも上がっていた。そう言われて暫く待つ。
 先にユーリが戻ってくるかと思ったが、彼はなかなか戻って来ない。もしかしたら宿探しが難航しているのかも知れない。
 一応彼にもミラー様が来ることを伝えようと思い、通信機で連絡を取ろうとするが応答がなかった。



「やあ。久しぶりだねユリ殿」

「お久しぶりです! ミラー様、マーク様」

 暫く待つとミラー様と、その後ろに控えるマーク様がやって来た。今回はその後ろに従者の方達も控えている。


「はい、久しぶりに会った君にこれを」

「うわぁ。可愛らしい花ですね! こんなもの頂いて良いのですか?」

「ああ。君に似合うと思って選んだのだから貰ってくれないと困る」

「ふふ、ありがとうございます」


 ミラー様が渡してくれたのは可愛らしい花束だ。久々のお姫様扱いに寂しかった気持ちもほぐれてくる。しばらく会わなくても変わらない様子にホッとしてしまう。


「今は何をしてるんだ? 彼は一緒に居るんじゃなかったのか?」

「ユーリは今宿を探しに行ってくれていて……」

「……おい、人が宿を探してる間にお前はデートかよ」

 ミラー様に状況を説明していたところにユーリが帰って来てしまった。彼は少し機嫌が悪くなってしまったみたいだ。



「デートなんかじゃないよ。たまたま視察で近くを訪ねたから会ってただけさ。君は元気かい?」

「……別に変わらない」


 流石のミラー様、ユーリが機嫌悪いのに気づいているはずだかそれを感じさせずにナチュラルに話しかけている。
 ミラー様の自然さにユーリも気まずそうにしながらもちゃんと返事をしている。相変わらずのぶっきらぼうさがミラー様の隣に立つと際立つ。


「こんな所ではなんだからどこかで食事でもしながら話をしないかい? 別に急いでる訳じゃないんだろう?」

「いや、宿が全部埋まってて今日は野宿する場所を探さなきゃいけないから時間はない」


 どうやら宿は空いてなかったらしい。そのせいで彼の機嫌も悪くなってたのか。別に野宿ぐらいいつもしてるから別に気にしないのに。


「それなら僕達が取ってる宿に君達も泊まれば良いさ。マーク、あの宿まだ部屋余ってるよな?」

「ええ、まだ数部屋残ってたはずです。安全対策の為に宿を一つ貸し切りましたので」

「……お前らのせいだったのか。明らかに部屋が空いてる宿にも断られたのは」


 ユーリの声が一段と下がったのは気のせいだろう。うん、気のせいだと思おう。


「おぉそれは申し訳なかったね。お詫びとして食事をご馳走しよう。では行こうか。あちらに良い感じの店があったんだよ」

「俺は別に行きたくない。お前と飯に行っても美味いもんも不味くなる」

「ちょっとユーリ! ミラー様に対してその口の聞き方は不味いでしょ!」

 相手はこの国の王子様だ。彼の言い方にこちらがヒヤヒヤしてしまう。


「いや、彼がそう言うのも本当のことだ。僕と一緒だと美味しく食べられないからね。そう言われてしまうのも仕方ないから良いんだよ」

「うん……?」  

 本当のこととはどういうことだろう。マーク様のオススメのご飯が美味しくない訳ないと思う。

「まぁただ飯が食えると思って着いてきな。もし君が来ないならユリ殿だけを連れて行くがどうする?」

「……奢りなら行ってやらなくもない」

「ユーリっ!」

「じゃあマーク、あの通りにあった店に行くから準備をよろしくな」

「承知しました。ではお先に失礼します」

 そう言うと先に歩き出してしまうマーク様。そしてさらにその後ろを従者の方達が何人かついて行く。


「マーク達は色々することがあるからね。では僕達はゆっくり行こうか」

「はぁ。飯は肉か?」

「いや、魚料理だ。ここは港町なんだから魚が美味しいだろう?」

「魚か……。冷めた魚の方が肉よりマシか?」

「ステーキよりはマシだね。あれは冷めると固くなってしまうから実はあまり好きじゃないんだ」

「お前も大変だよな」

 ユーリの突っ掛かり具合にミラー様の機嫌を損ねないかと心配していたのだが、思ったより2人の仲は悪くないようだ。2人で話しながら歩いている姿に少し拍子抜けする。
 2人の後ろ姿を見て歩いていたら遅れる私にミラー様が気づいてくれる。

「ユリ殿、少し歩くのが早かったかな。おいで」

 そうミラー様が言ってくれるが、私が近づいてまたユーリが不機嫌にならないか心配だ。
 彼のことをそっと見るとため息をつきながらも頷いてくれたので、走ってミラー様の隣に行く。

「おや? 君はそっちで良いのかい?」

「気にならさないで下さい」

 深く聞かないで下さいと念を込めながら笑顔で言うと、何かを感じ取ってくれたのかそれ以上は聞かないでくれるミラー様。
 そのまま私、ミラー様、ユーリの並びで店まで歩いていく。
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