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聖女様とご対面です。
しおりを挟む「聖女様かぁ……」
今日も宿の窓からムーンのネックレスに月明かりをかざす。ネックレスの魔石が以前より輝きを増してきている気がするのは気のせいだろうか。もう毎晩こうやって月明かりを見ながら色んなことに思いを馳せるのが日課になってきている。
リア様が私が聖女様のことについて心配していたからみんなに話せなかったと言っていた。目を閉じて自分の気持ちと向き合ってみる。確かに私は聖女様の名前を出したら、彼女が加わりもう2人だけのパーティーじゃなくなることを恐れていたのかも知れない。あそこは私がこの世界で見つけた唯一の自分の居場所だから。もし追い出されたりしたらもうこの世界で生きていけないと思う程、私はあの場所を心地良く感じているのだ。
でもそれとこれとは別。魔王を倒せないとこの世界が滅んでしまうし、そうしたら当初の目的である推しのユウを救う所ではなくなってしまう。私は決意を新たに眠りについた。
◇
朝食を食べ終えると宿の玄関に集合する。そしてみんなでまだ来ていないユーリを待っているとリア様が近づいて来る。
「聖女様と会う心の準備は出来たのですか?」
「もう大丈夫ですよ。彼女の力がなきゃこの世界が滅んでしまいますもの。だから大丈夫です」
私の我儘で世界を滅ぼす訳には行かない。昨日決意したように聖女様の力が必要ならば一緒に頑張りたいと思う。
「そうですか。では私からアドバイスを一つ。もし辛くなったら自分の気持ちに素直でいて下さい。素直になれば道は開けます」
「……それは未来視?」
「いえ、ただのお告げです」
「リア様のお告げ!? それは守らなきゃいけませんね」
……リア様は本当に何者なんだろう。
そうこうしている間にユーリが来て、全員揃ったのを確認するとミラー様が声を掛ける。
「ではマークはこちらに残って海の様子を見ていてくれ。もし何かあれば無線機ですぐに知らせてくれ」
「承知致しました。ミラー様達もお気をつけ下さい」
「ああ。じゃあユリ殿頼めるかい?」
「はい。では皆さん手を繋いで頂けますか?」
今回は早く対応したいとのことで、私の転移魔法で聖女様の所までひとっ飛びの予定だ。ゲームの中で、ヒロインが暮らしていた神殿は何度も出て来たからそれをイメージしたらちゃんと転移出来るはず。
「行きますよ! 神殿に転移~~!!」
目を瞑り神殿をイメージする。この世界らしくムーンを意識した神殿で、神殿の横には湖があってそこに月が映し出されるシーンが素敵だったんだよね。ユウとヒロインが魔王との対決前にそこで抱き合って「魔王を倒したら伝えたいことがあるんだ」ってユウが彼女に告げるのだ。でもバッドエンドではユウは倒れてしまう。「伝えたいことがあるって言ってたじゃない! ねぇ、起きてよ! あの時私に何て言う予定だったのか教えてよ!! ……私だってあなたが好きだと伝えたかったのにっ……」って泣き崩れるヒロイン。あのシーンが本当に切なくて涙が止まらなかった……。
◇
ドッポーーン!!
「キャーー!」
「っくしゅん! お前っ!! 何で転移先が湖の中なんだよっ!!」
転移する際に湖のシーンを思い出していたら見事その湖に落ちてしまったらしい。幸い岸のすぐ横だったのですぐに湖から抜け出したがみんな全身水浸しだ。
「ご、ごめんなさいっ! すぐに乾かしますからっ!」
ユーリはともかくミラー様とリア様まで巻き込んでしまい申し訳ない。慌てて乾燥の魔法を使おうとするとミラー様がコートを掛けてくれる。
「ほら、服が透けてしまっているからこれを。まずは自分自身を乾かしてくれ。僕達はその後で構わないから」
「あ、ありがとうございます」
ミラー様の対応に少し頬が赤くなってしまうがお言葉に甘えて自分の服を乾かしてしまう。そして次にミラー様、リア様と乾かしていると遠くから女性の声が聞こえてきた。
「ここに侵入するとは何者ですかっ!!」
遠くから走ってきたのは、白いワンピースを着た金髪の女の子。歳はユーリと同じくらいだろうか。
「あれ? ミラー様? すみませんっ! 侵入者かと思いましてっ!」
「問題ない。こちらこそ急用だとは言えこんな場所にいきなり入ってしまい申し訳なかった」
「急用があるのですね。ミラー様だけでなくリア様まで来ていただけるとは。お久しぶりです!」
ミラー様と話す姿を少し後ろから見つめる。さすがヒロインの祖先だ。見た目は金髪のふわりとした少しクセのついた髪だが、目は大きな碧い瞳で顔もとても小さい。可愛らしくて、誰もが好感を持つだろう。そして申し訳なさそうに謝る姿が一転、今は笑顔で談笑している。天真爛漫で穢れを知らない女の子っと言ったイメージ。
「ミラー様とリア様が揃ってどうしたんですか?」
「僕達だけじゃないよ。ほら彼らも一緒に来たんだ」
そうしてミラー様が一歩横にずれて私達を紹介してくれる。
「そちらの女性は……? って勇者様じゃないですかっ! 何でそんなにビショ濡れなのですか!! 風邪を引いてしまいますからあちらで拭いて下さいっ!!」
「ちょっ、俺は大丈夫だからっ」
「大丈夫ではないですよね? 遠慮はしないで下さい」
そう言うと聖女様はユーリの腕を取るとグングンと引っ張ってあっという間に神殿の中へと連れていってしまった。
「えっと……どうします?」
聖女様が凄い勢いで行ってしまったので、ミラー様も含めた私達は唖然としてしまった。王子様を放置するってなかなかではない?
「彼女はユーリ殿のことになると視野が狭くなるからな。とりあえず僕達も中に入れてもらおうか」
「え?」
私の小さな呟きは聞こえなかったようでミラー様が歩き始めるので慌てて着いていく。ユーリのことになるとって……どういう意味?
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