乙女ゲーの世界に落ちましたが、目の前には推しのご先祖様!?異世界チートで魔王を倒すはずが、いつの間にか恋に落ちていました。

高崎 恵

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憧れているようです。

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「これは……ひどい」



 扉を開けて部屋の中に入ると、机の上や引き出しが全部開いており、ベッドは枕やカバーが切り裂かれ荒らされていた。誰かが何かを探していたようだ。



 「ララ殿、何か盗まれている物はありますか」



 こんな状況で聞くのは酷だろうが、大事なことだ。リア様がそう問いかけると、ユーリの腕から離れて部屋に顔を向ける。とても怖かったのであろう、目元が泣いた跡で赤く腫れてしまっている。それでも部屋を見渡して確認をしようとしている姿がとても痛々しい。彼女はまだ少女だと言ってもいいような年齢だろうに。



 「なくなっているもの……」



 「リア殿から通信があったがどうしたんだい」



 ララさんが部屋を探しているとことにミラー様が来てくれた。彼が来てくれると心強い。そう思ったのが彼女の反応は違ったようだ。



 「キャッ!ミラー様っ!あつ、あのっ、あっち、あっち行っててくださいっ」



 そう言いながらミラー様の背中を押し、部屋の外に追い出す。ミラー様も抵抗することもなく、あっレディの部屋だったからね悪かったね、ここはユリ殿に任せて一旦外で待とうかとユーリとリア様も引き連れて出て行った。



「はぁ、どうしましょう! ミラー様が私の部屋にっ! 私の部屋の空気を吸わせてしまった! どうすれば良いですかユリさん!」



 えっと……さっきまで泣いてユーリに抱きついてた子はどこ行っちゃったのかしら。今も涙目で顔を赤くしてはいるのだが、テンションがだいぶ違う。



「えっと、1回深呼吸したらどうかな?」



「スーハー、スーハー……ミラー様の残り香を感じます! はっ! 部屋を見られるのが恥ずかしいから外に出してしまったけど、ここにそのまま居て貰えば今日の夜ミラー様の匂いに包まれて寝られたんじゃっ!?」



 こっ怖い。え?この子さっきまで部屋が荒らされて怖くて泣いてたんじゃなかったっけ?

 今別の意味で危ない思考に至ってるけど大丈夫!?怖さでおかしくなっちゃった?

 というかその前にこの子ユーリのこと勇者様って言って慕ってなかったっけ?さっきまで状況が状況だとはいえユーリと抱き合ってましたよね?



「えっと……ララさんはユーリのことが好きなんじゃなかったの?」



 恐る恐るそう問いかける。



「へ? なんと?」



「だからユーリのことが好きなんじゃないのなんでミラー様にそんな反応してるの?」



「……。…………。へ?」



「へ?」



 長い沈黙が2人の間に流れる。荒らされた部屋で今確認するようなことじゃないかも知れないけど、ララさんの様子が気になりすぎて。

 ララさんを見つめると、ボケッして頭にハテナがいっぱい浮かんでいるのが分かる。だがここで負けられないとなぜか思ってしまい、何も言わずにじっとその瞳を見つめ返す。

 そして先に言葉を発したのはララさんだった。



「ふぎゃっ! ユリさんまさかそんなこと考えてたんですか!? いや、私の態度が紛らわしかったのか!? むしろ私はユユ推しだったんですけど!?」



「ユユ推し?」



「ユリさんとユーリでユユです! ユユカップル推し良くないですか!?」



「えっと、ララさんはそれで良いの?」



 ユーリとの推しだと言われて気恥ずかしい気持ちはあるが、ここで話が脱線したら終わり。そこは一旦スルーしてララさんの気持ちの話に戻す。するとララさんはあっけらかんとしてユーリのことはなんとも思ってないと言う。



「むしろお兄って感じなんですよね。ほんとお互い兄弟みたいに育ってたんで、親戚みたいなもんなんです」



「でもこっちの神殿へ来た時に勇者様って呼んでユーリしか目にないような感じだったでしょ?あれはどういうこと?」



「う――ん、もういっか。神官長さんは悪者だったみたいだし……」



 一瞬そう言うと少し寂しそうな表情を見せたが、何か吹っ切れたように話だすララさん。彼女曰く、あの勇・者・様・というのは、神官長からの指示だったらしい。聖女は勇者を慕って尊重すべし、大事にすべしだと常日頃から言われ続けていたそう。だから私たちが来た時も一番にユーリの所へ向かい、お世話するようにしたと。



 「今思うとおじいさんが言っていた洗脳の一部だったのかなと思います。だって私が憧れているのはミラー様なんですよ」



 そう言うと少し恥ずかしそうに頬を染めるララさん。そうか、ミラー様が好きなのか。確かにあのザ・王子様なミラー様に憧れる気持ち分かる。私も見た目だけで言ったらミラー様が良いもん。品が合って、優しそうで大人な余裕もあるミラー様。



 「分かりますか!? そうなんですよ。ユーリはやんちゃなお兄ちゃんって感じなんですけど、ミラー様はスマートな大人って感じで! あっ好きなわけじゃないですからね! ただの憧れで、私みたいな庶民出身が相手にされるわけ無いってわかってますから」



「本当に? 好きなんじゃないの?」



「違いますって! ほら、ユリさんも部屋の片付けとなくしものがないか探すの手伝って下さい!」



 そう言いつつも顔は真っ赤になっている。これ以上いじるのはやめておこう。せっかく怖い気持ちが飛んだようだから、このまま部屋の捜索を続けよう。二人で荒らされている部分を片付けていく。棚は引き出しも全てひっくり返され、ベットはシーツや枕が切り裂かれている。この部屋を使うのは怖いだろうから、別の部屋へ移動するために持って行くものと捨てる物に分別していったのだがあっという間に片付いてしまう。彼女の荷物が年齢の割に少ないからだ。

 聖女の衣装らしきものと普段着、家族の姿絵、文房具類と図書館から借りた本でほぼ全てなのだ。



 「荷物はこれで全部? 何かなくしているのはない? お金とかは?」



 そう、彼女の荷物には金銭類もなかったのだ。さすがに聖女である彼女の部屋を金品目的で荒らしたのではないと思うが一応確認する。



 「はい。私田舎から来たのでほとんど荷物ないんですよ。給金も貰ってないので現金もありません」



 「え? お金もらってないの!?」



 「へ? そうですよ? 聖女なので」



 あっけらかんと何とも思ってないような言い方にビックリする。聖女はボランティアか!? ユーリもちょっとばかしのお金を貰って城を出たと言っていたが彼女もそうなのかと聞いてみるが、彼女は国からお金を貰ったこともないらしい。……これはミラー様に後で確認しないといけない。

 とにかく無くなった物はないようで、必要な荷物だけを持って部屋を出てみんなと合流する。



 「ちょっとミラー様! ララさんお給金を貰ってないってどういうことですか」



 みんなと合流するなりミラー様を問い詰める。前世では社畜をしていたのだ。社畜をして唯一の楽しみが給料日であった。労働者に給料を払わないなんてどんなブラック企業だ! 

 私の勢いに少したじろいながらも、そんなことはないとそれを否定するミラー様。

 

 「嘘ですよ! 彼女は現金を一切持ってないんですよ!」



 「おい、それ本当なのかよ。俺はともかく、こいつは神殿で働いてるんだからそれはないだろうよ」



 私の話を聞いてユーリもミラー様を問い詰める。リア様も隣でミラー様のことを訝し気に見ており、そんな視線に耐えられなかったのか、勘弁してくれとミラー様が謝るのをララさんがかばっている。



 「衣食住を与えてもらっているのがお給金の代わりだと言われてそれを信じてた私が悪いんです。ミラー様は悪くないですから責めないで下さい」



 「いや、それに気づけなかったのはこちらの責任だ。ただ君に与えられるはずの国からの給付金を横領していたということだから、これで神官長を罪に問える。魔石を取ったのが神官長だという証拠もまだない、ララ殿からも何も取ってないといううちは指名手配も出来ないから罪状が出来たのは良かった」



 「それにしても本当に何も取られていなかったのですか? あの荒らし様だと何か目的の物があって探してたのは間違いないと思いますが」



 リア様にそう問われて眉間にしわを寄せながら考えるララさん。するとハッとした顔でこちらを見てくるのでドキリとする。



 「もしかしてアレかも知れません! ユリさんに渡した本です!!」



 「あっ」



 「あの古文書のことかい?」



 ミラー様にそう問いかけられて頷き返す。そうだったあれはララさんの名前で借りた本だった。あの古文書が必要だったのか、それとも私たちに見られたくない情報がまだあったのか……。



 「おい、何だよ古文書って」



 「それは……って、今はそんなこと話してる場合じゃなかったんだ! ミラー様! 城の魔石が危ないかも知れません、それと遺跡についても報告したいことがあって」



 そうだった。無効化のスキルを使ったらあの城にある魔石も危ないということを忘れていた! リア様も慌てて無効化のスキルについてミラー様達に説明してくれる。

 遺跡についてはとにかく後で調べることにして、とにかく城の魔石を守るために私とミラー様が一度城へ戻ることにした。リア様とユーリにはララさんを私たちが不在の間に守ってもらうことになっている。



 「じゃあ何かあればすぐに連絡を頂戴ね」



 本当は無効化に対する防御の魔法などを掛けていきたいが、私の魔力調整がまだ未熟である為今回は何も魔法を付与せず別れることになった。その代わり城の魔石を守る魔法を強化するのに全力で魔力を注ぐことになっている。この件が落ち着いたら魔力調整をもっと勉強しなきゃいけない。



 「では城へ転移しよう。城で何が起きるかも分からないからユリ殿も油断しないでおくれ」



 「こっちはちゃんと守ってるからお前もしっかりこいつのこと守れよ」



 「もちろんだとも」



 少し気恥しいやり取りがあったが、居残り組に別れを告げて再び城へと転移した。
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