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運命のつがいと初恋 第5章
⑧
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目線であっちと差した康平につられた陽向は信号の向こうにスーツ姿の東園を見つけた。
「あれ、馨?」
「かおるって東園? わお」
肩を竦めにっと笑った康平は前に向き直ると笑みを消し信号へ顔を向けた。
なんでここにいるんだろう。
東園の勤務先はこのあたりじゃなかったような。
遠目からでも東園のスタイルの良さと端正な美貌が見てとれる。家で見るのとは違い、人波で見ると目立つ。モテるのも仕方ないなと実感してため息を溢す。
信号が変わると東園が駆け出し康平と陽向は顔を見合わせ東園が渡るのを待った。
「会場はあっちなんだよね、行かなくて大丈夫?」
「横断歩道の真ん中で話は出来ないだろ。すごい勢いじゃん」
確かに、と思いながらあっという間に近づいた東園を見る。
「東園、久しぶりだな」
「陽向、今帰り? 俺ももう終わったから一緒に帰ろう」
康平と東園は同時に口を開いた。康平は東園を見ているけど、当の東園は陽向をじっと見下ろしている。
こんな時間に仕事が終わることもあるのか、と思う。やっぱり他に帰る家があるのかもしれない。
「どうしてここにいるの? 馨の職場ってこの辺だっけ?」
「いや、三浦さんに連絡もらったから。ちょうどこの辺に来ていたんだ」
確かに三浦へ、友人と会うと知らせたが、場所まで書いただろうかと首を傾げる。いや書いた覚えはない。
「仕事で? え、じゃあ偶然?」
「んな訳なくない?」
康平が横から茶化すように言うとようやく東園が陽向から康平へ顔を向けた。
「久しぶりだな、佐伯。中学以来だ」
「やっと気づいてくれたか、ほんと久しぶりだな。あの時からいい男だったけど三倍増しだな、陽向」
「ああ、うん」
陽向が頷くと東園は陽向に顔を向け「褒めてくれるのか、ありがとう」と笑みを浮かべ頬を撫でた。え、ここは外なのに、と思うけれど東園の手が温かくて払うのを忘れていた。信号が変わり周囲の人々が移動し始め、陽向は改めて気恥ずかしさに襲われた。陽向が払い退ける前に東園はすっと手を引いた。
「さー、邪魔そうだし俺もう行くわ。じゃ陽向、頑張れよ」
「あ、うん。康平また」
横断歩道を渡り始めた康平に手を挙げると同時に「さあ行こうか」と東園が陽向の肩に手を回して歩くように促す。
「駅はあっちだけど」
「そうだね。今日はタクシーで帰ろう」
東園は手を挙げ通りを流していたタクシーを捕まえ、陽向を押し込みあとに自分も乗り込んだ。自宅を告げ、車が進み始めると東園は陽向の手に触れ指を絡めてきた。
誰かと付き合う経験がないせいか陽向は公共の場でさっきみたいに触られたり手を繋いだりされるとおかしく思われないかつい心配になってしまう。特に、Ωは中性的な見た目だが、陽向は見た目だけだとΩと気付かれにくいと思うから。
ちらっと運転中の運転手を見る。当然だろうが運転に集中していて、前に視線を向けている。陽向はその様子にほっとして、今のうちにとゆっくり指を動かし抜こうとする。しかし東園は絡めていただけの指に力を込めて陽向の手をぎゅっと握った。
タクシーが動き出しても東園は口を開く事なく、手を離して欲しいと頼みたくて陽向が隣を見ると前を睨むようにじっと見ていて、話し掛けられなかった。
仕事で何かあったのかな、と思いつつ陽向は車窓へ目を向けた。
今日話し合うべきだろうか。
今まであまり見たことがなかったが、今日の東園は虫の居所が悪そうだから明日がいいか。
これからどうしたいか、よく考えてみる。
陽向は東園が好きだから一緒にいたいし、一緒に子供を育てたい。
でも東園がたくさんのΩと関係を持ち続けるなら、東園と共にいるのは無理かなと思う。
そうなら実家に戻り、親の手を借りながら仕事と子育てを頑張る。手が借りられなかったら、一人でもやる、やるしかない。
そうだ、自分次第なんだなと強く思う。堕胎はしない。絶対しない。
そう決めたらなんだか、もやもやしていた気持ちが晴れていく。
膝に置いたバックのなかでスマホが通知を知らせるため震えている。
バックを探ろうと手を離そうとするけれど動かせば動かすほど東園の力は強くなり、「あの、」と話しかけても無視された。
もういいやと片手で取り出し見ると康平からで、変な動きをするくまのスタンプがガンバ!と笑っていた。
こうなったら頑張るしかない。
迷いがなくなりスッキリした気分だ。しかも画面のくまは見れば見るほど面白い顔をしていて、陽向は笑みを浮かべる。
スタンプを返そうとしたところで、腕を強く引かれ身体がぐらりと揺れる。
「え」
東園にもたれ掛かった陽向が慌てて身体を起こそうとすると、東園は更に陽向の腕を自分側へ引き寄せ陽向をシートへ押しつけた。そして陽向の顎を押さえ唇を合わせた。舌をねじ込み乱暴になかをかき回される。
「ん……ぅ、っん」
こんなところで。
陽向は東園の胸を押そうとするが、近くで感じる東園の匂いに頭がくらくらして上手く力が入らない。
「あれ、馨?」
「かおるって東園? わお」
肩を竦めにっと笑った康平は前に向き直ると笑みを消し信号へ顔を向けた。
なんでここにいるんだろう。
東園の勤務先はこのあたりじゃなかったような。
遠目からでも東園のスタイルの良さと端正な美貌が見てとれる。家で見るのとは違い、人波で見ると目立つ。モテるのも仕方ないなと実感してため息を溢す。
信号が変わると東園が駆け出し康平と陽向は顔を見合わせ東園が渡るのを待った。
「会場はあっちなんだよね、行かなくて大丈夫?」
「横断歩道の真ん中で話は出来ないだろ。すごい勢いじゃん」
確かに、と思いながらあっという間に近づいた東園を見る。
「東園、久しぶりだな」
「陽向、今帰り? 俺ももう終わったから一緒に帰ろう」
康平と東園は同時に口を開いた。康平は東園を見ているけど、当の東園は陽向をじっと見下ろしている。
こんな時間に仕事が終わることもあるのか、と思う。やっぱり他に帰る家があるのかもしれない。
「どうしてここにいるの? 馨の職場ってこの辺だっけ?」
「いや、三浦さんに連絡もらったから。ちょうどこの辺に来ていたんだ」
確かに三浦へ、友人と会うと知らせたが、場所まで書いただろうかと首を傾げる。いや書いた覚えはない。
「仕事で? え、じゃあ偶然?」
「んな訳なくない?」
康平が横から茶化すように言うとようやく東園が陽向から康平へ顔を向けた。
「久しぶりだな、佐伯。中学以来だ」
「やっと気づいてくれたか、ほんと久しぶりだな。あの時からいい男だったけど三倍増しだな、陽向」
「ああ、うん」
陽向が頷くと東園は陽向に顔を向け「褒めてくれるのか、ありがとう」と笑みを浮かべ頬を撫でた。え、ここは外なのに、と思うけれど東園の手が温かくて払うのを忘れていた。信号が変わり周囲の人々が移動し始め、陽向は改めて気恥ずかしさに襲われた。陽向が払い退ける前に東園はすっと手を引いた。
「さー、邪魔そうだし俺もう行くわ。じゃ陽向、頑張れよ」
「あ、うん。康平また」
横断歩道を渡り始めた康平に手を挙げると同時に「さあ行こうか」と東園が陽向の肩に手を回して歩くように促す。
「駅はあっちだけど」
「そうだね。今日はタクシーで帰ろう」
東園は手を挙げ通りを流していたタクシーを捕まえ、陽向を押し込みあとに自分も乗り込んだ。自宅を告げ、車が進み始めると東園は陽向の手に触れ指を絡めてきた。
誰かと付き合う経験がないせいか陽向は公共の場でさっきみたいに触られたり手を繋いだりされるとおかしく思われないかつい心配になってしまう。特に、Ωは中性的な見た目だが、陽向は見た目だけだとΩと気付かれにくいと思うから。
ちらっと運転中の運転手を見る。当然だろうが運転に集中していて、前に視線を向けている。陽向はその様子にほっとして、今のうちにとゆっくり指を動かし抜こうとする。しかし東園は絡めていただけの指に力を込めて陽向の手をぎゅっと握った。
タクシーが動き出しても東園は口を開く事なく、手を離して欲しいと頼みたくて陽向が隣を見ると前を睨むようにじっと見ていて、話し掛けられなかった。
仕事で何かあったのかな、と思いつつ陽向は車窓へ目を向けた。
今日話し合うべきだろうか。
今まであまり見たことがなかったが、今日の東園は虫の居所が悪そうだから明日がいいか。
これからどうしたいか、よく考えてみる。
陽向は東園が好きだから一緒にいたいし、一緒に子供を育てたい。
でも東園がたくさんのΩと関係を持ち続けるなら、東園と共にいるのは無理かなと思う。
そうなら実家に戻り、親の手を借りながら仕事と子育てを頑張る。手が借りられなかったら、一人でもやる、やるしかない。
そうだ、自分次第なんだなと強く思う。堕胎はしない。絶対しない。
そう決めたらなんだか、もやもやしていた気持ちが晴れていく。
膝に置いたバックのなかでスマホが通知を知らせるため震えている。
バックを探ろうと手を離そうとするけれど動かせば動かすほど東園の力は強くなり、「あの、」と話しかけても無視された。
もういいやと片手で取り出し見ると康平からで、変な動きをするくまのスタンプがガンバ!と笑っていた。
こうなったら頑張るしかない。
迷いがなくなりスッキリした気分だ。しかも画面のくまは見れば見るほど面白い顔をしていて、陽向は笑みを浮かべる。
スタンプを返そうとしたところで、腕を強く引かれ身体がぐらりと揺れる。
「え」
東園にもたれ掛かった陽向が慌てて身体を起こそうとすると、東園は更に陽向の腕を自分側へ引き寄せ陽向をシートへ押しつけた。そして陽向の顎を押さえ唇を合わせた。舌をねじ込み乱暴になかをかき回される。
「ん……ぅ、っん」
こんなところで。
陽向は東園の胸を押そうとするが、近くで感じる東園の匂いに頭がくらくらして上手く力が入らない。
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