巡る日常と殺人

すずもと

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2歳の子供が殺したのは

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私は30代のワーママだ。

昨晩から2歳の子供が熱を出した。
会議があるのに・・・

翌朝になっても子供の熱は下がらなかった。
私は朝から子供の熱の対応に、小児科の予約、会社への連絡に追われていた。

一応、昨晩中に上司へは子供が熱を出し休むかもしれない旨を伝えていたので、なんとかなった。
小児科は、最近例年より早くインフルエンザが流行っているらしく、予約も争奪戦だ。
朝の6時に起きてスマホでピピピピ!と高速で予約画面に進み、なんとか20番目の予約をもぎ取った。
11時くらいに診てもらえそうだ。

旦那?旦那なんて何の役に立つの?
今日は大事な商談があるからと言って、慌ただしくしている私と真っ赤な顔でうなされている子供を置いて出社して行ってしまった。

離婚をよぎるが、それよりも今は熱がある子供をなだめないといけない。
会社からのチャットを返しながら子供をあやす。

熱を測ると、39.0まで上がっていた。

不安な気持ちをやり込め朝を過ごした。

そうしてようやく11時近く。
病院に出発だ。ベビーカーに暖かい毛布をひき、子供の好きなおもちゃを取り付ける。チョコパンマンのぬいぐるみで押すと喋るのだ。これがあれば、熱で機嫌が悪い子供も多少遊んでてくれるのだ。
子供に暖かいコートを着せ、ベビーカーに乗せる。最後にさらに子供のお気に入りの赤い毛布で包んであげて、出発だ。
途中のコンビニでポカリを買う。飲むかと聞いたが、首をふるだけ。チョコパンマンのぬいぐるみをかじって遊んでいた。「喉乾いたら飲んでね」と言いベビーカーのサイドバッグに入れておく。

あと少しで病院。だけど病院の前に坂道がある。まあまあの傾斜でけっこう長い。これが辛いのだ。
私は両手で踏ん張って坂を上がっていた。
その時
「うー!あー!やー!」
子供が叫び始めた。
「何?」
子供を見ると持っていたはずのチョコパンマンのぬいぐるみが無い。
縛っていたはずの紐が切れている。
慌てて周りを見渡すが、無い。
血の気が引いた。子供はあのぬいぐるみが無いと暴れるのだ。こんな坂道でベビーカーで暴れられたら、とてもじゃないが病院に辿り着けない。

必死に宥めるもギャーギャー言い始め途方に暮れていると、後ろから声がした。
「おーい!落としてますよ!」と。
赤いマフラーが印象的な見知らぬおじいさんだった。
手にはチョコパンマン!

子供が「あ!僕の!」と言って前のめりになり、ベビーカーから落ちそうになった。
「危ない!」
おじいさんが手を出し支えてくれ、ことなきを得た。

子供は無事チョコパンマンが帰ってきて落ち着いた。
私は何度もありがとうございます、ありがとうございます、と頭を下げた。
おじいさんはにこっとして目尻にシワを作って言った。
「良かったね。僕チョコパンマンが好きなんだね。大事なものはしっかりギュッとしておくんだぞ」

それから、なんとか病院に着き診察を受けた。
結果はインフルエンザだった。
一週間仕事を休んで看病をした。そして、旦那は何も助けてくれなかった。私も離婚の決心が着き、両家巻き込んでの話し合いの末、夫は反省し改心して、良い家族になった。

あの時チョコパンマンを拾ってくれたおじいさんは私にとって恩人だ。
その後どうしているのか…あの時あそこの道にいたということはきっと近くに住んでいるはず。
会ったらお礼を言おうと思っていたが、その後、あのおじいさんに会うことは2度となかった。
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