巡る日常と殺人

すずもと

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お兄さんと男の子の巡る殺人

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その日、彼女に「別れたい」と言われてしまった。

俺は、車で物思いにふけっていた。
彼女と初めて会った時のこと、大学のゼミで一緒になって話すようになった。
話していると楽しくて、しばらくした頃俺から告白したんだっけ。

ドキドキした初デート、誕生日に一緒に見た夜景、初めての旅行…
どれも楽しかった。

いつからだろう。大学を卒業して、社会に出てから、少しずつ噛み合わなくなっていったんだ。

車から降り三日月をぼんやり眺めて物思いにふけっていると、誰かの声が聞こえた。

男の子だった。こんな夜更けに?
俺はびっくりしながらも、話を聞いた。
クラスのガキ大将に神社に大事な物を隠され、探しに行く途中に山で迷子になったそうだ。

「大変だったね、俺で良ければ一緒に行こうか?」
そう提案をした。
どうせ、気持ちの整理もつかないし、こんな俺で良ければ。

そして階段を一緒に登りながら男の子の話を聞いた。
他愛ない小学生の日常だ。
俺にもこんな頃があった。

話していると、
「そういえばお兄さんはどうしてあんなところにいたんですか?」
純粋そうな瞳でそんなことを聞かれてしまった。

俺は思わず言葉に詰まる。しばらく間が開いてポツリと呟いた。
「彼女に別れたいって言われてしまってね…」

そしたら、男の子が、
「大丈夫ですよ!お兄さんすごい良い人だから、新しい彼女なんてすぐできます!」
と力説してきた。
「見ず知らずの僕に優しくしてくれて、話も聞いてくれて、僕、お兄さんに会えて本当に良かったです」
それは本心からの笑顔だった。

俺は、ぽかんとしてしまい、そして
「ありがとう」
と微笑んだ。

神社まで登って、大事な物を見つけ、下まで送ることにした。
大事なものは、神社の賽銭箱の上に置いてあり、すぐに分かった。

階段を降り、麓まで着くと、男の子を呼ぶ声が聞こえた。
きっとこの子のことだ。探していたのだろう。
俺は
「もう大丈夫だね、じゃあ俺はもう行くよ。車も停めっぱなしだし。」
と手を振って別れた。


そして、車に戻った。
トランクを開ける。そこには、彼女の死体が入っていた。
「あの男の子、きっと俺が自殺しに来たと思ったんだろうなあ」
そう言って、彼女の冷たい頬をなでる。
「別れたいなんて言わなければ、こんなことにはならなかったのにね」

そう、本当は、別れ話をされて、激昂し、彼女を殺してしまったのだ。
彼女を山に埋めるか、自首するべきか、車で悩んでいた時だった。男の子に助けを求められたのは。

でも、新しい彼女なんてすぐできます!と男の子は言ってくれた。
山に埋めて、無かったことにしよう、そう思いエンジンを掛けた。

今夜は見られてしまったことだし、別の山にでも埋めに行くことにしよう。



男の子は、殺人の手助けをしてしまったことは知らない。
だってあの時、車のトランクに死体が入っているなんて知らなかったのだから。

あのお兄さん元気にしているかな?と思い出しながら、男の子の日常は続く。
皆、普通の日常を送りながら、殺人に加担している、なんてこともあるのかもしれない。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

りの
2023.12.30 りの

途中までは凄く描写が細かくてで子育てとか家族ってこんな感じなのかなと思っていましたが、最後で凄くゾクッとしました💦

2024.01.02 すずもと

感想ありがとうございます。
すごく嬉しいです。
自分では日常を送っているだけなんだけど、もしかしたら…とふと思い書かせて頂きました。
まだ繋がっていくお話しがあるので、時間がある時にちまちま書いていく予定です〜。

解除

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