どうぶつ歓迎。駅徒歩15分。

内見

そして、その物件に出会ったのだ。

「どうぶつ歓迎。徒歩15分」の物件。

外観は少し古さはあるけど、普通のアパートだった。
不動産屋さんに案内してもらい、アパートに着くと、三毛猫がアパートの前の塀の上でゴロゴロしていた。
「可愛いー」と思わず顔が綻ぶと「にゃーう」と挨拶してくれた。

やばい…可愛い…

そのまま三毛猫と遊びたい気持ちをグッと堪え、アパートの部屋に入った。
今は内見中、今は内見中…と心の中で唱えて平静を保つ。
子供の頃のように「猫ちゃん可愛い」と言って撫でくり回して、猫に嫌われるのは避けたい。

部屋の中は思ったより良かった。
間取りは1DKで、全体的に白でまとめられている。
ダイニングは6畳で、一人暮らし用のキッチンが置いてあった。自分でコンロを買って設置するタイプで、扉は木目調で、なんだかホッとする雰囲気だった。
部屋は6畳で一人暮らしには一般的な広さ。
お風呂とトイレは別々になっているのもポイントが高い。
ベランダからポカポカした陽の光が差し込んで、この部屋で動物と一緒にゴロゴロしたら最高だろうな～なんて妄想が頭の中を駆け巡り、思わず鼻血が出そうになった。
耐えたけど。

不動産屋さんの人が
「ここの入居者はみんな動物を飼ってるんですよ～」
と言うので、皆このポカポカの部屋で猫や犬やウサギと一緒にゴロゴロしてるのか…と更に妄想が駆け巡って抑えるのが大変だった。
私はなんとか平静を装い
「ちなみに飼うのがダメな動物の種類とかはありますか？」
「いえ、このアパートは特にないんですよ。大家さんがすごく動物好きで。」

なんて良いアパートだろう！

私はこうして、「動物歓迎。徒歩15分」のアパートを決めたのだった。


内見を終えて部屋から出ると、ちょうど隣の人が出てくるところだった。
黒くてシュッとした犬を連れている。
「ドーベルマンだ！カッコいい！」
私は思わず声をあげた。
住人は若い男の人で、ドーベルマンを連れていた。
男性は苦笑いして
「こんにちは」
と返してくれた。
「…カッコ良かったもので、突然すいません」
恥ずかしい。子供の頃も、誰かれ構わず動物を見れば、可愛い！かっこいいとつい声を上げて追いかけ回して、何度黒歴史のページを更新したことか…

気まずくて思わず目線を逸らすとドーベルマンは、私の手に鼻先をツンツンして、私を見上げてきた。
その表情は、しょうがないなーとでも良いたげな顔だった。

私の心が射抜かれた音がした。
このドーベルマン、イケメン過ぎる…


こうして私はとても良い部屋を決めることができた。