どうぶつ歓迎。駅徒歩15分。

新しい部屋で

そうして、私はどうぶつ歓迎駅徒歩15分の物件へ引越した。

当日は親にも手伝ってもらい引越しをした。
私が「動物歓迎なのよ！」と鼻息荒く力説したら、両親からは、生暖かい目で見送られた。
「まあ、何かあったらいつでも帰って来なさい」
そうして、親は帰って行った。

部屋に1人になると、途端に静かになって、少しだけ寂しい気持ちになった。

ずっと実家暮らしだったからなー。

私は窓の景色をぼんやり眺め、アパートの塀の上をお散歩しているサビ色の猫を見つけて目を細めた。

口元がニヤける。
これからは、私も動物と暮らせるのだ。

仕事も、そのため在宅勤務OKの仕事を勝ち取った。
ペット用品を扱う会社のwebデザイナーだ。

本当は、高校卒業の際に、動物に関わる仕事に就ける学校に進学するか、ペットと一日中一緒にいられる在宅で出来る仕事に就ける学校に進学するか、ものすごく迷った。

最初は、動物に関わる仕事がしたい！と息巻いていた。
そこで、高校生の頃、動物の大学や専門学校のオープンキャンパスに行って、話を聞き、結果断念することになったのだ。

まず、動物の医療系。
獣医は私の頭では無理だったし、動物看護師なども血を見るのが無理な私には難しいものだった。

次に動物園などの飼育員。これは相当狭き門だった。大学院など進んで色々な論文など書き評価されるようなほんの一握りしかなれない、と言われ断念。

トリマー。これは給料が低く、ゆくゆくは自分でお店を持たないと食べていけない、と言われ、ペットを飼い養っていきたかった私は、泣く泣く断念。

最後に訓練士。警察犬などの訓練を行う仕事だが、月2日ほどしか休みがなく泊まりもあるような過酷な仕事だった。
ペット飼えないじゃん…とこちらも断念。

そして、悩みに悩んだ末に、在宅勤務でペットと一緒にいられる仕事につける学校に進学し、この春からめでたく、ペット用品のwebデザイナーに就職したのだ。

研修期間の3ヶ月は毎日出社だが、その後は週3在宅勤務が可能らしい。
更に研修期間が終わってからは会社にペットを連れて来て良い、と聞き、自分の持てる全ての力を使い、内定を勝ち取った。

本当は、せっかく動物歓迎のアパートも決まったことだし、すぐにでも動物を迎えいれたい。
だが、可愛い可愛いペットちゃんに1人で留守番なんてさせられない。

だから、研修が終わった3ヶ月後に動物を迎え入れる予定なのだ。

ああ、犬にしようかな、猫にしようか、うさぎ、モルモット、フェレット…誰と暮らすか、しばらく妄想と我慢の日々になるだろう。