17 / 21
第17話:フェルセス家、そして未来へ
しおりを挟む
春の風が吹く中庭に、白いスノーフラワーが咲いていた。
セイルは、その前にしゃがみ込み、自分の腹をそっと撫でる。
ふくらみは日に日に大きくなっていた。
生命が、確かにこの中にあるという実感。
昔の自分では想像もできなかった“未来”が、今はここにあった。
「この花、まだ枯れてなかったんだな」
後ろからリオンが現れる。
あの日、二人で植えたスノーフラワー。かつては“過去の象徴”だったものが、今は“希望”に見えた。
「……君と、こうして未来の話をできる日が来るなんて思わなかった」
「俺もだ。だが、君がいてくれたから、ここまで来られた」
リオンがセイルの手を取る。
そのぬくもりが、迷いをすべて溶かしていく。
──しかし、穏やかな時間は長く続かなかった。
屋敷に一本の文が届く。
「王家より最終通告。
“フェルセス家とその番は、王政に従属するか、王都を離れ地方に退くかを選べ”──だと」
リオンの声に、空気が重くなる。
「これは……遠回しな“追放宣告”だよね」
「ああ。名門であるフェルセス家が王政に背いた前例を残したくない。
だが、公開処罰もできない。だから、こうして“圧力”をかけてくる」
静かな戦争。
それでも、命ある者たちには、決断が求められる。
「リオン……私たち、どうする?」
「君と、この子が安全でいられるなら──どこででも生きていける。
フェルセスの名に縛られなくても、君がいてくれれば、俺は何も失わない」
そう言って微笑むリオンに、セイルは小さく頷いた。
「だったら──行こう。
この子と一緒に、“家族”として新しい場所で、生きよう」
セイルは、その前にしゃがみ込み、自分の腹をそっと撫でる。
ふくらみは日に日に大きくなっていた。
生命が、確かにこの中にあるという実感。
昔の自分では想像もできなかった“未来”が、今はここにあった。
「この花、まだ枯れてなかったんだな」
後ろからリオンが現れる。
あの日、二人で植えたスノーフラワー。かつては“過去の象徴”だったものが、今は“希望”に見えた。
「……君と、こうして未来の話をできる日が来るなんて思わなかった」
「俺もだ。だが、君がいてくれたから、ここまで来られた」
リオンがセイルの手を取る。
そのぬくもりが、迷いをすべて溶かしていく。
──しかし、穏やかな時間は長く続かなかった。
屋敷に一本の文が届く。
「王家より最終通告。
“フェルセス家とその番は、王政に従属するか、王都を離れ地方に退くかを選べ”──だと」
リオンの声に、空気が重くなる。
「これは……遠回しな“追放宣告”だよね」
「ああ。名門であるフェルセス家が王政に背いた前例を残したくない。
だが、公開処罰もできない。だから、こうして“圧力”をかけてくる」
静かな戦争。
それでも、命ある者たちには、決断が求められる。
「リオン……私たち、どうする?」
「君と、この子が安全でいられるなら──どこででも生きていける。
フェルセスの名に縛られなくても、君がいてくれれば、俺は何も失わない」
そう言って微笑むリオンに、セイルは小さく頷いた。
「だったら──行こう。
この子と一緒に、“家族”として新しい場所で、生きよう」
27
あなたにおすすめの小説
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。
水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。
国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。
彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。
世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。
しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。
孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。
これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。
帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。
偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる