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第三部「継ぐ者の光、試される未来」
第20話:遠くの空に、詩が届いた
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「……リュミエール領でも、詩集が読まれ始めたって」
詩学局の通信士がそう報告したのは、ある秋の夕暮れだった。
リュミエール領――王都から見て最も遠く、古い風習が根強く残る北方の地。
そこでも『こえのまえ、こえのあと』の小冊子が若者たちの手に届き、
読み手の一部が**“返詩”**を送り始めているという。
エリアは報告を聞きながら、胸の奥が温かくなるのを感じた。
(遠くの誰かが、わたしたちの言葉に返事をくれてる……)
それはまさしく、**“詩による対話”**の広がりだった。
* * *
その頃、王宮ではリーネの提出した詩が議場の前に置かれ、
正式に「次代育成委員会」宛として取り扱われることが決まっていた。
委員会の場で、その詩が朗読されたのは午後の終わり。
> 「だから ききたい
> “今 こたえて”って言ってもいいですか?」
その一行が読み上げられた瞬間――
場にいた誰もが一瞬、息を呑んだ。
それは演説ではなかった。
主張でもなかった。
ただの、問いだった。
だからこそ、重かった。
議場の一角でその声を聞いていた王妃は、隣のレイナに小さく囁いた。
「……詩が、議論ではなく“静かな沈黙”を生むこともあるのね」
レイナはゆっくりと頷いた。
「そして、それが“考える時間”になるのなら……それは最良の政治です」
* * *
その夜。
王都の屋敷で、エリアはひとり書斎に座っていた。
ミルから届いた手紙の中に、リュミエール領の少女が書いた返詩の写しが同封されていたのだ。
> 『しらないこえ』/リュミエール領・匿名
>
> ふゆのまちに しらないこえがとどいた
> それは わたしのこえとはちがった
>
> でも なぜだろう
> それをきいて さみしくなくなった
>
> こたえはまだないけど
> いま わたしも なにか かきたくなった
それを読み終えたエリアは、静かに目を閉じた。
もう、詩は自分ひとりのものではない。
ミルのものでもない。
名も知らぬ誰かが、名前よりも先に“声”で結ばれていく。
それが、詩というものなのだと――初めて、確信した。
* * *
一方その夜、レイナはひとり王宮の東塔にいた。
そこには、かつて彼女が政治の第一線にいた頃の記録が、静かに保管されている。
手にしたのは、かつて自分が記した初演説原稿。
『命とは、記録されることで未来へと繋がる――』
レイナはそれを読み返し、そっと閉じる。
「娘たちはもう、“記録される言葉”を自分で書き始めてる」
そして、こう続けた。
「私の声ではなく、“彼女たちの声”でこの国が動き始めるなら――
それこそが、私が夢見た政のかたち」
* * *
その翌朝。
詩学局には、王政通信庁から一通の公文書が届いた。
> 『王政広報部は、“詩による意見提出制度”を試験導入することを決定』
> 『今後、十四歳以下の若年者による文芸形式での意見提出も、正規資料として受理する』
この一文は、詩学局の掲示板に貼られ、瞬く間に王都の文官・教育者の間で話題となった。
ミルがそれを読んで、エリアの袖を引く。
「……ねえ、わたしたち、世界の形をほんの少し変えたんじゃないかな」
エリアは笑った。
「ううん。“こえのまえ”だった子たちが、“あと”に歩き出せたから――
“未来の形”が動き始めたんだと思う」
詩学局の通信士がそう報告したのは、ある秋の夕暮れだった。
リュミエール領――王都から見て最も遠く、古い風習が根強く残る北方の地。
そこでも『こえのまえ、こえのあと』の小冊子が若者たちの手に届き、
読み手の一部が**“返詩”**を送り始めているという。
エリアは報告を聞きながら、胸の奥が温かくなるのを感じた。
(遠くの誰かが、わたしたちの言葉に返事をくれてる……)
それはまさしく、**“詩による対話”**の広がりだった。
* * *
その頃、王宮ではリーネの提出した詩が議場の前に置かれ、
正式に「次代育成委員会」宛として取り扱われることが決まっていた。
委員会の場で、その詩が朗読されたのは午後の終わり。
> 「だから ききたい
> “今 こたえて”って言ってもいいですか?」
その一行が読み上げられた瞬間――
場にいた誰もが一瞬、息を呑んだ。
それは演説ではなかった。
主張でもなかった。
ただの、問いだった。
だからこそ、重かった。
議場の一角でその声を聞いていた王妃は、隣のレイナに小さく囁いた。
「……詩が、議論ではなく“静かな沈黙”を生むこともあるのね」
レイナはゆっくりと頷いた。
「そして、それが“考える時間”になるのなら……それは最良の政治です」
* * *
その夜。
王都の屋敷で、エリアはひとり書斎に座っていた。
ミルから届いた手紙の中に、リュミエール領の少女が書いた返詩の写しが同封されていたのだ。
> 『しらないこえ』/リュミエール領・匿名
>
> ふゆのまちに しらないこえがとどいた
> それは わたしのこえとはちがった
>
> でも なぜだろう
> それをきいて さみしくなくなった
>
> こたえはまだないけど
> いま わたしも なにか かきたくなった
それを読み終えたエリアは、静かに目を閉じた。
もう、詩は自分ひとりのものではない。
ミルのものでもない。
名も知らぬ誰かが、名前よりも先に“声”で結ばれていく。
それが、詩というものなのだと――初めて、確信した。
* * *
一方その夜、レイナはひとり王宮の東塔にいた。
そこには、かつて彼女が政治の第一線にいた頃の記録が、静かに保管されている。
手にしたのは、かつて自分が記した初演説原稿。
『命とは、記録されることで未来へと繋がる――』
レイナはそれを読み返し、そっと閉じる。
「娘たちはもう、“記録される言葉”を自分で書き始めてる」
そして、こう続けた。
「私の声ではなく、“彼女たちの声”でこの国が動き始めるなら――
それこそが、私が夢見た政のかたち」
* * *
その翌朝。
詩学局には、王政通信庁から一通の公文書が届いた。
> 『王政広報部は、“詩による意見提出制度”を試験導入することを決定』
> 『今後、十四歳以下の若年者による文芸形式での意見提出も、正規資料として受理する』
この一文は、詩学局の掲示板に貼られ、瞬く間に王都の文官・教育者の間で話題となった。
ミルがそれを読んで、エリアの袖を引く。
「……ねえ、わたしたち、世界の形をほんの少し変えたんじゃないかな」
エリアは笑った。
「ううん。“こえのまえ”だった子たちが、“あと”に歩き出せたから――
“未来の形”が動き始めたんだと思う」
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