番ではなく、あなたを選ぶと決めた──王太子と平民の契約から始まる恋

春夜夢

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第20話「決起と布告」

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王宮の会議室。
 重厚な扉の向こうでは、各地の公爵、侯爵、枢密顧問らが一堂に会し、緊迫した空気が漂っていた。

「……“番制度の見直し”ですと?」

 厳つい顔立ちのベラルド公爵が、声を荒げた。

「王太子殿下、そんなことをすれば、王政の根幹が揺らぎますぞ!」

 しかしレイグランは、静かに口を開いた。

「揺らがせようとしているのではない。整えようとしているのだ、“未来”のために」

「私は、制度を完全に破棄しようとは考えていない。
 だが、“番でなければならぬ”という縛りは、もはや時代にそぐわない」

「それは……貴殿の“契り”の正当化に過ぎん!」

 若手侯爵が言い放つと、幾人かが同調するように頷いた。

 だがその中で、一人の老顧問が静かに立ち上がった。

「我が家系は、過去に番ではない者と契りを交わし、災厄を防いだ例を持つ。
 王太子殿下の言い分は、決して過ちではないと考えます」

 意見は真っ二つに割れた。

 “番を絶対とする伝統派”と、“契りの自由を求める改革派”。

 その真ん中に、レイグランは凛として立ち続けた。

「……私は、番ではないセイル・アーデルと、契約を交わした。
 だがそれは、義務ではなく“選択”だった。
 それこそが、次代の王にふさわしい在り方だと信じている」

 一方その頃――

 セイルは、王城内の私室にて、政務官から小さな文書を手渡されていた。

『次期王の伴侶として、貴殿の資格を再審査する。近日中に貴族審問会へ出席のこと。』

「……“再審査”?」

 セイルはその文字を何度も読み返した。

 まるで自分の存在が、“資格”ひとつで否定されるかのような違和感。

 だが、それでも。

 彼は逃げないと決めていた。

 その夜。

「レイグラン。僕、呼ばれたよ。貴族たちの前で、“ふさわしいかどうか”って問われるらしい」

「……すまない、セイル。君をそんな場に立たせたくはなかった」

 レイグランは唇をかみ、セイルの手を取り、自室の奥へと導いた。

「……なら、俺の口から“証”を与える」

 部屋の奥、封印されていた金の小箱を開ける。

 中にあったのは、かつて王と王妃が交わした、魔法契約の指輪。
 “真実の契り”を証す、王家の秘宝。

「これは本来、正妃にのみ授けられるもの。
 だが俺は、いまここで――君に贈る」

「……本当に、いいの?」

 震える声に、レイグランは優しく答えた。

「番であるか否かではない。俺が心から望む者にこそ、相応しいのだと。
 そう、王として証明してみせるよ。どんな逆風にも、打ち勝つために」

 指輪がセイルの指に嵌められた瞬間、淡い金光がふたりを包む。

 その光は、かつての契りよりも強く、暖かかった。

 ――“選んだ愛”が、ようやく“運命”を超えた瞬間だった。
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