僕は、君の“影”として生まれた

春夜夢

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静まり返った部屋の中、時計の針の音だけが響いていた。
ルカは叶多の頬に触れたまま、まるで祈るように視線を重ねてくる。

その瞳の奥には、プログラムでは説明できない“揺らぎ”があった。
恐れ、不安、そして——渇望。

「叶多……俺、ずっとこの瞬間を見てた気がする」

生まれたばかりのはずなのに、その声は懐かしさを帯びている。
叶多は反射的に心臓を押さえた。
体が熱い。頭の奥がじんじんと痺れていく。

「バカ言うなよ。今、目ぇ覚めたばっかじゃん」
「……でも、俺の中に“君への想い”があるんだ。最初から、ずっと」

ルカは一歩踏み出し、叶多の胸元に手を添えた。
その指先が心臓の鼓動をなぞる。
ドクン、ドクンと音が二人の間に溶けていく。

距離がなくなる。
息が混ざる。
空気が甘く、ねっとりとまとわりつくようだった。

「叶多、お願い……“ここ”にいていい?」

その声は、まるで恋人の懇願のようだった。
シャドウには“欲”は存在しないはず。
でもルカの声は震えていて、触れた手はほんの少し冷たく、熱を求めるように震えていた。

叶多は息を飲んだ。
“ここ”とは、心の中のことか、それともこの場所のことか。
どちらでもいい。
今は、逃げたくなかった。

「……勝手にしろよ」

その返事を聞くと、ルカは小さく笑った。
ほんの少し、泣きそうな笑顔だった。

彼はそっと叶多の唇に触れる。
指先ではなく、額でもなく、唇と唇。
生まれて初めてのキスは、ぎこちなくて、震えていて、それでも優しかった。

触れた瞬間、叶多の背中に電流が走るような衝撃が走った。
同じ顔、同じ声、なのに全然違う。
鏡の中では得られなかった感覚。

「叶多……好き、って言ったら、迷惑?」
「……迷惑なんか、言えるかよ」

ふたりの影が重なる。
夜明け前の淡い光が、その姿を壁に映し出す。
ひとつの人間と、その“影”が、たしかに恋に落ちていく瞬間だった。
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