僕は、君の“影”として生まれた

春夜夢

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地下鉄跡のトンネルは、すでに半分崩れ落ちたような廃墟だった。
錆びた線路の上を二人の靴音が鳴り響く。
息は荒く、肺が焼けるように熱い。
それでも止まれない。止まれば、終わる。

「——来てる」
ルカの瞳が一瞬だけ光を反射した。
音のない影が、トンネルの奥から滑るように現れる。
黒い防弾スーツに身を包んだシーカーズ。
無機質な電子音とともに、サーチライトが二人を照らした。

「ターゲット確認。拘束モード、起動」

一斉にネット弾が撃ち込まれる。
反射的に叶多は身をかがめ、ルカが前に飛び出す。
弾丸のように伸びるネットを、ルカの腕が叩き落とした瞬間、衝撃で金属音がトンネルに響いた。

「くそっ、こいつら本気だ……!」
「俺に任せて!」

ルカの身体が淡い光を帯びる。
影として造られた彼の反応速度は、人間をはるかに超えていた。
壁を蹴り、滑るように兵士の背後を取ると、その腕を絡め取って倒し込む。
まるで水のような無駄のない動きだった。

だが、その隙に——
「叶多っ!」

背後から伸びたアームが叶多の胴を絡め取る。
電磁拘束具が瞬時に締まり、身体がきしんだ。
ルカが振り向いた瞬間、強烈な閃光弾がトンネルを白く染める。

視界が奪われる。
兵士の影が揺れる。
叶多の背中が、冷たい壁に押しつけられた。

「動くな。オリジナルNo.441、確保」

無機質な声。
金属の感触。
呼吸が乱れ、心臓が嫌なほど大きな音を立てる。

「やめろ……ルカに、触るなっ!!!」

叫びが響いた瞬間、トンネルの奥で空気が震えた。
ルカの体から光があふれ、まるで何かが“覚醒”するように音が走る。

「俺は——君を守るために生まれたんだ」

その声は、機械の声ではなかった。
強く、切実で、愛に似たものが混ざっていた。

次の瞬間、彼は兵士の群れに飛び込み、
鋼の腕と閃光の中を切り裂くように走る。
拘束具が砕け、叶多の身体が解放された。

「ルカっ!!!」
「大丈夫、俺は君を——絶対に離さない!」

二人は再び走り出す。
背後で兵士たちが無機質な声をあげ、再追撃の準備を始める。
戦いはまだ終わっていない。

でも、その手は離れなかった。
ふたりの間には、もはや「創造物」と「人間」の境界なんて存在しなかった。
ただ、生き延びたい――一緒に、生きたい。
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