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視界が歪んでいる。
耳鳴りの向こうで、冷たい声が響いた。
「オリジナルNo.441、拘束完了」
「シャドウ個体、行動制御プログラムを強制上書き」
叶多の両腕は、背中に回された拘束具で固く縛られていた。
冷たい金属が肌に食い込み、逃げる余地はない。
目を開けると、白い無機質な施設の天井。
周囲には数人のシーカーズ。
そして——ガラスの向こうには、ルカがいた。
「ルカ……っ!」
叫んでも届かない。
厚い防弾ガラスが、音をすべて遮断している。
ルカの両腕も拘束され、首元には制御装置がはめられていた。
顔は静かで、けれどその目は、激しく燃えていた。
「……叶多。見える?」
声は届かないのに、目だけで伝わってくる。
“君を見失わない”という意思が、痛いほどまっすぐだった。
「分離実験、開始準備」
白衣の研究者が端末を操作する。
「オリジナルとシャドウのリンクが強すぎる。切り離しには強制プログラムを使用しろ」
「拒否反応のリスクは?」
「知るか。個体差だ」
無機質な会話。
まるで人間じゃないモノを扱うみたいに。
叶多は歯を食いしばった。
ルカを見捨てるなんてできない。
この世界の“正しさ”が間違っていると、ようやく心の奥から叫びがこみ上げる。
「ルカを……離せ!!!」
体を起こそうとした瞬間、電流が走った。
拘束具から流れ込む電撃が神経を焼き、息が止まる。
視界が白くはじけ、膝が崩れ落ちた。
その瞬間——
ルカが立ち上がった。
本来なら制御装置で動けるはずがない。
それでも、彼は立ち上がったのだ。
鎖を引きちぎるように、体中のプログラムを破壊して。
「……叶多を、傷つけるな」
その声は、確かに届いた。
施設全体の照明が一瞬で赤に変わる。
「警告。個体No.441に異常行動検知。緊急プロトコル移行」
シーカーズたちが一斉に銃を構える。
ルカは震えながらも一歩踏み出す。
制御装置の光が、バチバチと火花を散らした。
叶多は叫ぶ。
「ルカ——来るなっ!!!」
彼は、止まらなかった。
彼の世界には、もう叶多しか存在していなかった。
ガラスの壁にひびが入る。
兵士たちが叫ぶ。
システムが暴走する。
——ふたりを引き裂こうとする世界と、抗う影と少年。
その衝突が、運命を大きく動かし始めていた。
耳鳴りの向こうで、冷たい声が響いた。
「オリジナルNo.441、拘束完了」
「シャドウ個体、行動制御プログラムを強制上書き」
叶多の両腕は、背中に回された拘束具で固く縛られていた。
冷たい金属が肌に食い込み、逃げる余地はない。
目を開けると、白い無機質な施設の天井。
周囲には数人のシーカーズ。
そして——ガラスの向こうには、ルカがいた。
「ルカ……っ!」
叫んでも届かない。
厚い防弾ガラスが、音をすべて遮断している。
ルカの両腕も拘束され、首元には制御装置がはめられていた。
顔は静かで、けれどその目は、激しく燃えていた。
「……叶多。見える?」
声は届かないのに、目だけで伝わってくる。
“君を見失わない”という意思が、痛いほどまっすぐだった。
「分離実験、開始準備」
白衣の研究者が端末を操作する。
「オリジナルとシャドウのリンクが強すぎる。切り離しには強制プログラムを使用しろ」
「拒否反応のリスクは?」
「知るか。個体差だ」
無機質な会話。
まるで人間じゃないモノを扱うみたいに。
叶多は歯を食いしばった。
ルカを見捨てるなんてできない。
この世界の“正しさ”が間違っていると、ようやく心の奥から叫びがこみ上げる。
「ルカを……離せ!!!」
体を起こそうとした瞬間、電流が走った。
拘束具から流れ込む電撃が神経を焼き、息が止まる。
視界が白くはじけ、膝が崩れ落ちた。
その瞬間——
ルカが立ち上がった。
本来なら制御装置で動けるはずがない。
それでも、彼は立ち上がったのだ。
鎖を引きちぎるように、体中のプログラムを破壊して。
「……叶多を、傷つけるな」
その声は、確かに届いた。
施設全体の照明が一瞬で赤に変わる。
「警告。個体No.441に異常行動検知。緊急プロトコル移行」
シーカーズたちが一斉に銃を構える。
ルカは震えながらも一歩踏み出す。
制御装置の光が、バチバチと火花を散らした。
叶多は叫ぶ。
「ルカ——来るなっ!!!」
彼は、止まらなかった。
彼の世界には、もう叶多しか存在していなかった。
ガラスの壁にひびが入る。
兵士たちが叫ぶ。
システムが暴走する。
——ふたりを引き裂こうとする世界と、抗う影と少年。
その衝突が、運命を大きく動かし始めていた。
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