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防弾ガラスに、ひびが走った。
高音の亀裂音が、静まり返った実験室に響き渡る。
「制御不能! シャドウ個体No.441、拘束を突破しつつあります!」
「なに……!?ありえない、制御装置は国家規格の——」
その言葉を遮るように、再び轟音。
ルカの全身が淡く発光し、首の制御装置がバチバチと火花を散らしながら裂けた。
そして、砕けたガラスが音を立てて床に降り注ぐ。
警報が鳴り響く。
「非常警戒レベルA! 全部隊、実験棟に急行!」
ルカはガラスの破片の中を踏みしめ、ゆっくりと叶多の方へ歩き出す。
白衣の研究者が震え、兵士たちが一斉に銃口を向ける。
「撃てっ!」
無数の閃光がルカに降り注ぐ——はずだった。
だがそのすべてが、空中で弾かれた。
見えない“何か”が、彼の周囲を守っている。
ルカの目がまっすぐ叶多を見ていた。
「……叶多を返せ」
それは、まるで祈りのようで、呪いのようでもあった。
兵士たちが恐怖に後ずさる。
ルカの足元の床が、バキバキと音を立てて割れ始めた。
まるで、施設そのものが彼の怒りに震えているようだった。
拘束具を外された叶多が、膝をつきながら立ち上がる。
「ルカ! ……もういい、やめろ!」
「いや、やめない。君を、ここから連れ出す」
ルカが手を差し伸べる。
その手は震えていた。
暴走しているのは確かだった。
けれど、その奥には確かに “愛” があった。
叶多は一瞬だけ迷い、けれどすぐに——その手を握った。
「行こう……ルカ」
次の瞬間、施設全体の照明が一斉に落ちる。
赤い非常灯だけが、二人の影を照らしていた。
ルカは兵士たちの包囲網に突っ込む。
金属の床を蹴り上げ、空気を裂くようなスピードで駆け抜ける。
銃声と怒号。
飛び交う閃光。
しかしそのたびに、ルカは叶多を庇い、遮り、突破する。
「ルカ! 後ろ!」
「分かってる!」
背後から襲いかかる兵士の腕を、ルカは片手で払い、壁に叩きつけた。
その動きにはもう“機械的”な制限はなかった。
ただ叶多を守るための、野生のような本能だけがある。
ふたりは実験棟の非常口を蹴破り、外の夜気を浴びた。
「……外、出た」
息を切らしながら叶多がつぶやく。
けれどその背後には、もうサイレンが響き始めていた。
「追ってくるぞ。多分、もう全部隊が動く」
「……いいよ。それでもいい。俺は君を守る」
夜風の中、ルカの瞳が燃えていた。
それはただの“影”ではない、確かな意思だった。
ふたりは夜の都市を駆け抜ける。
世界を敵に回しても、手は離さなかった。
高音の亀裂音が、静まり返った実験室に響き渡る。
「制御不能! シャドウ個体No.441、拘束を突破しつつあります!」
「なに……!?ありえない、制御装置は国家規格の——」
その言葉を遮るように、再び轟音。
ルカの全身が淡く発光し、首の制御装置がバチバチと火花を散らしながら裂けた。
そして、砕けたガラスが音を立てて床に降り注ぐ。
警報が鳴り響く。
「非常警戒レベルA! 全部隊、実験棟に急行!」
ルカはガラスの破片の中を踏みしめ、ゆっくりと叶多の方へ歩き出す。
白衣の研究者が震え、兵士たちが一斉に銃口を向ける。
「撃てっ!」
無数の閃光がルカに降り注ぐ——はずだった。
だがそのすべてが、空中で弾かれた。
見えない“何か”が、彼の周囲を守っている。
ルカの目がまっすぐ叶多を見ていた。
「……叶多を返せ」
それは、まるで祈りのようで、呪いのようでもあった。
兵士たちが恐怖に後ずさる。
ルカの足元の床が、バキバキと音を立てて割れ始めた。
まるで、施設そのものが彼の怒りに震えているようだった。
拘束具を外された叶多が、膝をつきながら立ち上がる。
「ルカ! ……もういい、やめろ!」
「いや、やめない。君を、ここから連れ出す」
ルカが手を差し伸べる。
その手は震えていた。
暴走しているのは確かだった。
けれど、その奥には確かに “愛” があった。
叶多は一瞬だけ迷い、けれどすぐに——その手を握った。
「行こう……ルカ」
次の瞬間、施設全体の照明が一斉に落ちる。
赤い非常灯だけが、二人の影を照らしていた。
ルカは兵士たちの包囲網に突っ込む。
金属の床を蹴り上げ、空気を裂くようなスピードで駆け抜ける。
銃声と怒号。
飛び交う閃光。
しかしそのたびに、ルカは叶多を庇い、遮り、突破する。
「ルカ! 後ろ!」
「分かってる!」
背後から襲いかかる兵士の腕を、ルカは片手で払い、壁に叩きつけた。
その動きにはもう“機械的”な制限はなかった。
ただ叶多を守るための、野生のような本能だけがある。
ふたりは実験棟の非常口を蹴破り、外の夜気を浴びた。
「……外、出た」
息を切らしながら叶多がつぶやく。
けれどその背後には、もうサイレンが響き始めていた。
「追ってくるぞ。多分、もう全部隊が動く」
「……いいよ。それでもいい。俺は君を守る」
夜風の中、ルカの瞳が燃えていた。
それはただの“影”ではない、確かな意思だった。
ふたりは夜の都市を駆け抜ける。
世界を敵に回しても、手は離さなかった。
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