『この想いは、君に届かないと知っていた。』

春夜夢

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第8話『さよならを言わせない』

事件は、突然だった。

一真が――停学処分になった。

理由は、校内での暴力沙汰。
詳細は伏せられていたが、例の上級生が関係しているらしい。

「赤城ってさ、やっぱ危ない奴だったよね」
「氷川もよく付き合ってたな……」
「もう終わったらしいよ」

廊下をすれ違うたび、耳を刺すような声が飛んでくる。

(なんで、一真が……)

問い詰める術もないまま、俺はただ沈黙を選んだ。


---

数日後、家に帰ると郵便受けに一通のメモが入っていた。

> 『明日の放課後、屋上で待ってる』



一真の文字だった。

心臓が跳ね、制服の襟元を握りしめた。

(会える……)


---

翌日、夕焼けの差し込む屋上で、
一真は柵にもたれて俺を待っていた。

「……よく来たな」

「当たり前でしょ。待ってたんだから」

「……悪かった。全部、俺のせいだ」

「違う。誰がなんと言っても、俺は……おまえを信じてる」

言葉が詰まり、唇が震える。

「なあ氷川。……俺たち、今だけ時間を止めていいか?」

「……うん。止めよう、ふたりで」


---

そのまま、手を取り合い、一真の部屋へ向かった。

互いに何も言わず、ただ服を脱がせ合う。
熱を持った唇が、肌を這い、
やがてベッドの上で、ふたりはひとつになる。

「好きだ、氷川。……おまえが、俺の最後の場所だ」

「やめて……そんなこと、言わないで……!」

熱が押し当てられ、
ゆっくりと奥まで沈んでくる。

「んっ……あっ、もっと……触れて……!」

「全部、忘れさせてやる……声、我慢すんな」

甘く激しい律動が、快楽を生み出し、
ふたりの身体は何度も重なり合った。

「氷川……気持ちよすぎて、壊れそう……」

「俺も……ああっ……好き、好き、一真……!」

果てたあと、涙を流す俺の頬を、
彼がそっと舐めるように拭ってくれた。


---

その夜。
布団の中で、ふたりは指を絡めたまま、黙っていた。

「俺、どこにも行かないから。絶対に」

「うん。……俺も、待ってる。いつまでも」

(だから、“さよなら”なんて言わせない)


---

🌙 次回:第9話『それでも、君が笑うなら』へつづく
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