『この想いは、君に届かないと知っていた。』

春夜夢

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第11話『卒業式に、名前を呼ぶ』

三月。
季節外れの雪が、校庭を静かに白く染めていた。

卒業式を翌日に控えた放課後、
俺たちはいつものように校舎裏の階段に並んで座っていた。

「……いよいよ、明日か」

「うん。実感ないけど」

一真は煙草の代わりにキャンディを口に放り込み、空を見上げた。

「おまえ、泣いたりすんの?」

「……たぶん泣く。
 でも一真の前では、泣きたくない」

「バカ。俺の前でぐらい泣けよ」

その言葉だけで、胸がぎゅっと締めつけられた。


---

夜、最後の制服姿でふたり並んで撮った写真をスマホに収めたあと。
一真がベッドの上でぽつりと呟く。

「……明日、ちゃんとおまえの名前、呼びたい」

「え?」

「みんなの前で。“氷川遥が、俺の大事な人だ”って」

「……無理しなくていいよ。
 その気持ちだけで、十分」

「違う。もう、俺は逃げねぇって決めたんだよ」

そう言って、俺の額にキスを落とす。

「……それに、今夜が“制服の最後の夜”だしな」

「……っ、ほんとおまえ、エロい」

「自覚してる」

一真は制服のシャツを器用に脱がせていく。

俺も、その手を止めなかった。


---

唇が重なり、舌が触れ合う。
胸を吸われ、脚を開かれて、
いつものように、けれどどこか特別な気持ちで交わる。

「んっ……あっ、一真……最後の夜、って……」

「何度でも、おまえに触れたい」

ローションを指先でなじませながら、
中をゆっくりほぐしていく。

「ひぁっ……くぅっ……んっ……!」

十分に濡れた奥へ、一真の熱がゆっくりと押し入る。

「……氷川の中、あったかい……落ち着く」

「やだ、もう……好き……っ!」

ゆっくり、深く、
そして最後は激しく。

ベッドがきしむ音と、ふたりの吐息だけが部屋に響いていた。


---

果てたあと。
シーツにくるまれたまま、俺は彼の背中に腕を回す。

「……卒業しても、絶対隣にいてね」

「もちろん。
 明日も、明後日も、その先も。全部、俺の隣だ」


---

🌙 次回:最終話『君の名前を、世界に叫ぶ』へつづく
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