12 / 12
最終話『君の名前を、世界に叫ぶ』
卒業式当日。
校庭は、春の陽に雪解けのきらめきが混ざっていた。
俺たちの制服は今日限り。
名札も、教室も、時間割も、もう過去になる。
「氷川、赤城……卒業おめでとうございます」
担任の声に合わせて、
拍手が響くなか、一真がふと俺の方を見た。
その目は、いつもの不器用な優しさをたたえていて、
小さくうなずいたあと――
静かに立ち上がった。
「先生、ひと言、いいっすか」
ざわめく教室。
一真は前を向いたまま、口を開いた。
「俺は、不器用で、バカで、ずっと人の顔色見て生きてきたけど……
一人だけ、絶対に離したくないやつがいます」
皆の視線が一斉に注がれる。
「……氷川遥。俺は、こいつを好きになって、
今日まで一緒に生きてきた」
「これからも、隣にいてほしい。
だから、俺は今日、こいつの手をちゃんと取って、
一緒に歩いてくって決めました」
誰かが、拍手をした。
空気が、ざわりと揺れて、
やがてクラス中から温かな音が響く。
俺は、涙を堪えきれなかった。
(こんなに、幸せな「好き」があるなんて)
---
放課後。
夕暮れの校庭を、ふたりで歩く。
「……ほんとバカだよな、俺。
でも、ちゃんと伝えたかった」
「ありがとう。……あんなに大きな声で、
俺の名前を呼んでくれたの、初めてだった」
手をつなぐと、指が優しく絡まる。
「……これからも、よろしくな、恋人」
「うん。一生、よろしく」
---
夜。
ふたりで予約していたアパートの契約を済ませて、
新しい鍵を手に入れた。
「この鍵、さ。なんか重く感じる」
「それ、“責任”ってやつだよ」
「……じゃあ、俺、おまえの責任取るわ。今夜から」
「バカ」
笑いながらも、
新しい部屋のベッドの上で、そっと抱き合う。
シャツを脱がせ、キスを落とし、
胸を舌でなぞる。
「なあ、氷川。俺たち……これから、何度こうして生きてくんだろうな」
「飽きるまで、何百回でも、して」
「じゃ、今日だけで三回な」
「……それは明日死ぬやつの勢い」
けれど、優しい夜がそこにあった。
愛して、触れて、名前を呼び合う。
何度も身体を重ねながら、
ふたりは“恋人”から“家族”へと変わっていく。
---
翌朝。
新しい部屋のカーテンを開けると、春の風が吹き抜けた。
「……おはよう、一真」
「おう、嫁」
「違うっつってんだろ……もう」
けれど、何度呼ばれても、嫌じゃないと思った。
---
【完】
『この想いは、君に届かないと知っていた。』
校庭は、春の陽に雪解けのきらめきが混ざっていた。
俺たちの制服は今日限り。
名札も、教室も、時間割も、もう過去になる。
「氷川、赤城……卒業おめでとうございます」
担任の声に合わせて、
拍手が響くなか、一真がふと俺の方を見た。
その目は、いつもの不器用な優しさをたたえていて、
小さくうなずいたあと――
静かに立ち上がった。
「先生、ひと言、いいっすか」
ざわめく教室。
一真は前を向いたまま、口を開いた。
「俺は、不器用で、バカで、ずっと人の顔色見て生きてきたけど……
一人だけ、絶対に離したくないやつがいます」
皆の視線が一斉に注がれる。
「……氷川遥。俺は、こいつを好きになって、
今日まで一緒に生きてきた」
「これからも、隣にいてほしい。
だから、俺は今日、こいつの手をちゃんと取って、
一緒に歩いてくって決めました」
誰かが、拍手をした。
空気が、ざわりと揺れて、
やがてクラス中から温かな音が響く。
俺は、涙を堪えきれなかった。
(こんなに、幸せな「好き」があるなんて)
---
放課後。
夕暮れの校庭を、ふたりで歩く。
「……ほんとバカだよな、俺。
でも、ちゃんと伝えたかった」
「ありがとう。……あんなに大きな声で、
俺の名前を呼んでくれたの、初めてだった」
手をつなぐと、指が優しく絡まる。
「……これからも、よろしくな、恋人」
「うん。一生、よろしく」
---
夜。
ふたりで予約していたアパートの契約を済ませて、
新しい鍵を手に入れた。
「この鍵、さ。なんか重く感じる」
「それ、“責任”ってやつだよ」
「……じゃあ、俺、おまえの責任取るわ。今夜から」
「バカ」
笑いながらも、
新しい部屋のベッドの上で、そっと抱き合う。
シャツを脱がせ、キスを落とし、
胸を舌でなぞる。
「なあ、氷川。俺たち……これから、何度こうして生きてくんだろうな」
「飽きるまで、何百回でも、して」
「じゃ、今日だけで三回な」
「……それは明日死ぬやつの勢い」
けれど、優しい夜がそこにあった。
愛して、触れて、名前を呼び合う。
何度も身体を重ねながら、
ふたりは“恋人”から“家族”へと変わっていく。
---
翌朝。
新しい部屋のカーテンを開けると、春の風が吹き抜けた。
「……おはよう、一真」
「おう、嫁」
「違うっつってんだろ……もう」
けれど、何度呼ばれても、嫌じゃないと思った。
---
【完】
『この想いは、君に届かないと知っていた。』
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
悪の策士のうまくいかなかった計画
迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。
今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。
そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。
これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに??
王子は跪き、俺に向かって言った。
「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。
そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。
「ずっと好きだった」と。
…………どうなってるんだ?
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる
水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。
「君のすべては、俺が管理する」
戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。
これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。