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第13話:黒猫の使者と、動き出す裏組織
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「……綾太郎。客人です」
夜更け、拠点の蔵の戸を静かにノックしたのは、桐子の声だった。
綾太郎が縁側で伸びをしながら出てくると、
そこにいたのは、真っ黒な着流しをまとった女――
その肩に乗っていたのは、一匹の黒猫。
「よお、元気してたかい、“白の猫又”」
綾太郎の耳がぴくりと動く。
「……お前、まさか“黒猫連”か」
「そう。“裏の陰陽組織”って噂されてる方の陰陽連盟。
本庁から追い出された連中のうち、“正義を曲げなかった者たち”の集まりさ」
黒猫連――
かつて陰陽寮の腐敗に異を唱え、弾圧された者たちが作った、
いわば「もう一つの陰陽勢力」。
桐子が警戒しながら訊いた。
「それで、何の用ですか?」
黒猫がにゃあと鳴き、女が口を開く。
「“左京将監の動き”を止めたい。だが我々では手が届かない。
だから……“猫又の力”を借りたいんだよ」
綾太郎は黙ったまま、地面を見つめた。
「俺はもう、“誰かに使われるだけの存在”じゃねぇ」
「分かってる。……だから、今度は“対等に組みたい”」
桐子が目を見開く。
「それって……つまり、綾太郎を、“黒猫連”にスカウトしたいってことですか?」
「違うね。“協定”だ。
あんたたちと、我々が“利害一致”で手を組む」
女は懐から一通の密書を差し出す。
「左京将監の“私設研究場”の位置だ。
ここを調べれば、すべての証拠が揃うはず」
綾太郎がその地図を受け取る。
場所は、江戸の西――かつて狐山と呼ばれた古戦場跡。
「……なんでこんなものを俺に?」
「言ったろ。あんたは“選ばれた猫”なんかじゃない。
“選ぶ側”になったんだよ、今は」
綾太郎は、わずかに目を細めて笑った。
「……面白ぇ。乗ってやるよ、その賭け」
その夜。
綾太郎は宵桜を膝に置き、ぽつりと呟いた。
「陰陽寮の腐敗。左京の研究。そして……俺の力の“正体”。
全部、まとめてケリつけてやる」
桐子は傍らで、静かに頷く。
「なら、行きましょう。
わたしたちが、“真実”を暴く番です」
🌙次回:「狐山の遺構と、目覚めるもの」へつづく
夜更け、拠点の蔵の戸を静かにノックしたのは、桐子の声だった。
綾太郎が縁側で伸びをしながら出てくると、
そこにいたのは、真っ黒な着流しをまとった女――
その肩に乗っていたのは、一匹の黒猫。
「よお、元気してたかい、“白の猫又”」
綾太郎の耳がぴくりと動く。
「……お前、まさか“黒猫連”か」
「そう。“裏の陰陽組織”って噂されてる方の陰陽連盟。
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黒猫連――
かつて陰陽寮の腐敗に異を唱え、弾圧された者たちが作った、
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「それで、何の用ですか?」
黒猫がにゃあと鳴き、女が口を開く。
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だから……“猫又の力”を借りたいんだよ」
綾太郎は黙ったまま、地面を見つめた。
「俺はもう、“誰かに使われるだけの存在”じゃねぇ」
「分かってる。……だから、今度は“対等に組みたい”」
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「それって……つまり、綾太郎を、“黒猫連”にスカウトしたいってことですか?」
「違うね。“協定”だ。
あんたたちと、我々が“利害一致”で手を組む」
女は懐から一通の密書を差し出す。
「左京将監の“私設研究場”の位置だ。
ここを調べれば、すべての証拠が揃うはず」
綾太郎がその地図を受け取る。
場所は、江戸の西――かつて狐山と呼ばれた古戦場跡。
「……なんでこんなものを俺に?」
「言ったろ。あんたは“選ばれた猫”なんかじゃない。
“選ぶ側”になったんだよ、今は」
綾太郎は、わずかに目を細めて笑った。
「……面白ぇ。乗ってやるよ、その賭け」
その夜。
綾太郎は宵桜を膝に置き、ぽつりと呟いた。
「陰陽寮の腐敗。左京の研究。そして……俺の力の“正体”。
全部、まとめてケリつけてやる」
桐子は傍らで、静かに頷く。
「なら、行きましょう。
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🌙次回:「狐山の遺構と、目覚めるもの」へつづく
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