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夜の風が心地よかった。
駅前の街灯が足元を照らし、行き交う人々のざわめきが遠くに響く。
陽翔と蓮は肩を並べて歩いていた。
帰るだけの道――なのに、それだけで心が満たされていた。
「……なんかさ」
「ん」
「今日、いつもより時間がゆっくり流れてる気がする」
「……お前がのろいだけだろ」
「ひど。ロマンチックなこと言ってるのに」
蓮は小さく鼻で笑った。
それだけの仕草が、もう陽翔の胸を跳ねさせる。
笑い声も、歩幅も、夜風も――全部が、恋人としての空気になっていた。
「ねぇ」
「……なんだよ」
「手、つないでいい?」
「……勝手にしろ」
蓮がポケットから手を出す。
陽翔が自然にその手を取る。
夜道の真ん中、誰に見られても構わない距離。
指が絡んだ瞬間、胸の奥がじんわりとあたたかくなった。
「……うわ、やっぱ好き」
「……お前な」
「いや、手つなぐと、どうしても思っちゃうんだって」
蓮はため息をひとつついて、視線を空に向けた。
でも、手を離す気配はない。
むしろ、少しだけ握る力を強めてきた。
(……ああ、ほんとに、この人と“恋人”なんだ)
ふとした瞬間、心にこみ上げる実感。
夜の空気に包まれて、胸の奥がじんわり熱を帯びていく。
*
「ねえ、こういうの……なんか“恋人っぽい”よね」
「……何が」
「夜に並んで歩いて、手つないで」
「……普通だろ」
「でも、“好きな人”とだから特別なんだよ」
蓮は何も言わず、ただ横目で陽翔を見た。
その目は、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。
誰にも見せたことのない顔――
陽翔だけが知っている、夜の蓮の顔。
「……陽翔」
「ん?」
「うるせぇけど、そういうとこ……嫌いじゃねぇ」
「……今、それ、めちゃくちゃ反則」
「……知らねぇよ」
陽翔は思わず顔を覆い、笑いをこぼした。
蓮はその様子を見て、わずかに肩を揺らした。
ふたりの影が、街灯の下で重なる。
*
事務所の前に着いたとき、
外の空気はすっかり夜の匂いに変わっていた。
静かな扉の前、ふたりは自然と立ち止まる。
「……なに止まってんだ」
「え、いや……この感じ、なんかデートの終わりっぽい」
「デート?」
「うん。手、つないで、夜道歩いて、事務所の前で……」
陽翔が話していると、蓮がそっと手を引いた。
不意に距離が近づく。
肩と肩が触れて、顔と顔が、あと少しで触れ合いそうな距離。
「……お前、ほんとうるせぇ」
「ん、でも?」
「……好きだって言わせたいのか」
「うん」
蓮が息を吐いて、ほんの少し笑った。
夜の灯りの中で、その笑顔は不器用で、でも優しい。
「……好きだよ」
その低い声に、陽翔の心が一気に跳ねた。
そのまま、蓮の指が陽翔の顎をそっとすくい上げる。
「……お返し」
という小さな声とともに、唇がふわりと触れ合った。
夜の帰り道の終わりに交わす、
短くて、やさしいキス。
その一瞬で、陽翔の世界はまた少し広がった。
*
扉を開け、ふたりで事務所に入ると、
中はいつもと同じはずなのに――
なぜか少しだけ、あたたかい空気に包まれていた。
「……ただの帰り道が、こんなに甘いとか反則」
「……お前が勝手に盛り上がってんだろ」
「うん。でも、蓮さんのせいでもあるよ」
「……知らねぇ」
蓮は照れ隠しのように頭をかき、
陽翔の手を離さず、そのまま奥へと歩いていった。
その背中を見つめながら、陽翔は思う。
――ただの帰り道も、この人となら特別になる。
🕊️ 第27話 予告:「夜を抱きしめるように」
恋人として過ごす夜。
言葉ではなく、距離と温度で伝え合う想い。
静かな夜の中で、ふたりの恋がまたひとつ深くなる――。
駅前の街灯が足元を照らし、行き交う人々のざわめきが遠くに響く。
陽翔と蓮は肩を並べて歩いていた。
帰るだけの道――なのに、それだけで心が満たされていた。
「……なんかさ」
「ん」
「今日、いつもより時間がゆっくり流れてる気がする」
「……お前がのろいだけだろ」
「ひど。ロマンチックなこと言ってるのに」
蓮は小さく鼻で笑った。
それだけの仕草が、もう陽翔の胸を跳ねさせる。
笑い声も、歩幅も、夜風も――全部が、恋人としての空気になっていた。
「ねぇ」
「……なんだよ」
「手、つないでいい?」
「……勝手にしろ」
蓮がポケットから手を出す。
陽翔が自然にその手を取る。
夜道の真ん中、誰に見られても構わない距離。
指が絡んだ瞬間、胸の奥がじんわりとあたたかくなった。
「……うわ、やっぱ好き」
「……お前な」
「いや、手つなぐと、どうしても思っちゃうんだって」
蓮はため息をひとつついて、視線を空に向けた。
でも、手を離す気配はない。
むしろ、少しだけ握る力を強めてきた。
(……ああ、ほんとに、この人と“恋人”なんだ)
ふとした瞬間、心にこみ上げる実感。
夜の空気に包まれて、胸の奥がじんわり熱を帯びていく。
*
「ねえ、こういうの……なんか“恋人っぽい”よね」
「……何が」
「夜に並んで歩いて、手つないで」
「……普通だろ」
「でも、“好きな人”とだから特別なんだよ」
蓮は何も言わず、ただ横目で陽翔を見た。
その目は、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。
誰にも見せたことのない顔――
陽翔だけが知っている、夜の蓮の顔。
「……陽翔」
「ん?」
「うるせぇけど、そういうとこ……嫌いじゃねぇ」
「……今、それ、めちゃくちゃ反則」
「……知らねぇよ」
陽翔は思わず顔を覆い、笑いをこぼした。
蓮はその様子を見て、わずかに肩を揺らした。
ふたりの影が、街灯の下で重なる。
*
事務所の前に着いたとき、
外の空気はすっかり夜の匂いに変わっていた。
静かな扉の前、ふたりは自然と立ち止まる。
「……なに止まってんだ」
「え、いや……この感じ、なんかデートの終わりっぽい」
「デート?」
「うん。手、つないで、夜道歩いて、事務所の前で……」
陽翔が話していると、蓮がそっと手を引いた。
不意に距離が近づく。
肩と肩が触れて、顔と顔が、あと少しで触れ合いそうな距離。
「……お前、ほんとうるせぇ」
「ん、でも?」
「……好きだって言わせたいのか」
「うん」
蓮が息を吐いて、ほんの少し笑った。
夜の灯りの中で、その笑顔は不器用で、でも優しい。
「……好きだよ」
その低い声に、陽翔の心が一気に跳ねた。
そのまま、蓮の指が陽翔の顎をそっとすくい上げる。
「……お返し」
という小さな声とともに、唇がふわりと触れ合った。
夜の帰り道の終わりに交わす、
短くて、やさしいキス。
その一瞬で、陽翔の世界はまた少し広がった。
*
扉を開け、ふたりで事務所に入ると、
中はいつもと同じはずなのに――
なぜか少しだけ、あたたかい空気に包まれていた。
「……ただの帰り道が、こんなに甘いとか反則」
「……お前が勝手に盛り上がってんだろ」
「うん。でも、蓮さんのせいでもあるよ」
「……知らねぇ」
蓮は照れ隠しのように頭をかき、
陽翔の手を離さず、そのまま奥へと歩いていった。
その背中を見つめながら、陽翔は思う。
――ただの帰り道も、この人となら特別になる。
🕊️ 第27話 予告:「夜を抱きしめるように」
恋人として過ごす夜。
言葉ではなく、距離と温度で伝え合う想い。
静かな夜の中で、ふたりの恋がまたひとつ深くなる――。
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