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電気を消した寝室には、
かすかな街の明かりがカーテンの隙間から差し込んでいた。
それはランプよりも柔らかく、
夜の空気といっしょにふたりを包み込んでいる。
布団の中、蓮と陽翔は向かい合うように横になっていた。
距離は、腕を伸ばせばすぐに触れられるほど近い。
夜の静寂のなか、二人の息づかいだけが重なっていた。
「……ねえ、蓮さん」
「ん」
「今日、いろんなことあったけど……一番好きなの、この時間かも」
「……は?」
「寝る前に、蓮さんとこうして向かい合ってる時間」
「……バカ」
蓮は枕に顔を埋めるようにして、
わずかに目をそらした。
でも、その声はいつもより少しやわらかかった。
(……この声、夜になると少し低くなるんだよな)
陽翔はその声を聞いているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
眠る直前の時間は、不思議とすべてが素直になる。
*
「……今日、お前、朝からずっとうるさかった」
「え~、そんなことないよ」
「ある」
「でも、それで蓮さん……ちょっと笑ってたよね」
「笑ってねぇ」
「うそ。朝、信号待ちでちょっと口角上がってた」
「……見んな」
「見るよ。だって好きな人だもん」
蓮がため息をつく音が、布団の中で近く響く。
陽翔はその音すら心地よく感じていた。
*
「……なあ」
「ん?」
「この時間、……けっこう嫌いじゃねぇ」
「……! それ、もうちょっとロマンチックに言ってよ!」
「……無理」
「でも、嬉しい」
陽翔は笑いながら、そっと蓮の手を探り、
自分の指を絡めた。
夜の冷たい空気のなかで、その手だけが温かい。
蓮は抵抗することなく、
そのまま指をからめ返してくる。
その仕草があまりにも優しくて、
陽翔の胸の奥がじんわりと甘く染まっていった。
「……ねぇ」
「ん」
「こういう夜が、ずっと続けばいいな」
「……勝手にしろ」
「勝手にする」
「……バカ」
*
「……お前、ほんとよく喋るな」
「寝る前だから、余計喋りたくなるの」
「……ガキか」
「違うよ。恋人だから」
蓮は一瞬だけ黙り込んだあと、
布団の中でゆっくりと陽翔の髪を撫でた。
指先が髪をすべる感触が、静かな夜に溶けていく。
「……っ」
「なに」
「そういうの……心臓に悪い」
「……知らねぇよ」
「ずるい」
「お前が勝手にドキドキしてんだろ」
「でも、……嬉しい」
ふたりの距離が、ほんの少しだけ縮まる。
呼吸と呼吸がかすかに混ざって、
夜の空気が甘く、やわらかく染まった。
*
「……おやすみ、蓮さん」
「……ああ」
「ねぇ、“おやすみ”だけじゃイヤ」
「……は?」
「“おやすみ”の前に、なにか欲しい」
蓮は無言で少しだけ身を寄せ、
陽翔の額に軽く唇を触れさせた。
夜の空気が、一瞬だけあたたかく揺れる。
「……」
「なに、黙ってんだよ」
「びっくりしただけ……! ずるい!」
「うるせぇ、寝ろ」
「はいはい、“おやすみ”」
蓮はそっぽを向きながらも、
手だけはしっかりと陽翔の手を握ったままだった。
夜の寝室。
静けさの中で交わされる小さなささやきとぬくもりが、
ふたりの一日を、やさしく締めくくっていった。
🕊️ 第48話 予告:「朝のまどろみ」
夜を共に過ごしたあと、
眠る前よりも近づいた距離のまま迎える朝。
“おはよう”の一言が、甘く心を揺らす――そんな時間。
かすかな街の明かりがカーテンの隙間から差し込んでいた。
それはランプよりも柔らかく、
夜の空気といっしょにふたりを包み込んでいる。
布団の中、蓮と陽翔は向かい合うように横になっていた。
距離は、腕を伸ばせばすぐに触れられるほど近い。
夜の静寂のなか、二人の息づかいだけが重なっていた。
「……ねえ、蓮さん」
「ん」
「今日、いろんなことあったけど……一番好きなの、この時間かも」
「……は?」
「寝る前に、蓮さんとこうして向かい合ってる時間」
「……バカ」
蓮は枕に顔を埋めるようにして、
わずかに目をそらした。
でも、その声はいつもより少しやわらかかった。
(……この声、夜になると少し低くなるんだよな)
陽翔はその声を聞いているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
眠る直前の時間は、不思議とすべてが素直になる。
*
「……今日、お前、朝からずっとうるさかった」
「え~、そんなことないよ」
「ある」
「でも、それで蓮さん……ちょっと笑ってたよね」
「笑ってねぇ」
「うそ。朝、信号待ちでちょっと口角上がってた」
「……見んな」
「見るよ。だって好きな人だもん」
蓮がため息をつく音が、布団の中で近く響く。
陽翔はその音すら心地よく感じていた。
*
「……なあ」
「ん?」
「この時間、……けっこう嫌いじゃねぇ」
「……! それ、もうちょっとロマンチックに言ってよ!」
「……無理」
「でも、嬉しい」
陽翔は笑いながら、そっと蓮の手を探り、
自分の指を絡めた。
夜の冷たい空気のなかで、その手だけが温かい。
蓮は抵抗することなく、
そのまま指をからめ返してくる。
その仕草があまりにも優しくて、
陽翔の胸の奥がじんわりと甘く染まっていった。
「……ねぇ」
「ん」
「こういう夜が、ずっと続けばいいな」
「……勝手にしろ」
「勝手にする」
「……バカ」
*
「……お前、ほんとよく喋るな」
「寝る前だから、余計喋りたくなるの」
「……ガキか」
「違うよ。恋人だから」
蓮は一瞬だけ黙り込んだあと、
布団の中でゆっくりと陽翔の髪を撫でた。
指先が髪をすべる感触が、静かな夜に溶けていく。
「……っ」
「なに」
「そういうの……心臓に悪い」
「……知らねぇよ」
「ずるい」
「お前が勝手にドキドキしてんだろ」
「でも、……嬉しい」
ふたりの距離が、ほんの少しだけ縮まる。
呼吸と呼吸がかすかに混ざって、
夜の空気が甘く、やわらかく染まった。
*
「……おやすみ、蓮さん」
「……ああ」
「ねぇ、“おやすみ”だけじゃイヤ」
「……は?」
「“おやすみ”の前に、なにか欲しい」
蓮は無言で少しだけ身を寄せ、
陽翔の額に軽く唇を触れさせた。
夜の空気が、一瞬だけあたたかく揺れる。
「……」
「なに、黙ってんだよ」
「びっくりしただけ……! ずるい!」
「うるせぇ、寝ろ」
「はいはい、“おやすみ”」
蓮はそっぽを向きながらも、
手だけはしっかりと陽翔の手を握ったままだった。
夜の寝室。
静けさの中で交わされる小さなささやきとぬくもりが、
ふたりの一日を、やさしく締めくくっていった。
🕊️ 第48話 予告:「朝のまどろみ」
夜を共に過ごしたあと、
眠る前よりも近づいた距離のまま迎える朝。
“おはよう”の一言が、甘く心を揺らす――そんな時間。
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