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「……そろそろ起きないと、遅刻するよ」
「……あと5分」
布団のなかで陽翔がくすぐったそうに笑いながら言うと、
蓮は軽く額に手を当てて深く息をついた。
「……ガキか」
「え~、もうちょっとだけ~」
「うるせぇ。起きろ」
蓮は半分あきれたような声を出しながら、
陽翔の手首を軽くつかんで起こす。
その動きは乱暴なようでいて、
ちゃんと力加減が優しい。
「……ふふ、こういうの、ちょっと幸せ」
「バカ」
「でも、本当にそう思ってるんだよ?」
「……」
蓮は何も言わず、
先にベッドを抜け出して洗面所へと向かった。
その背中を見ながら、
陽翔はふわりと笑みを浮かべた。
*
洗面所では、鏡の前で蓮が髪をとかしていた。
寝起きで少し乱れた髪を、
指先で軽く整えるように梳いている。
その何気ない仕草に――陽翔の胸がくすぐられる。
(……朝のこの姿、好きなんだよな)
「なに見てんだ」
「ん~、蓮さん」
「……見りゃわかる」
「朝からかっこよくて、ちょっとズルい」
「……バカ」
そう言いながらも、
蓮は鏡越しにちらりと陽翔を見る。
目が合った瞬間、
陽翔の胸がきゅっと鳴った。
「……おい」
「なに?」
「……顔、にやけてんぞ」
「えっ、うそ!」
「マヌケ面」
「ひどい!」
けれど、蓮の目の端がわずかに緩んでいる。
からかいながらも、
その視線はちゃんとやさしい。
*
ふたり並んで歯を磨く。
鏡に映るのは、
ほぼ同じ身長で並ぶふたりの顔。
こういう小さな“日常”が、
いつのまにか当たり前になっていることに――
陽翔はふと、胸がじんわりとした。
「……ねぇ」
「ん」
「こういう朝、ずっと続くといいね」
「……なに言ってんだ」
「言ってみただけ」
「……バカ」
「でも、ほんとだよ」
蓮は答えず、
鏡越しに目を合わせて
歯ブラシをくわえたまま
陽翔の頭をぽん、と軽く叩いた。
「……いってぇ」
「うるせぇ」
「でも、うれしい」
「……バカ」
その短いやりとりが、
朝の光の中でふわりと甘く響いた。
*
身支度が終わり、リビングに戻る。
コーヒーの香りがふわっと漂い、
カーテンのすき間から朝日が差し込む。
蓮がカップをテーブルに置くと、
陽翔も隣に腰を下ろした。
「……ね、行く前にさ」
「ん?」
「ちょっとだけ、見てて」
「……は?」
陽翔は両手で蓮の頬をそっと包み、
視線をまっすぐ重ねた。
至近距離で見つめ合う時間。
ほんの数秒なのに、
空気があたたかく満ちていく。
「……バカ」
「いいじゃん、朝のチャージ」
「……うるせぇ」
蓮は視線をそらしたふりをしながらも、
陽翔の指先をそっと握り返した。
指と指が重なるだけで、
朝の時間が特別なものに変わる。
*
「……よし」
「ん?」
「行くか」
「うん!」
立ち上がって並んで歩き出す。
この瞬間の空気も、いつも変わらない。
けれど、それがふたりにとって
いちばん安心できる“朝の形”だった。
🕊️ 第65話 予告:「通勤前のキス」
朝の支度を終え、出かける前の玄関。
「行ってきます」の前に交わす
恋人同士の、いつものキス。
「……あと5分」
布団のなかで陽翔がくすぐったそうに笑いながら言うと、
蓮は軽く額に手を当てて深く息をついた。
「……ガキか」
「え~、もうちょっとだけ~」
「うるせぇ。起きろ」
蓮は半分あきれたような声を出しながら、
陽翔の手首を軽くつかんで起こす。
その動きは乱暴なようでいて、
ちゃんと力加減が優しい。
「……ふふ、こういうの、ちょっと幸せ」
「バカ」
「でも、本当にそう思ってるんだよ?」
「……」
蓮は何も言わず、
先にベッドを抜け出して洗面所へと向かった。
その背中を見ながら、
陽翔はふわりと笑みを浮かべた。
*
洗面所では、鏡の前で蓮が髪をとかしていた。
寝起きで少し乱れた髪を、
指先で軽く整えるように梳いている。
その何気ない仕草に――陽翔の胸がくすぐられる。
(……朝のこの姿、好きなんだよな)
「なに見てんだ」
「ん~、蓮さん」
「……見りゃわかる」
「朝からかっこよくて、ちょっとズルい」
「……バカ」
そう言いながらも、
蓮は鏡越しにちらりと陽翔を見る。
目が合った瞬間、
陽翔の胸がきゅっと鳴った。
「……おい」
「なに?」
「……顔、にやけてんぞ」
「えっ、うそ!」
「マヌケ面」
「ひどい!」
けれど、蓮の目の端がわずかに緩んでいる。
からかいながらも、
その視線はちゃんとやさしい。
*
ふたり並んで歯を磨く。
鏡に映るのは、
ほぼ同じ身長で並ぶふたりの顔。
こういう小さな“日常”が、
いつのまにか当たり前になっていることに――
陽翔はふと、胸がじんわりとした。
「……ねぇ」
「ん」
「こういう朝、ずっと続くといいね」
「……なに言ってんだ」
「言ってみただけ」
「……バカ」
「でも、ほんとだよ」
蓮は答えず、
鏡越しに目を合わせて
歯ブラシをくわえたまま
陽翔の頭をぽん、と軽く叩いた。
「……いってぇ」
「うるせぇ」
「でも、うれしい」
「……バカ」
その短いやりとりが、
朝の光の中でふわりと甘く響いた。
*
身支度が終わり、リビングに戻る。
コーヒーの香りがふわっと漂い、
カーテンのすき間から朝日が差し込む。
蓮がカップをテーブルに置くと、
陽翔も隣に腰を下ろした。
「……ね、行く前にさ」
「ん?」
「ちょっとだけ、見てて」
「……は?」
陽翔は両手で蓮の頬をそっと包み、
視線をまっすぐ重ねた。
至近距離で見つめ合う時間。
ほんの数秒なのに、
空気があたたかく満ちていく。
「……バカ」
「いいじゃん、朝のチャージ」
「……うるせぇ」
蓮は視線をそらしたふりをしながらも、
陽翔の指先をそっと握り返した。
指と指が重なるだけで、
朝の時間が特別なものに変わる。
*
「……よし」
「ん?」
「行くか」
「うん!」
立ち上がって並んで歩き出す。
この瞬間の空気も、いつも変わらない。
けれど、それがふたりにとって
いちばん安心できる“朝の形”だった。
🕊️ 第65話 予告:「通勤前のキス」
朝の支度を終え、出かける前の玄関。
「行ってきます」の前に交わす
恋人同士の、いつものキス。
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