Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第50話:ただ、あなたが好きだから

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南方領、再び降り立つその場所は、数週間前とはまるで違って見えた。

 駅の出口で待っていたのは──黒いコートを羽織り、目深にフードを被った男。
 けれど、透真にはすぐわかった。

「……陽翔」

 その名前を呼んだ瞬間、彼はフードを外して微笑んだ。

「迎えに来た。“番”だから、って理由じゃない。──お前に会いたかったから」


---

 その言葉だけで、胸がいっぱいになる。

 透真は言葉の代わりに、小さく首を縦に振った。

 ──駅を出たふたりは、そのまま近くのカフェへ向かった。


---

 「俺さ、思ってたより、あんたのいない時間が長く感じた。
  不安っていうより……寂しくて」

 透真がぽつりとこぼすと、陽翔はココアを飲みながら微笑む。

「俺は、ずっとお前のこと考えてた。
 朝起きたときも、眠る前も──ずっと」


---

 テーブルの下で、そっと指先が重なる。
 そのぬくもりが、言葉よりも多くを語っていた。

「……ねえ、陽翔。俺、お前の番だけど……それ以上に」

 透真は少しだけ息を吸い、目を伏せずに言った。

「好きだよ。制度とか、番とか関係なく──“陽翔だから”好きなんだ」


---

 一瞬の静寂。
 それから、陽翔は椅子を引き、テーブル越しに身を乗り出した。

 透真の頬に手を添え、その額にそっとキスを落とす。

「……ありがとう。お前が俺を選んでくれて、嬉しい」


---

 そして次の瞬間、唇が重なった。
 優しく、深く。
 触れるたびに、「好き」が溶けていく。


---

 店を出たあとは、南方領の海沿いをふたりで歩いた。
 風はまだ少し冷たかったけれど、手を繋いでいれば寒さは感じなかった。


---

「今まで、お前のこと守りたくて仕方なかったけど、
 たぶん……俺の方が、お前に守られてたんだと思う」

 陽翔がそうつぶやくと、透真は照れたように笑った。

「お互いさま。……でも、これからは守られるだけじゃなくて、
 “隣で支え合う”ってことで、いい?」


---

 陽翔は立ち止まり、正面から透真を見つめた。

「もちろん。恋人だからな」

 それは、これまでで一番甘く、静かなプロポーズのようだった。


---

 ふたりはまた、ゆっくりと歩き出す。
 繋がれた手が、これからも離れないことを願いながら。
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