Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第49話:近づく距離、揺れる心

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制度記録チームでの仕事は、想像以上に膨大だった。
 透真は与えられたαとΩの記録データと向き合いながら、ふと手を止めた。

「……この案件、変だな」


---

 目を引いたのは、あるΩ候補者の記録。
 “複数のαに発情反応を示していた”と記録されていたが──詳細な検証データが存在しない。

「制度上、“番”は唯一であるはず。
 なのに、どうして……?」


---

 その矛盾に気づいた時、透真の胸にかすかな不安が広がった。

(──もし、“番”という制度そのものが、絶対じゃなかったら?)


---

 一方その頃、本部にいる陽翔は、
 訓練と報告義務の合間を縫って、透真への小さな荷物を送っていた。

 封筒の中には、メモと紙袋。

《透真へ。
 もし次に会える日が来たら、これを一緒に使おう。
 ──番としてじゃなく、“恋人”として。》


---

 中には、ペアマグカップ。
 片方のカップには「T」、もう片方には「H」の刻印。

(あいつ、こんな洒落たもん選ぶようになったのか……)

 透真はくすっと笑いながら、カップを棚に並べた。


---

 そんな矢先。
 学園の管理棟に、ある封筒が届けられた。

「──“制度適応支援チーム”より、緋月透真氏へ。
 南方調査任務への同行依頼が届いております」


---

「南方……って、またあの場所に?」

 透真は手紙を読み進めながら、思わず息を呑んだ。

 依頼文の末尾には、こうあった。

> “天瀬陽翔候補生と共に現地へ赴き、番制度記録への現場協力を願う”




---

「……会えるのか、また」

 自然に笑みがこぼれる。
 それと同時に、胸の奥がふるえていた。

(──今度こそ、ちゃんと気持ちを伝えたい)


---

 夜。
 ふたりはまた、メッセージを交わしていた。

【陽翔】
《なあ、次に会ったら、抱きしめてもいいか?》

【透真】
《……好きって、言ってくれるなら》


---

 数秒の沈黙のあと、陽翔からメッセージが届いた。

【陽翔】
《好きだ。お前が。番としてじゃなく、ひとりの人間として》


---

 透真はスマホを胸に当て、静かに目を閉じた。
 言葉が、体温のように滲んでくる。

(──あと少し。もうすぐ、会える)
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