Ωの花嫁に指名されたけど、αのアイツは俺にだけ発情するらしい

春夜夢

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第48話:繋がる想いと、離れてもそばに

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出発前の朝。
 南方領の宿舎に、カーテン越しの光が差し込んでいた。

 ベッドの中、互いの体温を感じ合いながら、透真と陽翔は静かに寄り添っていた。

「今日……行くんだよな、本部に」

「ああ。でも、すぐ戻ってくる。必要な手続きだけだ」


---

 透真は、陽翔の胸に耳を当てながら、少しだけ眉を寄せた。

「この数日、夢みたいだったな。
 “番として登録”して、隣で目覚めて──こんな日が来るなんて、思わなかった」

「思わせたくなかった。“どうせ”って言葉を、お前に使わせたくなかった」

 陽翔の声は、真っ直ぐだった。


---

 出発の時間が近づき、ふたりは駅まで並んで歩いた。

「……遠距離番、って言葉があるらしいな」
 透真が、ぽつりとこぼした。

「離れてても、心の繋がりがあれば問題ない、ってやつか」

「……俺、そういうの、信じてみたい」


---

 改札の前。
 陽翔が小さな包みを差し出す。

「開けるのは、俺がいなくなったあとにしてくれ」

「何それ、ずるいな」

「いいから、約束しろ」

 渋々ながら、透真はうなずいた。


---

 ホームに入る直前、陽翔は一歩引いて、透真を見つめた。

「──俺は、“番”としてだけじゃなく、
 一人の男として、お前に惚れてる。
 ……だから、次に会った時は、“恋人”としてキスさせてくれ」


---

 その一言に、透真の頬が赤く染まった。

「……今のは、反則」

「じゃあ、答えは“次”に聞く。楽しみにしとくよ」


---

 電車が滑り込み、陽翔は手を振って乗り込んだ。
 扉が閉まるまで、透真は目を逸らさず、まっすぐ陽翔を見つめていた。


---

 その夜。
 透真は一人、包みを開けた。

 中には──銀のキーチェーン。
 プレートには、小さく文字が彫られていた。

 > “I choose you. Always.”


---

 ふいに、胸が熱くなった。

「……バカ」

 でも、口元は自然に緩んでいた。


---

 翌日から、透真は学園に復帰しつつ、制度記録チームに正式配属された。
 αとΩの“意思で選んだ番”のデータ分析に関わる任務は、彼にとって“陽翔との未来を築く”第一歩だった。


---

 そして夜。
 スマホが震える。

【陽翔】
《起きてる?》
《そっちの空、星見えてる?》

【透真】
《見えてる。そっちは?》

【陽翔】
《見えてる。──繋がってるな》


---

 文字だけの会話でも、そこにある温度は確かだった。

 離れていても、手のひらの中で、ふたりは番として、確かに“隣”にいた。
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