おじさん錬金術師、金を錬成する。出奔する。

双葉珠洲

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6話。おじさん、金塊を積む

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 リーフ・オークス少年は我が手に落ちた。
 金塊を前にして21歳の少年が抗えるはずもなかった。

 というより元々敵対意志が無いので金塊を積まなくとも会話はしてくれるつもりだったらしい。
 それに雇い主からも私側についてもよいと言われていたとか。


「下手に国外に逃げられるよりは交渉役を張り付けることで納得したのだと思いますよ」


 というのはリーフ少年談。

 では金塊を積むことが無駄だったかと言えばそうでもない。
 金の錬成が嘘だった場合は無条件で連行されて晒されることになっていたらしい。
 混乱を招いたのでその収拾を図るために処罰することも選択肢にあったとか。
 流石に処断はないけれどそこそこ重い処分になる予定。
 黙秘したり誤魔化したりする場合は色々と面倒なので処断することになったかもとのこと。

 混乱を招いた本人なので仕方がない、のだろう。
 国的には中途半端にして下手な勘繰りをされても困るのだろう。

 中途半端に出し渋っていれば疑わしいという事で連行されたかもしれない。
 思い切った私、流石である。

 それに遠慮なく金塊を積んだことでリーフ少年がかなり友好的になってくれた。

 リーフ少年は天才に片足を突っ込んだ元魔術師。
 家庭の事情で魔術に傾倒し日々研究に励んでいたとか。
 とある日、実家の研究が失敗し甚大な被害を及ぼした。
 その保障や賠償で一家は研究を取り上げられ、リーフ少年はその才能から魔術兵士として徴用されることになった。
 彼はいわば借金奴隷。
 この世界に奴隷制度はないけれど損害賠償を済ませるまで自由が制限されるので似たようなもの。
 そんなリーフ少年にとって文字通り金を生み出せる錬金術師は願ってもない相手。

 とりあえず、リーフ少年の実家であるオークス家の賠償金がどれほどかは分からないがリーフ少年の分を程度肩代わりすると伝えたところワンコみたいに懐かれてしまった。


「それでルルートゥさんはこれからどうしたいんですか? 何処かの議員に取り入るなら交渉してきますが」
「議員かぁ。それはあんまり乗り気じゃないね。後ろ盾があることは良いことなんだろうけれど面倒事はなぁ」


 リーフ少年によれば後ろ盾になってくれる権力者はより取り見取りらしい。
 ロット共和国には貴族がいない。
 とはいえ一部の家が権力を掌握していたりするのでそれに近い者がいる。
 共和国の上院議員が最たる例でリーフ少年の雇い主もその中の一人。

 錬金術師界隈でも先進的な研究では自分を守るために色々と権力争いが繰り広げられると聞く。
 私のような雑務をこなすような一般人には縁のない世界なので経験はないが噂程度では聞いたことがある。
 前世のおぼろげな知識でもそういったものを知っている。

 そして中途半端に知ってしまっているからこそちょっとした拒否感を抱いてしまう。
 何処か誰かに頼ればしがらみが生まれる。
 自分が望まぬとも相手がそれを押し付けてきたりもする。

 となれば私のような場合、特定の個人や団体に所属しない方が楽なのではなかろうか。
 何処かに肩入れすれば別方向が不機嫌になる。
 その比重が片方により過ぎれば軋轢になるし最悪構想になりかねない。


「とりあえずは議員や権力者の下につくのは無しかなぁ。どう考えても面倒事があるからねぇ。あ、でもリーフ君の所とは交渉は続けるつもりだよ。交渉は、だけど」
「分かりました。上にはオレから伝えておきます」
「あとはそうだねぇ。とりあえず適当に金を配るのが良さそうなのかねぇ」


 面倒事は避けたいところだけれど引き籠るというのはあまり得策ではなさそう。
 国や権力者たちの興味より研究者たちが乗り気というのは色々と厄介。

 錬金術師の中には物理的に金が足りなくて出来ないと諦めていた者もいるだろう。
 そんなところに私のことが知れ渡り中々に手に入らないとなれば色々と厄介なことになりそう。
 身を隠すより適度に金を流通させた方が安全な気もする。
 権力者たちも金が降って湧けば嫌はないだろうし。

 なので。


「しばらくは旅に出たいなぁ」


 そう言えば異世界に転生して旅もしてこなかったしなぁ。
 異世界転生なのに。

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