6 / 12
6話。おじさん、金塊を積む
しおりを挟むリーフ・オークス少年は我が手に落ちた。
金塊を前にして21歳の少年が抗えるはずもなかった。
というより元々敵対意志が無いので金塊を積まなくとも会話はしてくれるつもりだったらしい。
それに雇い主からも私側についてもよいと言われていたとか。
「下手に国外に逃げられるよりは交渉役を張り付けることで納得したのだと思いますよ」
というのはリーフ少年談。
では金塊を積むことが無駄だったかと言えばそうでもない。
金の錬成が嘘だった場合は無条件で連行されて晒されることになっていたらしい。
混乱を招いたのでその収拾を図るために処罰することも選択肢にあったとか。
流石に処断はないけれどそこそこ重い処分になる予定。
黙秘したり誤魔化したりする場合は色々と面倒なので処断することになったかもとのこと。
混乱を招いた本人なので仕方がない、のだろう。
国的には中途半端にして下手な勘繰りをされても困るのだろう。
中途半端に出し渋っていれば疑わしいという事で連行されたかもしれない。
思い切った私、流石である。
それに遠慮なく金塊を積んだことでリーフ少年がかなり友好的になってくれた。
リーフ少年は天才に片足を突っ込んだ元魔術師。
家庭の事情で魔術に傾倒し日々研究に励んでいたとか。
とある日、実家の研究が失敗し甚大な被害を及ぼした。
その保障や賠償で一家は研究を取り上げられ、リーフ少年はその才能から魔術兵士として徴用されることになった。
彼はいわば借金奴隷。
この世界に奴隷制度はないけれど損害賠償を済ませるまで自由が制限されるので似たようなもの。
そんなリーフ少年にとって文字通り金を生み出せる錬金術師は願ってもない相手。
とりあえず、リーフ少年の実家であるオークス家の賠償金がどれほどかは分からないがリーフ少年の分を程度肩代わりすると伝えたところワンコみたいに懐かれてしまった。
「それでルルートゥさんはこれからどうしたいんですか? 何処かの議員に取り入るなら交渉してきますが」
「議員かぁ。それはあんまり乗り気じゃないね。後ろ盾があることは良いことなんだろうけれど面倒事はなぁ」
リーフ少年によれば後ろ盾になってくれる権力者はより取り見取りらしい。
ロット共和国には貴族がいない。
とはいえ一部の家が権力を掌握していたりするのでそれに近い者がいる。
共和国の上院議員が最たる例でリーフ少年の雇い主もその中の一人。
錬金術師界隈でも先進的な研究では自分を守るために色々と権力争いが繰り広げられると聞く。
私のような雑務をこなすような一般人には縁のない世界なので経験はないが噂程度では聞いたことがある。
前世のおぼろげな知識でもそういったものを知っている。
そして中途半端に知ってしまっているからこそちょっとした拒否感を抱いてしまう。
何処か誰かに頼ればしがらみが生まれる。
自分が望まぬとも相手がそれを押し付けてきたりもする。
となれば私のような場合、特定の個人や団体に所属しない方が楽なのではなかろうか。
何処かに肩入れすれば別方向が不機嫌になる。
その比重が片方により過ぎれば軋轢になるし最悪構想になりかねない。
「とりあえずは議員や権力者の下につくのは無しかなぁ。どう考えても面倒事があるからねぇ。あ、でもリーフ君の所とは交渉は続けるつもりだよ。交渉は、だけど」
「分かりました。上にはオレから伝えておきます」
「あとはそうだねぇ。とりあえず適当に金を配るのが良さそうなのかねぇ」
面倒事は避けたいところだけれど引き籠るというのはあまり得策ではなさそう。
国や権力者たちの興味より研究者たちが乗り気というのは色々と厄介。
錬金術師の中には物理的に金が足りなくて出来ないと諦めていた者もいるだろう。
そんなところに私のことが知れ渡り中々に手に入らないとなれば色々と厄介なことになりそう。
身を隠すより適度に金を流通させた方が安全な気もする。
権力者たちも金が降って湧けば嫌はないだろうし。
なので。
「しばらくは旅に出たいなぁ」
そう言えば異世界に転生して旅もしてこなかったしなぁ。
異世界転生なのに。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる