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10話
しおりを挟むカナン町ではしゃぐこと数日。
色々と見て回り落ち着き、だらだらとした生活を送り始めたころ。
深夜にリーフ君が部屋にやって来た。
リーフ君の顔はいつになく真剣だった。
「ごめんね、リーフ君。そういうつもりではないんだ。本気にしてしまったのなら申し訳ない」
「貴方は本気で何を言っているんですか」
冗談のつもりだったのだけれど叱られてしまった。
怒った顔も可愛いね、ともうちょっとからかおうかと思ったのだけれど、やめた。
あまりやり過ぎるとリーフ君が実力行使で黙らせてきそうなのでちょっと怖い。
そんな日和心を隠しつつリーフ君に真面目に向き合う。
「それで、おじさんに何用かな」
「……どういうつもりなんですか」
「どうって、リーフ君の顔が可愛いのは事実だがあくまで若者を愛でる感覚であってだね」
「それじゃありません、断じて。いや、そうではなくて貴方の目的です。旅がしたいのではなかったんですか? 貴方が旅をしたいというからオレは準備をしたんです!!」
リーフ君のお怒り理由はどうやら私の計画の無さらしい。
私は交渉材料として旅に出たいと言った。
彼らにしてみれば私という金づるを確保するために色々と手配したのだろう。
リーフ君も色々と頑張ったことだろう。
けれど今の私ときたらどうだろう。
一つ目の町に来てそのまま逗留してだらだら。
何かに感動するわけでも次の場所に期待するでもなくだらけ切った生活。
色々と手配や調整した人々からすれば今の私を見て苛立つのだろう。
それについては申し訳ないと思う。
旅に出たいというのは嘘ではないがその場の気分で言ってしまったのも事実。
ただそれは旅に魅力を感じていないという訳ではない。
そもそも発端は金を生み出すだけの道具にされるのが嫌で出奔している。
自由気ままに仕事に追われることの無い生活というのは十分に幸福。
旅に出たいというのはある種の方便。
嘘ではないのだけれどそれ自体が目的ではない。
リーフ君には面白みのない生活かもしれないが私は今の生活こそが目的ともいえる。
しかしそんな面白味のない回答こそがリーフ君にとって面白くないないらしい。
「そうは言ってもねぇ。おじさんにはあまり遊び方が分からないんだよなぁ。ほら私は仕事しかしてなかったからさ」
よくよく考えると私はこの世界についてあまりにも知らなさすぎるなと思う今日この頃。
自分で言っていて少し悲しくなった。
なまじ幼いころから精神が成熟していて生活のために努力をしてきたからだろうか。
あまり趣味というか心躍るような何かがない。
生活を豊かにするための仕事であるはずが仕事のための生活になっていた。
異世界に転生したはずなのに社畜根性のままとは情けない。
いや、寧ろ異世界だからこそともいえるのか。
それはそれとして。
リーフ君にとっては面白みがないかもしれないが私は今の生活に何ら不満がない。
というより満足している。
だから無理に何かをするつもりもない。
「だからって今の生活は不毛過ぎませんか。金を生み出すような立場なんです。何でも思うままじゃないですか」
」「我が儘を言いすぎて行動を強制されても困るしねぇ」
確かに私は我が儘を言える立場ではあるのだろう。
けれど意見を押し通せる立場ではない。
我が儘を言いすぎれば意志を踏みつけられる立場でしかない。
ならば妥協しようと考えるのは可笑しくないだろう。
それにそもそも今の生活に私は満足できている。
だから今のままであればリーフ君たちに協力しても良いと考えている。
必要であれば金の錬成もしよう。
ある程度の無茶ぶりにも応えようとも思っている。
今の自由を保障してくれるなら。
現状は誰にとって悪くない環境ではないだろうか。
それ取り持つ人以外にとっては。
ま、だからリーフ君が不満を言いたくなるのも分からなくもない。
なので少し提案することにした。
「ではリーフ君に旅の楽しさを教えてもらおうかな。私は文句を言わないからさ」
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