我が儘お嬢様。異世界の夢を見る

双葉珠洲

文字の大きさ
9 / 15

しおりを挟む
 馬具をロシェルに任せると私は訓練に付き合ってくれた馬に毛づくろいでお礼を。
 馬によって部位の好き嫌いはあるものの皆が毛づくろいが好き。
 馬の身では自由に身体をかくことが出来ないので仕方がないだろう。

 馬への配慮が終われば私自身の処理。
 手や足の切れたところを魔法師によって治療してもらう。

 今日は大きな怪我はない。
 とはいえ手足に傷が出来過ぎでもある。
 こればかりは道具がないことの影響もあるのだろう。
 競馬というモノが無いので夢の世界のように準備できているわけではない。
 現状は他で使用しているもので代用している。
 競馬用の手袋や靴は早急に考えなければならない。

 幸い魔法があるので怪我の防止は難しくない。
 問題は道具に頼り過ぎないよう公平性のあるモノにしなければならない事。
 そのあたりは関係各所と要相談だろう。

 治療が終われば浴室へ。
 といっても私自ら向かうわけではない。
 私の体力は既に訓練で無くなっており身体を維持するための力も馬への返礼で終わってしまっている。
 なので全ては護衛の方にお任せ。
 護衛に浴室までの移動と全身いたるところの洗浄をお任せだ。

 私を洗浄してくれるのは護衛役のリサ・シェイク。
 ロシェルの曽孫で私と同い年の綺麗な少女。
 リサがロシェルの調教師転身に伴い空いた私の護衛役を引き継いでいる。
 一応貴族令嬢でもあるので他にも多くの護衛はいるのだけれどリサはそば仕えの様な立ち位置。
 今後貴族令嬢として色々としなければならないことがあるのでその時のための要員でもある。

 勿論リサには現時点でも護衛役に適した能力を持っている。


「それにしてもリサは逞しいというか凛々しいというか、綺麗よね」
「な、なんですか急に」
「いや、その凛々しい顔やすらっとした手足が羨ましいわ」


 リサは私と同い年、6歳なのだけれど既に身長は140センチを超えている。
 私は発育が悪いわけではないのだがリサとは頭二つ分ほど違う。

 その恵まれた体格に対して戦争狂の傾向のあるロシェルの教育が加わっている。
 ロシェルの話ではシェイク家親戚筋の同世代の中で最も才能があるという。
 才能は武術や体術に留まらず魔法関連にも有った。
 そこに良くも悪くも英才教育が施されているので6歳時点で並の兵士より既に優れている。
 生まれてくる時代を間違えた、などと恐ろしく失礼な言葉をロシェルは漏らしていた。

 私としては綺麗なリサが時代を間違えたとは思わない。
 寧ろ平和な時代だからこそ格好良く生きられると思う。
 それこそ夢の世界にあったモデルという職業やアイドルと呼ばれるモノにも成れる。

 そして何より背があり鍛えられた体格からしっかりとした騎乗が出来る。


「才能だけではなく努力の積み重ねなのでしょうけれど、羨ましいわ。一度見たけれどリサの馬を追う姿はカッコいいもの。私もいつかはああなれるのかしら」
「お嬢様、洗うのに邪魔ですのであまり動かないでください」
「ホント同い年とは思えないわね。まあ、ぐうたらでだらけきっていた私が悪いのだけれど」
「大人しくしていてください」


 リサはロシェルに色々と鍛えられたので礼儀正しく格好いい。
 整った顔立ちにすらりと伸びた手足に短く整えられた銀髪も相まって貴公子感が強い。
 まだ幼く同性であるはずの私でもその姿をうっとりとしてしまうほど。

 そのリサは護衛役を引き受けた当初は本当に貴公子然としていた。
 仕えているオブライエン家の次期当主相手という事で礼儀正しく一歩引いた大人だった。
 けれどリサも子どもだったのだろう。
 時間が経過し慣れれば対応も崩れる。
 おっかなびっくりと私の身体を洗っていたのは昔の事で今ではかなり雑に扱われている。
 洗い方が雑ということではないのだけれど私に対する配慮がない。
 今だって私の言葉を受け流すし筋肉痛を無視して私の身体を洗浄する。

 まあ、洗われている身でとやかく言える事ではないけれど。

 身体の洗浄が終わると水気をふき取り洋服を着飾る。
 濡れて邪魔ったい髪は魔道具でリサによって乾かされる。
 私としてはリサのように短く整えたいのだけれど貴族令嬢だからという事で止められている。
 リサを懐柔して切ってしまおうとしたのだけれど意外にもリサが最も私の長髪にこだわりを見せた。

 それはおそらくリサも女の子という事なのだろう。
 髪の乾かしついでに弄るのはとても楽しそうだ。
 リサだって髪を伸ばせば見栄えはするだろうに。
 もっとも、ロシェルによって厳しく指導されているのであまり自由がないのだろうけれど。


「そう言えば、リサの方はどうかしら。騎乗訓練の」
「どう、と言われましても。仕事ですのでしっかりとこなしています」
「そうではなくね。あなたほどであれば馬ととても早く駆けられるでしょう」
「……仕事ですので」
「そう。では仕事として聞くけれど何か欲しい道具などはないかしら。私は見ての通り手足を痛めるから手袋や靴を新調したいのだけれど」
「手袋は確かに改良すべきですね。あとは……」


 私の髪をとき自由に結うリサは道具の改善点を饒舌に語る。
 それは私などが簡単に浮かぶようなものだけではなく実用的に思えることまで。
 知恵の足りない私には構造の話は分からなかったけれど凄いことは分かった。
 たぶん。
 道具の改善に関してはリサの助力も必要だろう。

 そんなことを考えながら私はリサのストレス発散に髪の毛を貸すのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...