8 / 24
引き裂きドール
2
しおりを挟む
家へ帰るまでの間に、初はパトカーと擦れ違っていた。そういえばと、救急車のサイレンも聞いたことを少女は思い出す。どこかで事故でもあったのだろうかと、ぼんやり何の気もなしに考えた。
彼女が部屋に戻ると、すっかり暗くなっていた。冬に比べると日は長くなってきていたが、まだまだ日が沈むのは早い。初は部屋の灯りを点けて、かなでを抱き寄せた。
「ただいまー、かなで。ぎゅーっ」
ふふっと頬を緩ませながら、腕の中のかなでを感じる少女。沸き起こっていたはずの怒りが、いつのまにか消えていることに彼女は気付いた。
「かなでの顔を見たからかな……? やっぱり、かなではわたしの癒しだよ」
言いながら、初はよしよしと頭を撫で、思う存分かなでを感じる。
「あー、宿題あったんだっけ?」
ふいに脳裏を掠めた数学のプリントの存在に、気持ちが一気にだだ下がる中学生。うへえと感情が口から漏れたところで、渋々通学カバンを漁り始めた。
「あー、やっぱりあったー」
実はもう埋まっていたり……なんて奇跡が起こっていることはなく、配られたままのそれを手に、少女は項垂れた。どうして、脈絡もなく今思い出してしまったのかと、後悔すらし始めている。
しかし、忘れたままで怒られたり、注目されたりするのも嫌だった。仕方がない。今のうちに済ませてしまおうと、初は自身を奮い立たせる。
「よし、と」
机に向かい、初はかなでを脇に置いた。かなでが見守ってくれている。かなでが、自分を、自分だけを応援してくれている。
そう思うだけで、少女は心が浮き立った。
「かなで、頑張るね。応援しててね」
可愛らしい顔に見つめられて、やる気に満ちる初。問題に向かいつつ、時々かなでを見るということを繰り返し、モチベーションの高いままに、彼女は見事、課題を終わらせた。
「んーっ! 終わったー!」
伸びをして、ちらりとかなでを見る。まるで一緒に勉強をしたみたいで、初は嬉しくなった。
「えへへ……」
にこにこしながら、可愛い顔を見つめる少女。いつまでも見ていられる顔には、飽きなど一生こないだろうと、初は本気で思っている。
「後は、ごろごろしてよーっと」
初は立ち上がると、ベッド脇へかなでを連れて行き、定位置にそっと置く。寝相に自信がないので、添い寝はしないことにしていた。
彼女にとっては、物理的な距離なんて問題ではないのだ。凛とした表情を見るだけで、初の胸は高鳴る。
「何だか疲れちゃったな……ゆっくりしていようね、かなで。……好き。大好きだよ……」
重くなる瞼を閉じる初。細くなる視界の中で、かなでが穏やかに少女を見つめていた。
彼女が部屋に戻ると、すっかり暗くなっていた。冬に比べると日は長くなってきていたが、まだまだ日が沈むのは早い。初は部屋の灯りを点けて、かなでを抱き寄せた。
「ただいまー、かなで。ぎゅーっ」
ふふっと頬を緩ませながら、腕の中のかなでを感じる少女。沸き起こっていたはずの怒りが、いつのまにか消えていることに彼女は気付いた。
「かなでの顔を見たからかな……? やっぱり、かなではわたしの癒しだよ」
言いながら、初はよしよしと頭を撫で、思う存分かなでを感じる。
「あー、宿題あったんだっけ?」
ふいに脳裏を掠めた数学のプリントの存在に、気持ちが一気にだだ下がる中学生。うへえと感情が口から漏れたところで、渋々通学カバンを漁り始めた。
「あー、やっぱりあったー」
実はもう埋まっていたり……なんて奇跡が起こっていることはなく、配られたままのそれを手に、少女は項垂れた。どうして、脈絡もなく今思い出してしまったのかと、後悔すらし始めている。
しかし、忘れたままで怒られたり、注目されたりするのも嫌だった。仕方がない。今のうちに済ませてしまおうと、初は自身を奮い立たせる。
「よし、と」
机に向かい、初はかなでを脇に置いた。かなでが見守ってくれている。かなでが、自分を、自分だけを応援してくれている。
そう思うだけで、少女は心が浮き立った。
「かなで、頑張るね。応援しててね」
可愛らしい顔に見つめられて、やる気に満ちる初。問題に向かいつつ、時々かなでを見るということを繰り返し、モチベーションの高いままに、彼女は見事、課題を終わらせた。
「んーっ! 終わったー!」
伸びをして、ちらりとかなでを見る。まるで一緒に勉強をしたみたいで、初は嬉しくなった。
「えへへ……」
にこにこしながら、可愛い顔を見つめる少女。いつまでも見ていられる顔には、飽きなど一生こないだろうと、初は本気で思っている。
「後は、ごろごろしてよーっと」
初は立ち上がると、ベッド脇へかなでを連れて行き、定位置にそっと置く。寝相に自信がないので、添い寝はしないことにしていた。
彼女にとっては、物理的な距離なんて問題ではないのだ。凛とした表情を見るだけで、初の胸は高鳴る。
「何だか疲れちゃったな……ゆっくりしていようね、かなで。……好き。大好きだよ……」
重くなる瞼を閉じる初。細くなる視界の中で、かなでが穏やかに少女を見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】百怪
アンミン
ホラー
【PV数100万突破】
第9回ネット小説大賞、一次選考通過、
第11回ネット小説大賞、一次選考通過、
マンガBANG×エイベックス・ピクチャーズ
第一回WEB小説大賞一次選考通過作品です。
百物語系のお話。
怖くない話の短編がメインです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる