ツギハギドール

広茂実理

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キューピッドドール

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 彼ら「でこぼこコンビ」がサイト主であるかどうかは、少女の力では調べようがない。一介の中学生である斉藤初さいとうういには、知識も権力だって、もちろんありはしない。ただ単純に、彼らの口から肯定を得る――それしか彼女には、確かめる方法はない。
 ならば、今は他の視点から考えてみることにしよう――初は、そう決めた。
 まず、彼らは。特に「近藤こんどう」という男は、何者か。
 今のところ、沖田奏おきたかなでの兄、沖田つとむの知り合いで、二人で行動するような間柄だということがわかっている。背は低いが、綺麗な顔をしていて、孟のパーソナルスペースへの侵入を、当たり前のように許されているほど、仲が良い。口調も互いに砕けていたことから、同等の立場――即ち、友人関係にあると初は推測していた。
「でもなあ……お兄さんとすら、会話したこともないのに……」
 初はうーんと唸りながら、頭の中でシミュレーションをしてみることにした。結果は、惨敗だった。
「突然話し掛けて『お二人は、どういったご関係ですか?』なんて聞いた暁には、百発百中、不審がられる。無理だ! 無理無理。おかしなことこの上ないって! どうしてそんな質問を受けなくちゃならないのかって、訝しがるに違いないよー。ましてや、顔を見たことはあれど、一度も口を利いたことがないし。怪しすぎる。いや、もう怪しまれない方がおかしいって。それに、たとえ友達だとわかったところで、何だって言うんだろう」
 二人の目的が同じだとは、限らない。片方が、相手側に嘘を吐いている可能性だってある。初が見た感じでは、どちらかが従わせられているような素振りはなかったが……。
「こうなったら、お兄さんのいない時を見計らうしかないか」
 少しでも知っているからこそ、やりにくいと感じるのではないだろうか。わからないが、沖田孟が初のことを覚えているという可能性だって、ゼロではない。
 だったら、同じく不審がられるのならば、まったく知らない人の方がやりやすいだろう。
 こうして初は、ターゲットを近藤と、そして自身のクラスメイトに絞ることにした。
 もしも、本当に彼が今回の事件のことを調べているのであれば、きっとまた、どこか近いうちに遭遇するだろう。おそらく、彼らは変わらず二人で行動しているのだろうとは思うが、いつまでもペアでくっついているということは、ありえないはずだ。
「……あの帰りの電車の中で、予想通りお兄さんは、わたしと同じ最寄駅で降りた。その時、あの人は降りなかった。であれば、ここら辺の地元民ではあるけど、彼の最寄り駅は、近くても一つ隣ってことになる。中学までは別々で、高校から友人になったか。それとも、最近引っ越してきたかどうかはわからないけど、二人が同じ高校に通う生徒ってことだけは、わかってる」
 初が自信満々に断言する理由は、単純明快。二人に聞く必要もない。何故なら、彼らは同じ制服を着ていたからだ。
 引き裂きドール事件の現場で遭遇した時、初は学校帰りだった。彼らも同じくそうだったのだろう。新入生らしく、まだ真新しい綺麗な制服を身に付けていた。
 もちろん、コスプレ趣味でないことを願うばかりではある。
 ともかく、二人でいるところに遭遇したとしても、その後に尾行なり何なりすれば、初は近藤と二人きりになれるという確証を、たやすく得ることができた。
「じゃあ、次に考えるのはクラスの人……あの時、現場にいた人たち……」
 一旦、青年コンビのことは置いておいて、初は新たなターゲットの姿を思い浮かべる。あの、すべての始まりの事故現場で、ただただ立ち竦んでいたクラスメイトたちだ。普段は、奏の周りを親衛隊のごとく取り囲んでおきながら、実際は何の役にも立たなかったと初が評する、無個性たちである。
「いつもは、うろちょろして、ぺちゃくちゃして、無駄に動き回って邪魔なくせに……」
 小学生の頃から、ほとんど変わらないメンバー。彼女たちは、決まって奏を中心に行動した。彼女たちで徒党を組んで、初を奏に近付けさせまいと企んでいるのではないかと疑うくらい、初がそばに寄ることを常に阻まれていた。
 いじめられているのかと初は思っていたが、ある日そうではないことがわかった。彼女たちには、初の存在など無視以前に、本当に視界に入らないらしい。故意で省かれる方がマシだと思うくらいに、斉藤初は影が薄く、存在感がなかった。
 初は、ただただグループの壁に阻まれて奏に近付けないだけの、小声で小柄な、小心者だったのだ。
 そんな彼女たちは、轢かれそうになっていた子どもの親同様に、あの運命の瞬間、石化していた。いざという時、棒立ちだったのだ。あまつさえ彼女たちは、その一秒を争う現場で、またしても初と奏を遮る壁と成り果てていた。
 声も出せずに、呆然と一点を見つめる障害物たち――安全圏で微動だにすることなく、しばらくしてからうるさく騒ぎ立てパニックになった、耳障りな人たち。
 現場を悪戯に混乱させ、無傷なくせに救急隊員の世話になり、事態の収束を遅らせた、はた迷惑な人間たち。
 とまあ、初の彼女たちに対する評価は元々が低かったために、現在は遥か地の底へと落ちてしまうほどの、最低ランクだった。
 とはいえ、百歩譲って、突然のことだ。動けないのは、仕方ないだろう。ほとんどの人たちが、頭が真っ白になるに違いないとも、初は思えている。
 初自身、奏ではなかったら。飛び出したのが沖田奏ではなかったら、あのまま突っ立って傍観していたかもしれない。風景の一部と化していたかもしれない。
 だから、その点に関しては、初がとやかく言って責め立てることではないだろう。
 だけど、その後だ。周りが、無理矢理にでも日常に戻りつつあった、あの悲しみの中。なんと彼女たちは、事件を嬉々として語り始めたのだ。
 顔で、声で悲しみつつも、その表情には、隠しきれない非日常を体験した興奮が、見え隠れしていた。
 初は、目や耳を疑った。自身の頭がおかしくなったのかとさえ、思った。
 だが、違った。彼女たちは、怖がっている風で、悲しんでいる風で、目線と声のトーンを落としながら、話したくないと言ったその口で、次の瞬間にはベラベラと詳細を語り出す。
 ようは、フリなのだ。女優なのだ、彼女たちは。
 彼女たちが沖田奏に向けていた友情は、その程度だったのだ。
 確かに悲しいのだろう。驚いたし、つらくも感じたのだろう。
 だけど、今ではとうに切り替えて、悲劇の美談の語り手を、自ら買って出ている。それも、壮大な物語であるかのように、自分たちが第二のヒロインと成り果てた、盛りに盛ったストーリーで。
「誰にも、頼まれていないのに……」
 そうして、奏の親友を騙っている。遺された自分たちが、彼女の夢と遺志を継ぎますと言わんばかりの捏造ぶりで、大人たちを騙している。
「……何もしなかったくせに。あたかも自分たちは、奏ちゃんというヒーローに守ってもらったヒロインを気取って、ドラマ性のあるお姫様ポジションに陶酔しているだけ。してもいない怪我を作り出してまで……」
 そう――彼女たちは、初に言わせれば「ただの風景のくせに無理矢理ストーリーに割り込んできて、メインメンバーの座を掻っ攫おうとしている勘違い野郎たち」だった。
「未来があることに胡座をかいて、それが蜃気楼とも疑わない愚か者……。だから、わたしは彼女たちを許せない」
 何もしなかった挙句、好き勝手にあることないことを語りに騙り尽くして。嘘と見栄で虚飾し、自分たちの見栄えのために、奏という悲劇を利用し、彼女を辱めるのだ。
 おかしい。おかしいおかしい――初の中で、何かがじわじわと広がっていく。心を、染め上げるように支配していく。
 彼女たちの行動は、おかしい。そうだ。間違っている。
 こんなこと、許していいはずがない。許されるはずがない。
「だから、わたしがやるんだ……。動けない奏ちゃんは、さぞ悔しいだろう。助けたのは子どもなのに、いつのまにかクラスメイトを助けたヒーローにされて、好き勝手に辱められる捏造のオンパレード。おまけに、未だに自身の死を引き合いに出されて、心中穏やかであるはずがない。……早く、解放してあげなくちゃ。そのためにもまずは、嘘偽りのパレードを繰り広げる元凶を止めないとならない……!」
 だからこそ、初にとって次のターゲットは彼女たちであるべきだったし、彼女たち以外にはありえなかった。
「問題は、少し人数が多いことかな……」
 先の彼らのように、今回は一人や二人ではない。いつもグループで行動しているため、狙うタイミングが限られてしまう。
「とはいえ、十人もいるわけじゃないし。焦らず、一人ずつ狙えば、何とかなるはずだよね」
 そうして、ターゲットであるメンバーの顔を一人一人思い浮かべようとして、しかし少女は、そこではたと思い至る。
「あれ……?」
 固まるとは、まさにこのこと。初は必死に記憶を辿るも、どうしたことか。誰一人、名前も顔も思い出せなかったのだ。
 まるで、霞か靄か。霧がかかったかのように、はっきりとした人数さえ朧げだ。
「えーっと、待って……あれ?」
 誰にも急かされてはいないのだが、初は頭を抱えながら瞠目し、焦っていた。
 毎日のように顔を合わせている、クラスメイト。事故後も彼女たちは、変わらずいつものメンバーでグループを形成していた。初はその様子を、間違いなく見ている。
 それだというのに、どうして突然思い出せなくなったのか――
「あ、そっか……」
 彼女の口から漏れたのは、間の抜けた声。やれやれと肩を落とし、至った事実に自嘲する。
「思い出せないんじゃない。。だから、当たり前のことだったんだ。覚えていないものは、思い出せない。そうだそうだ。わたし、は、んだった」
 良かったと、ほっと胸を撫で下ろす。突然、頭がおかしくなったわけではなかったんだ。
「嫌だなあ、もう。焦っちゃった」
 あははっと苦笑して、初は小学校の卒業アルバムを取り出した。名前も顔も覚えていないけれど、見ればわかるからだ。
「えーっと……どこだ? あ、あったあった。髪の長いこの子と、常にポニーテールのこの子と、それから……内股のこっちの子と……あれ? まだいるはず……あ、隣のクラスのこの子だ。これで、全員、かな……?」
 アルバムを捲りながら、対象となる子の顔写真を探す。そして、初は見つけた名前のフルネームを、次々にメモ用紙へと書き出した。こうして改めて見ると、ちゃんとわかるものなのだと、彼女は自身に感心さえする。
 だが、やはり新発見もたくさんあった。
「えっ、この人、こんな名前だったんだ……あれ? この子って、こんなに目つき鋭かったっけ?」
 そもそもが話すことすらないので、もちろん呼びかけることもない。そのためか、初は彼女たちの名前を「聞いたことがある」程度にしか認識できないでいた。もちろん、細かな身体的特徴も然りである。
「んん? 何、この名前。読めないんだけど……あ、あああー、だからあんなにキラキラしたあだ名で呼ばれてるんだ……なるほどね。そういうことね」
 長年抱いていた疑問も解決したところで、ふとこんなページがあったかと、初は首を傾げた。
「んー? まあいっか……」
 ペラペラとアルバムを捲り、きょろきょろとターゲットを探す初。これで全員のはずだが、万が一にも漏れてはいないだろうか。
「あ、奏ちゃんだ。こっちにもいる。真顔でクールだ。格好いい。この端っこのは、ぼーっとしてる。可愛い――って、わたし、さっきからターゲットじゃなくて、奏ちゃんばっかり探しちゃってる!」
 それは、無意識だった。ターゲットを確認するために、わざわざ重たい卒業アルバムを取り出してきたはずなのに、初の視線は、いつのまにか奏ばかりを捉えていた。
「あー、そういうことね。知らないページは、奏ちゃんがいないから、見てすらいなかったってことね」
 なんとわかりやすいことか。さすがの初でも、淡い苦笑が漏れた。「ブレないな。さすがわたし、徹底している」なんてことさえ呟いている。
 とはいえ――
「ふ、ふふ……ふふふふふ……もう、奏ちゃんって、本当に目立つよね……可愛くて、綺麗で、格好良くて、キラキラしてて、本当にアイドルみたい……ううん、そこら辺のアイドルより、ずっとずーっと、可愛いよね……だって、探してもいないのに、勝手に見つけちゃうよ。奏ちゃんの方から、出てきちゃうんだよ……これは、あれかな? 奏ちゃんが、わたしに『ここにいるよ。見つけて』って言ってくれているのかな? えー、もう何それ! 可愛すぎるんですけど! クールなのに、構ってほしいの? 見つけてとか、最高に可愛すぎる! そんなの、全力で見つけるに決まってるし、完全コンプリートするし! ――もちろんだよ。任せて、奏ちゃん!」
 頬がにやけるのを自覚しながら、初はうっとりと弾ける笑顔の写真を眺める。
「可愛い……本当に可愛い。可愛すぎ。ずっと見ていられちゃうよ……あー、早く次の行動に移らなきゃいけないのに……無理。無理無理無理無理。本当に無理。奏ちゃんから目を離さないといけないなんて、本当に拷問だよ……。あー、もう罪だよね、奏ちゃんの可愛さって。尊い……写真だけでも、尊さが溢れ出てる……。あ、ここにも映ってる。この写真、わたしと一緒に写ってるんだよね。わたし、端っこだけど。ふふ、一緒の写真に写ってるなんて、本当に最高……しかも、それがアルバムに載っちゃってるなんて、やばいよね。本当にやばい。ああ、どうしよう……もう考えるのは明日からにして、今日は奏ちゃんのことだけで頭をいっぱいにしたいな……」
 ペラペラとアルバムを捲りながら、ほうと溜息を吐く。そんな理想的な時間が過ごせたら、どんなに良いだろうか。
「――って、何それ。本当に幸せすぎる……! 天国だよ。死ねる。尊死する。それ、何ていうご褒美ですかー?」
 身悶えながら、初は息を荒げる。しかしと、誘惑を打ち払うように、首を思い切り横に振った。
「あーもう、だめだめ。それは、全部終わってからじゃないと。今は、まだだよ。そうだよね。まだ早いよね。全部ちゃんと終わってから、わたしと奏ちゃんの楽園を作るんだから。だから、今はまだおあずけ。……寂しいしつらいけど、仕方ない……奏ちゃんも寂しいだろうけど、待っててくれるよね? わたし、頑張るからね。一緒に乗り越えようね。またわたしたちが一緒にいられるように、今度は誰にも邪魔されず、本当の幸せを掴めるように、夢を叶えようね。だから、それまで我慢しててね。わたしも、我慢を頑張るから。もう少しだから、応援しててくれるかな? 奏ちゃんが見ていてくれると思うだけで、わたし頑張れるから」
 バタンとやけに装丁の分厚いアルバムを閉じて、初はしっかりと前を見据える。そこには、先程書き連ねた、四名の名前が記されたメモ用紙があった。
「まずは、目の前のことから一つ一つ、確実に処理していかないとね。そうだよね、奏ちゃん」
 にこりと空想の奏に微笑みかけて、初はアルバムを元あった本棚へと、しまい込む。顔は一応、覚えた。名前とも一致させた。念のため、簡単な特徴もメモに記した。
 ターゲットは、全員で四人。初のなけなしの記憶が正しければ、幸いにも全員が同じクラスだ。
四人ともが学校から見て同じ方向に住んでいて、今のところ四人揃って、学校から帰宅する。そのうち部活動が始まったり、塾に通いだす子も出てきたりするだろうから、狙うなら今のうちだと初は思った。
「部活帰りで全然違う人と一緒になっても困るし、塾通いでまったく違う方向に行かれても困るし、まだ検討がつきやすくて、計画を立てやすい、今のうちに行動した方がいいに決まってるよね」
 やはり、行動のパターンが読めているうちに、実行するべきだ。それにこれ以上、彼女らによる大根役者ぶりは、見ていられない。見るに耐えない。目が腐る。初は、一刻も早く彼女たちに制裁を加えたかった。
「待っててね、奏ちゃん。不快な因子は、できるだけ早く始末するからね」
 にこりと微笑みながら、不気味なことを言い放つ少女。「そうだ」とふいにパンと音を立てて、胸の前で両手を合わせ始めた。
「そうと決まれば、まずは尾行からだね。明日の帰りにでも四人の後をつけて、誰がどこに住んでいるのかを把握しておかないと。尾行の経験はないけれど、きっと大丈夫。だって、目の前に立っても気付かれないくらい、わたしには存在感がないらしいから。……知った時は、さすがにショックだったけど、こういう時に役に立つのなら、これはこれでアリかもしれない」
 ぐっと拳を作って、自身を鼓舞し始める初。その理由は、こうだった。

 ――だって、奏ちゃんの役に立てるんだもん!

 このポジティブ思考にはまれば、初にとっては影が薄いなんて、それこそ知ったことではない。本人が好きでそうしているわけでは、もちろんない。だが、活躍させられる場面があるのなら、それは短所ではなくなるということだと自負していた。
「ありがとう、奏ちゃん。奏ちゃんのおかげで、わたしの嫌いなコンプレックスを好きになってあげられそうだよ。ありがとう、奏ちゃん。本当に、ありがとう……」
 今まで惨めな思いをしていたけれど、これからはそんなこともなくなる。
 すべては、彼女のおかげだ。
「人の短所やコンプレックスまで掬い上げてくれるなんて、本当に奏ちゃんって、天使だよね。ううん、天使どころか女神様だ。……他の人には、絶対に真似できないよ。やっぱり、奏ちゃんは特別なんだ……。すごいよ。本当にすごい、奏ちゃん。……そんな奏ちゃんの特別でいられるなんて、本当に名誉なことだよね。こんなに嬉しいことはないよ」
 目を閉じて、しみじみと感じ入る。奏を思うだけで、初は自身まで崇高な人間に近付けるような錯覚を覚えてしまうと、怖くさえあった。
「奏ちゃんは、勘違いさせてくれる。幸福感に浸らせてもらえる。自分なんて、そんな価値があるわけないって、ちゃんとわかっているけど。だけど、こんな自分でも、奏ちゃんを思っている時だけは、生きてていいんだって思わせてくれる」
 それが初には心地よくて、面映くて、いつまでも浸っていたくなる。
 だけど――
「だめだ。すぐ脱線しちゃう。気が付くと、奏ちゃんのことばっかり考えちゃうんだから。……わたしって、本当に奏ちゃんのことが好きだよね。今は、ちゃんと真面目に考えないといけないのに……。でも、仕方ないよね。好きなんだから」
 淡く苦笑して、初はクスクスと肩を揺らす。ふうと息を吐いて、顔を上げた。
「さーて、かなでー」
 んーと伸びをしながら、初はそばにいた愛しいかなでを抱き寄せる。ぎゅーっと、いつものように優しく抱き締めて、よしよしと頭を撫でた。
「可愛いね。可愛い可愛い。そばにいてくれて、ありがとう。元気をくれて、ありがとう。見つかってくれて、ありがとう。幸せをくれて、ありがとう。……大好きだよ。好き好き、大好き。愛してる。……だから、これからもちゃんと、そばで見守っててね。わたしのことを、応援しててね。今度こそ、頑張るから。横取りされる前に、ちゃんとやるから。だから、見ててね。約束だよ」
 にこりと愛しいドールに微笑みかけて、初は彼女をそっと下ろした。乱れてしまった髪やドレスを整えて、いつもの完璧な彼女に仕上げる。
「そろそろ、明日に備えて寝なきゃ。おやすみ、かなで」
 そして、初は眠りに就く。微笑んでくれているかなでを、瞼の裏に映しながら……。
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