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キューピッドドール
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「とまあ、徹底的はいいんだけど、慎重さも大事だよね」
翌日。初は学校に向かいながら、計画を練っていた。何も、全員を学校帰りに襲う必要はないわけだ。タイミングやチャンス。それらがあれば、即実行に移せばいい。
とはいえ、事はそう簡単にはいかない。そのため、何通りものパターンや計画を、いくつも立てておく必要がある。現実がそのどれかに当てはまれば、すぐさま行動――いざという時しくじらないために、綿密にしておかなければ。
だからこそ、今が大事だ。慎重に観察を続け、用意を周到にし、細かな情報を得て筋書きを立てていく。
「わたしは、奏ちゃんの名代だ。奏ちゃんが関わっている以上、下手なことをして泥を塗るわけにはいかない。何故ならば、奏ちゃんならば、必ず完璧に遂行するはずだからだ。思考に思考を重ねて、策を練って、妥協しないはずだ。だからわたしも、そうする。奏ちゃんと同じことができなくても、同じようにと意識をして考えることならできるはずだから」
斉藤初だったら、ではない。沖田奏だったらと、常に意識をして行動するべきだと、初は自分を律した。それが彼女の理想であり、沖田奏亡き今、初が取るべき最善の選択であり行動であると、初はそう信じている。
「四人に共通すること……関心のあること……思い出せ。彼女たちは、いつも何の話をしていた? 何に花を咲かせていた?」
昨日、苛立ちの中で聞こえてきていた会話。休み時間を、フルに潰してまで話していた内容。帰り道ですら、途切れなかった会話。彼女たちは、いったい何をそんなに話していたのか。何に盛り上がっていたのか。時々、耳を貫くような黄色い声を上げていたのは、何の話をしている時だったか。初は、記憶の糸を手繰り寄せる。……思い出せ。思い出すんだ。聞こうとしていなくても聞こえてきていた、煩い声。勝手に耳に入ってきていた話題を。途切れ途切れの、浮かれた話を。
思い出すんだ――
「…………テスト? 宿題? 授業? 先生? 仮入部期間の終了? 大型連休? 昨夜のテレビ? アイドル? ……いや、確かに話題には上がっていたけど、それより――」
もっと、彼女たちを沸かせたもの――
「――格好いい先輩?」
この学校の三年生に、モデルのスカウトを断ったとかいう、高身長イケメンが在籍しているらしい。確か、彼女たちはその生徒の話を延々としていた。
何でも、当人はバスケ部に所属しているらしく、彼女たちはバスケ部のマネージャーになるか、迷っているのだそうだ。
しかし、マネージャーになれたところで、彼目当ての女の子はたくさんいる。だからこそ、その中の一人として埋もれたくはないのだろう。何か良い方法はないかと、頭を悩ませているらしかった。
とはいえ、四人が四人ともイケメン狙いというわけではないらしい。そのうちの一人には彼氏がいるし、もう一人は別に好きな人がいるそうだ。だが恋人がいたとしても、恋の悩みは尽きないらしい。四人が、それぞれ恋愛事で何らかの悩みを抱えているのは、明白だった。
とまあ、ここで終われば、よくある中学生の恋愛事情。青春の悩みの一つである。だが、彼女たちはあろうことか、悲劇のヒロイン話をその恋愛事に持ち出したのだ。他の人より目立とうと、ヒロインになろうとしたのである。
彼女たちが恋する相手には何の恨みもないが、ここは利用させてもらうとしよう。
それぞれが、奏以上の苦しみを味わうために――
「そうと決まれば、早速行動あるのみだね」
初は、通学路を急いだ。こんなにも早く学校へ行きたいと願ったのは、生まれて初めてのことだった。
翌日。初は学校に向かいながら、計画を練っていた。何も、全員を学校帰りに襲う必要はないわけだ。タイミングやチャンス。それらがあれば、即実行に移せばいい。
とはいえ、事はそう簡単にはいかない。そのため、何通りものパターンや計画を、いくつも立てておく必要がある。現実がそのどれかに当てはまれば、すぐさま行動――いざという時しくじらないために、綿密にしておかなければ。
だからこそ、今が大事だ。慎重に観察を続け、用意を周到にし、細かな情報を得て筋書きを立てていく。
「わたしは、奏ちゃんの名代だ。奏ちゃんが関わっている以上、下手なことをして泥を塗るわけにはいかない。何故ならば、奏ちゃんならば、必ず完璧に遂行するはずだからだ。思考に思考を重ねて、策を練って、妥協しないはずだ。だからわたしも、そうする。奏ちゃんと同じことができなくても、同じようにと意識をして考えることならできるはずだから」
斉藤初だったら、ではない。沖田奏だったらと、常に意識をして行動するべきだと、初は自分を律した。それが彼女の理想であり、沖田奏亡き今、初が取るべき最善の選択であり行動であると、初はそう信じている。
「四人に共通すること……関心のあること……思い出せ。彼女たちは、いつも何の話をしていた? 何に花を咲かせていた?」
昨日、苛立ちの中で聞こえてきていた会話。休み時間を、フルに潰してまで話していた内容。帰り道ですら、途切れなかった会話。彼女たちは、いったい何をそんなに話していたのか。何に盛り上がっていたのか。時々、耳を貫くような黄色い声を上げていたのは、何の話をしている時だったか。初は、記憶の糸を手繰り寄せる。……思い出せ。思い出すんだ。聞こうとしていなくても聞こえてきていた、煩い声。勝手に耳に入ってきていた話題を。途切れ途切れの、浮かれた話を。
思い出すんだ――
「…………テスト? 宿題? 授業? 先生? 仮入部期間の終了? 大型連休? 昨夜のテレビ? アイドル? ……いや、確かに話題には上がっていたけど、それより――」
もっと、彼女たちを沸かせたもの――
「――格好いい先輩?」
この学校の三年生に、モデルのスカウトを断ったとかいう、高身長イケメンが在籍しているらしい。確か、彼女たちはその生徒の話を延々としていた。
何でも、当人はバスケ部に所属しているらしく、彼女たちはバスケ部のマネージャーになるか、迷っているのだそうだ。
しかし、マネージャーになれたところで、彼目当ての女の子はたくさんいる。だからこそ、その中の一人として埋もれたくはないのだろう。何か良い方法はないかと、頭を悩ませているらしかった。
とはいえ、四人が四人ともイケメン狙いというわけではないらしい。そのうちの一人には彼氏がいるし、もう一人は別に好きな人がいるそうだ。だが恋人がいたとしても、恋の悩みは尽きないらしい。四人が、それぞれ恋愛事で何らかの悩みを抱えているのは、明白だった。
とまあ、ここで終われば、よくある中学生の恋愛事情。青春の悩みの一つである。だが、彼女たちはあろうことか、悲劇のヒロイン話をその恋愛事に持ち出したのだ。他の人より目立とうと、ヒロインになろうとしたのである。
彼女たちが恋する相手には何の恨みもないが、ここは利用させてもらうとしよう。
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