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第1章 赤の色
第25話 リーフェの色
しおりを挟む「私はここイニティウムの生まれではなく、リュイという国の出身です。ショウさんはわからないかもしれませんけど、ここよりず~っと西にあると思ってください」
「はぁ・・・」
私は母の顔を知りません、そんな出だしでリーフェは自分の過去を語り出した。
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「おと~しゃん、ごはんまだぁ~」
「あともう少しだぞ、リーフェ」
リーフェ4歳
『母は私が生まれた時にこの世を去りました。父は母の亡くなった後敢えてエルフの多いリュイの中心地ではなく、国の外れにある田舎で私を育てました』
『そういえば、エルフの容姿ってどうなってるんです?』
『小さい頃は人間と同じように育ちますが、成人を迎える頃から成長が止まって、その容姿で長く生きることなります。ですので死ぬ時も若い姿のままなんです』
リーフェ6歳
「おとうさん、がっこうにいってきますっ!」
「あぁ、いっぱい勉強しろよっ」
『学校なんてあったんですか?』
『えぇ、住んでいた村に学のある住民がやっているまるでボランティアのようなところでしたが、おかげで読み書きと計算に苦労はしませんでした。父は冒険者の身でありながら私を育てるので必死でした、あまり強い人とは言えませんでしたがそれでもBランク冒険者として頑張っている姿は今でも鮮明に覚えています』
リーフェ8歳
「ヒグッ、グスン」
「リーフェ、どうしたんだ?」
「ヒグッ・・・みんなが、ズズッ・・・みみながオバケって・・・ズビッ」
「う~ん・・・それじゃあ、今度の休みにお父さんがリーフェに特別なことを教えてあげよう!」
「グスッ・・・とくべつなこと?・・・ズズッ・・・」
「そう、特別なことだ」
『私の住んでいた村には人族、獣人族などのいろいろな種族の人たちが住んでいて、エルフは中でもとても珍しい存在でよくいじめの対象になっていました』
『はぁ・・・』
『でも、このいじめとかが無ければ他の種族と関わろうとなんて思いませんでしたし、今思えばこのためにわたしをわざわざ田舎で育てたのかなぁって思ったりするんです』
『特別なことって・・・なんですか』
『それはですねぇ・・・』
リーフェ12歳
「お父さんっ!新しい魔法が使えるようになったよっ!」
「おっ!どれどれ見してみ?」
「うんっ!え~っと『我が風よ、その吐息で地を撫でよ、ファルクスっ!』」
フォン!
「おぉ~、これなら草刈りはいらないな」
「うんっ!また新しい魔法教えてっ!」
『魔法ですか』
『えぇ、父はもともと魔法を扱うのが得意な人でしたし、私に魔法を教えてくれたおかげでいじめてた人も私を一目置いてくれるようになって・・・、今でも感謝しています』
『・・・その後どうなったんです?』
リーフェ24歳
「お父さんっ!私も冒険者になりたいっ!」
「リーフェ・・・、危険な仕事なんだぞ?俺はギルド職員を目指して欲しい・・・」
「私は自分で魔物を狩って、人の役に立つ仕事がしたいのっ!」
「・・・・はぁ、わかった、誓約書を持ってきなさい」
「うんっ!ありがとうっ!」
『父は私が冒険者になることに反対でした、その意味はこの後に知ることになりますが・・・』
リーフェ113歳
「リーフェっ!」
「うんっ!」
「いやぁ~、アルステイン親子の連携プレーには追いつけねぇな」
「・・・まぁ」
「えへへ、ありがとうおじさん」
『その頃の私たちは、どんな魔物が来てもまるで敵なしといった感じでした。父はそのことに不安を覚えていたようですが、私は当時有頂天で只々魔物を狩っていただけ・・・おそらく天罰が下ったんでしょう』
「ん?なんだこの地鳴りは・・・」
「おっ、おいっあれっ!」
「!ワイバーン・・・どうしてこんなとこに」
「と、とにかくさっさと逃げるぞっ!」
「あぁ・・・リーフェっ!逃げるぞっ!」
「いやっ!」
「っ!リーフェっ!」
「だって、いつまで立っても私を一人前に見てくれないじゃないっ!」
『私は単純に父に認められたかっただけでした、一人では戦いもさせてもらえず、いつも父が一緒でいつまでも子供扱いする父が許せなくて、ただただ自由になりたいと・・・駄々を捏ねる子供でした』
「おいおい、親子ゲンカしてる場合かっ!さっさと行くぞっ!・・・パテルッ!」
「・・・俺は残る」
「ッ!・・・てめぇ、絶対あの頑固娘連れて帰ってこいっ」
「あぁ・・・」
「お父さんも逃げてっ」
「いや・・・俺はお前の戦いを見届けるだけだ、絶対手は出さない」
「わかった・・・約束よっ!」
『意気揚々にワイバーンに向かったのはいいのですが・・・』
『ワイバーンってなんです?』
『大きさがこの家の二倍はある龍のことです、単独での討伐はまさに自殺行為でした。それでも子供扱いされたくなくて、無謀なことをしました』
『それでどうなったんですか?』
『それは・・・』
「クハッ!・・・」
「リーフェっ!『テンペスタースッ』」
「・・・!おとうさんっ!」
『父は私をかばって、ワイバーンに強力な魔法を打ち込みました。結果として森だったせいでもありますが父もその余波に巻き込まれて瀕死の重傷を負いました』
「・・・ウゥ・・・リーフェ・・・大丈夫か・・・」
「うん、うん、私は大丈夫だからぁ・・・」
「よかった・・・もう無茶はするな・・・」
「うん・・・だからぁっ・・・」
「リーフェ・・・生きてくれ・・・」
「おとうさんも生きてぇっ!一緒に帰ろぉっ!また美味しいご飯作ってよぉっ・・・」
「・・・おとうさんの・・・お金は・・・机の二番目の・・・」
「いいから喋らないでぇっ!」
「・・・リーフェ・・・し・・・・・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・」
「おとうさん?・・・おとうさんっ!?おとぉさぁんっ!」
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「父の死んだ後、私は冒険者をやめてギルド職員についての勉強を始めました。そしてギルド職員の免許を取った後、リュイを離れてここのイニティウム支部のギルドに勤めるようになりました」
「・・・」
ここまでの話はおよそ30分、聞いているとなんとも言えない気持ちだ、でもどうしてこのタイミングで・・・
「なんでこの話を僕にするんですか?」
「・・・怖いんです、また私のわがままで人を殺めてしまうのではないかって。いつも美味しいご飯を作ってくれるショウさんが少しだけ父の姿と重なって見えたんです」
「リーフェさん・・・」
「いいんです、少し気が楽になりましたし、あまり辛いことを体にためておくと体に毒ですから」
「・・・大丈夫ですよ」
「えっ・・・」
「いえ、その・・・」
俺は・・・彼女に何を言えばいい?
これ以上入ると湯あたりしてしまいますから、先に失礼しますね。そういってタオルもつけないで立ち上がったリーフェさんに思わず赤面してしまったが、それでも最後にデザート期待してますからね、という言葉を聞いてなんとか正気を取り戻した。
サクサクと草の上を素足で歩くリーフェさんの足音を聞きながら、今まで悩んでいた今日のデザートを思いついた。
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「ショウさん、今日は私もキッチンに立つんですか?」
「えぇ、料理は一緒に作ったほうが楽しいですから」
本日は隣にリーフェさんを呼んで、ある料理を作ってもらいまぁ~す。これはおそらく料理下手の彼女でも簡単に作れるはずっ!
「というか、エプロン持ってたんですね・・・」
「はい、結構前のですけど・・・」
いえいえ、よく似合ってます。少なからず人類兵器を生み出す人には見えませんっ!
「それではまずこのボウルの中に、卵と牛乳、あと砂糖をそれぞれこれくらい入れて混ぜてください」
「はっはい・・・こうですか?」
「えぇ、そのまま混ぜててください」
随分と混ぜる動作が不器用だがこのくらいでは何も起きないだろう。
「ショウさん、それは・・・トウィーで作ったものですか?」
「はい、僕たちの世界では『パン』と呼んでいますが」
それを薄く・・・リーフェさんは絶対多く食べるから八枚にしておこうか、そう思って少し厚めにパンを八枚切り分ける、さて隣のリーフェさんは・・・
「うぅ・・・、済みません不器用で」
「まぁ、大丈夫ですよこのくらい」
作った液体が各自いろんな方向へと飛び散っており、調理台はもちろん、彼女の頬や素足の見える部分にまで飛び散っており、さらに風呂狩りで肌が上気しているせいか随分と艶めかしく見える。
「いや・・・むしろ最高です」
「えっ?」
「いえいえ、なんでもありませんっ、じゃあ次にこのパンをこの液に浸してもらえますか?」
「はい」
そう言って、浸している間にこっちではフライパンの準備をする。
フライパンの上におそらく自家製のものであろう、牛乳で作ったバターを少しちぎってのせ温め溶かしてゆく、さてこちらは・・・
「・・・すみません」
「まぁ・・・たぶん大丈夫です」
先ほど切ったパン八枚を全部ボウルにぶち込んでいらしゃっていた。
「それでは、ここからは僕がやりますのでリーフェさんはお皿とこの前買った蜂蜜を用意していただけますか」
「はい、すみません役立たずで・・・」
「いえ、いいんです。むしろこういうことのあったほうが楽しいですから」
そう言われて、いそいそと食器棚から皿の類を出してゆく、そして俺は慎重にボウルからびたびたになってしまったパンを取り出しフライパンの上で焼いてゆく。
そして、部屋中が甘くいい匂いに包まれたところで。
「ショウさん、用意が終わりましたが・・・今日は何を作ってるんですか?」
「これはですねぇ・・・フレンチトーストという料理です」
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「うぅ~ん、おいひぃ・・・」
「うん、よくできてる」
いろいろあったが、なんとなくうまくいったとにかく今は目の前の食事を楽しむとしよう。
「ムグムグ・・・でもどうしてフレンチトーストなんですか?」
「どうしてって言われましても・・・、僕の好きな映・・・物語があって、そこで悪戦苦闘しながらこの料理を作るのが印象に残ってて」
「そうなんですかぁ・・・ムグムグ」
八切れ用意しておいて本当に良かったと思う、すでに五切れは彼女のお腹の中だ。
「その物語の内容とリーフェさんのお話が微妙にかぶって・・・」
「・・・ありがとうございます」
「どういたしまして」
そういってフライパンからもう一切れ彼女の皿に差し出す。
応援ありがとうございます!
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