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第2章 青の色
第85話 問題の色
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人生で船に乗るという経験は初めてだった。しかし、図鑑とかで見た人を乗せるための船に比べると、外の景色なんか全く見えないし、全くもって明かりがないから真っ暗だし、何より積荷のせいで狭い。
船の中に侵入することは成功した。これもカイさんが陽動をしてくれたおかげだろう、船員や憲兵がよそ見をしている間に船の横にある積荷などを運び出す用の横の入り口から侵入したわけだ。
「なにここ....臭いし狭いし暗いし。ねぇ、人間の乗る船っていつもこんなのなの?」
「いえ、違うとは思いますけど....てかウィーネさん。なんでそんなちっちゃくなっちゃったんですか?」
肩に乗っているウィーネが愚痴をこぼしているが、今の彼女の身長は15センチほどしかない。
「魔力消費を減らすためにちっちゃくなってるのっ! あんたのせいだからねっ!」
「え....あぁ」
そうか、憲兵に逃げる時にウィーネに手を貸してもらったけか。おそらくその時で。だが、精霊を名乗るにしては随分と魔力のキャパが小さいような気がする。
「あの火吹き蜥蜴も魔力消費を減らすために姿を見せないのよ。その剣に嵌ってるあいつの精霊石を見ればわかるでしょ」
言われて剣の鞘に嵌っているサリーの精霊石を見ようとするが、なにぶん暗いのでよくわからない。しかし、いつもは赤く光っている精霊石が全く光っていないということは魔力がないということなのだろう。よくよく考えてみればすでに何回か彼の力を使っている、ウィーネですら一回使っただけでこんなことになるのだから当然の結果といえば当然か。
「....っ、ここは....」
「レギナさん、手荒な真似をしてすみませんでした」
足元で寝かせていたレギナが目を覚ましたようだ、何を言われるかわかったものじゃないが、今後の彼女との関係は最悪なものとなるだろう。
「....貴様、わかっているんだろうな。ここを出た暁にはその首もらうぞ」
「....そうですね。覚悟しています。ですが、まだ僕は死ぬわけにはいきません」
全力で抵抗させてもらいます。
お互いの顔は見れない。普通だったら、今すぐ俺は彼女に殺されても仕方のないことをした。彼女の進む道を邪魔しているのは俺だ、本当はこんなところに彼女はいるべき存在ではない。
しかし、これはイニティウムにいるメルトさんのためにという以前に、王都騎士団のアランの依頼でもある。一体彼がどんな思惑で俺に彼女を誘拐させたかわからないが、ことが終わり次第彼に一度問いただす必要があると思った。
しばらく無言の状態が続くと、突如大きな揺れが体に襲いかかる。
どうやら出航したらしい。
「これからどうする気だ、イマイシキ ショウ。食料もない、水もない。それにここからリュイに行くのだって2週間はここで缶詰だろう。リュイに着く前に私たちが死ぬぞ」
「水については大丈夫です。よね、ウィーネさん?」
肩に乗っているウィーネを見ると、そっと首を振った。
え?
「私の魔力が少ないのもそうだけど、私は何もない空間から水を作るなんてできないわよ。大気中の水分を集めるにしても全然量が足りない上に魔力だってたくさん消費するんだから」
「え....嘘」
まず、水分供給0
「しょ、食料は....」
「ここの積荷のほとんどが軍事品だ。剣で腹でも満たすつもりか?」
食料0
終わった。
「ど、どうしよう....」
「知らん。だが、一つ考えがあるぞ」
それって....
「ここの船員に自首しろ。そしたら海の上では死なずにすむぞ」
「....」
どうしよう、一瞬考えてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
問題は山積みだった。まず、水と食料がない、これについては致命的だろう。そして昼と夜が全くもってわからない。太陽の光が当たらないことがこんなにも不安になるとは思いもしなかった。そして、もう一つの問題はだ。
「う....ぷっ」
「ハァ....ハァ....こっちに樽をよこせ....イマイシキ ショウ....」
「もうちょ....おえぇっ」
二人とも船に弱かったということだ。
「レギナさんも....弱いものがあったんですね....」
「遠征で....船に乗るのはこれだから嫌だったんだ....う....っ」
確か民間療法で遠くを見ると船酔いが改善されると聞いたことがあるが、あいにくここに窓なんてものはない。外の景色を見ることなんかできるわけもなかった。
「にしても人間て脆いわね。こんな揺れ程度で戻しちゃうなんて」
「う....っ....精霊って何食べて生きてるんですか....?」
「何って....」
人間の魔力よ。
「え....?」
「あれ? サリーから聞いてないの?」
いや、何となく想像はしていたが。しかし、俺は彼ら精霊のことを何も知らないに等しい、知っているのは人間に対して随分と傲慢な態度をとるということぐらいだ。
「精霊術師とか昔いたそうだけど、私たちの基本的に生存に必要なものは魔力ね。精霊術師は精霊を使役する対価として人間が魔力を与え、その代わりに精霊が力を貸すというものだったの」
「魔力って、どのくらい....」
「そうねぇ....今の人間20人くらいから搾り取ってようやく一人かしら?」
暴利だ。それにしても20人分でようやく一人ということは、現在俺は仮契約とはいえ、サリーの力を使っているわけでつまり一回力を使うたびに俺の体から20人分の魔力が流れ出ているということになる。恐ろしい話だ。
「他にも精霊って....」
「いるわよ、緑の精霊とか黄の精霊とか、あと私の妹で白の精霊とかいるわね」
妹までいるのか。ともかく精霊についてはとても横暴な存在だということは十分わかった。にしても、人間との契約で魔力を得て生きているというわけだが、もし契約できない精霊は一体どうやって生きているのだろうか。
「にしても最近の人間はみんな魔力が薄わね。昔はもっと濃い人間が多かったのだけれど」
「昔って....」
「今から1000年くらい前かしら?」
精霊も相当長生きだそうだ。そして、その前に俺たちの寿命が尽きる。船に乗り込んですでにどのくらい経ったかわからない。個人的にはすでに1日経ったと思ったが、現実では出航して4時間も経ってないだろう。こんな調子で乗っているのなら確実にリュイにたどり着けない。
試しに食料はないかと、積荷の一つを開けてはみたが中に入っているのは剣や槍、そして魔石の類だった。おそらく戦争で使う代物なのだろうが、以前リーフェさんと風呂を作った経験から魔石で水を作れないかと思った。しかし、あの時大量に発生した水で危うく洪水を起こしかけたことを思い出し、船でそんなものを、ましてやこんな狭い空間で行ったら確実に溺れ死ぬ上に船が沈みかねない。
「あぁ....食欲は起きないけど....喉が渇いた....」
大量に水分を消費した二人は確実に喉が渇いている。そして、もう一つの問題が。
「....トイレに行きたい....」
「....」
レギナも静かだが、おそらく同じことを考えている。野宿とかではお互いに不可侵で地面に穴を掘ったりなどと、サバイバルなトイレをしていたわけだがここは森の中でもなければ民家でもない。船の中であり、海の上である、そして積荷を入れておく倉庫である。トイレなんてあるわけがない。
そういえば、さっきゲロした樽がまだそこらへんに....
と思い、辺りを探して気づいた。暗い中にしばらくいたために、目が暗闇に慣れている。おかげで小さくなったウィーネや、グロッキーになっているレギナの姿もよく見える。
ということはだ。レギナにも当然よく俺の姿が見えるわけであって、つまり....
トイレをしているところがお互いよく見えてしまうということになる。
さすがに限界だった。
まずは天井。当然ながら木製だ、そして壁、これも木製である。ここに入る前の船全体の構造から考えたら、壁の向こう側は海だろう。問題は天井だ、積荷の木箱の上に立ち、天井に耳を当ててみる。すると、数人の歩き回る音が聞こえてきた。つまりこの上では人が活動して言うということがわかる。
次に、積荷をかき分けて奥の方へと進んで行く。方向で言えば船首の方だろう。再び積荷を踏み台にして天井に耳を当ててみる。今度は足音が聞こえてこない、となるとここの上は無人だ、となると船の性質から考えて人があまり踏み込まない場所は、武器庫、火薬庫、食料庫のどれかだろうか。
とりあえず、今はトイレであってほしい。
「....何をしてる....」
「とりあえず、穴を開けます」
腰のパレットソードを引き抜き、剣先の方を天井に突き立てる。そして、天井を削るようにして持ち手をクルクルと回して行く。すると、天井が削られて行き、削られた木の粉がパラパラと顔に落ちてゆく。
とにかく小さく穴を開けて上がどうなっているのかを確認しなくては。適当に穴を開けて上の人と鉢合わせというのは御免こうむりたい。
しばらく掘り進めること数分、剣を回す手が軽くなった。どうやら貫通したらしい。それにしても神話級の剣をこんなことに使うとは誰も思っていなかっただろう。
空いた穴に目を近づけて中を覗いてみる。穴の向こう側は、どうやらランプで中を明るくしているらしく、何かの部屋と思われる。しかし、人はいない。出られるとしたらここか。
再び剣先を穴に突っ込みクルクルと回して行く。やっていることは完全に器物損壊だが、レギナが何も言わないところを見ると相当参っているらしい。そして剣の幅と同じくらいに穴が広がると、そこから剣を動かして行き、板を丸く切って行く。ノコギリではないため切るのに大変苦労したが、それでも何とか人一人分通れるくらいの大きさの穴ができた。
「イマイシキ ショウ。何が見える」
穴に顔を突っ込み、その上に何があったのかを見る。
「....どうやら、火薬庫のようですね」
残念ながらトイレでもなければ食料庫でもなかったみたいだ。しかし、トイレではなくてよかったと思った。トイレの床に穴が空いていたらそれは不自然だろう。
「とにかく、上に上がってトイレを探してこい。今すぐに....っ!」
「は、はい....っ」
しかしレギナさん。先にトイレを見つけたら俺が先に入らしてもらいますからね。そう思いながら、両手を使い穴の端を掴みながら上へと登って行く。探すのはトイレ、食料庫は二の次だ。
船の中に侵入することは成功した。これもカイさんが陽動をしてくれたおかげだろう、船員や憲兵がよそ見をしている間に船の横にある積荷などを運び出す用の横の入り口から侵入したわけだ。
「なにここ....臭いし狭いし暗いし。ねぇ、人間の乗る船っていつもこんなのなの?」
「いえ、違うとは思いますけど....てかウィーネさん。なんでそんなちっちゃくなっちゃったんですか?」
肩に乗っているウィーネが愚痴をこぼしているが、今の彼女の身長は15センチほどしかない。
「魔力消費を減らすためにちっちゃくなってるのっ! あんたのせいだからねっ!」
「え....あぁ」
そうか、憲兵に逃げる時にウィーネに手を貸してもらったけか。おそらくその時で。だが、精霊を名乗るにしては随分と魔力のキャパが小さいような気がする。
「あの火吹き蜥蜴も魔力消費を減らすために姿を見せないのよ。その剣に嵌ってるあいつの精霊石を見ればわかるでしょ」
言われて剣の鞘に嵌っているサリーの精霊石を見ようとするが、なにぶん暗いのでよくわからない。しかし、いつもは赤く光っている精霊石が全く光っていないということは魔力がないということなのだろう。よくよく考えてみればすでに何回か彼の力を使っている、ウィーネですら一回使っただけでこんなことになるのだから当然の結果といえば当然か。
「....っ、ここは....」
「レギナさん、手荒な真似をしてすみませんでした」
足元で寝かせていたレギナが目を覚ましたようだ、何を言われるかわかったものじゃないが、今後の彼女との関係は最悪なものとなるだろう。
「....貴様、わかっているんだろうな。ここを出た暁にはその首もらうぞ」
「....そうですね。覚悟しています。ですが、まだ僕は死ぬわけにはいきません」
全力で抵抗させてもらいます。
お互いの顔は見れない。普通だったら、今すぐ俺は彼女に殺されても仕方のないことをした。彼女の進む道を邪魔しているのは俺だ、本当はこんなところに彼女はいるべき存在ではない。
しかし、これはイニティウムにいるメルトさんのためにという以前に、王都騎士団のアランの依頼でもある。一体彼がどんな思惑で俺に彼女を誘拐させたかわからないが、ことが終わり次第彼に一度問いただす必要があると思った。
しばらく無言の状態が続くと、突如大きな揺れが体に襲いかかる。
どうやら出航したらしい。
「これからどうする気だ、イマイシキ ショウ。食料もない、水もない。それにここからリュイに行くのだって2週間はここで缶詰だろう。リュイに着く前に私たちが死ぬぞ」
「水については大丈夫です。よね、ウィーネさん?」
肩に乗っているウィーネを見ると、そっと首を振った。
え?
「私の魔力が少ないのもそうだけど、私は何もない空間から水を作るなんてできないわよ。大気中の水分を集めるにしても全然量が足りない上に魔力だってたくさん消費するんだから」
「え....嘘」
まず、水分供給0
「しょ、食料は....」
「ここの積荷のほとんどが軍事品だ。剣で腹でも満たすつもりか?」
食料0
終わった。
「ど、どうしよう....」
「知らん。だが、一つ考えがあるぞ」
それって....
「ここの船員に自首しろ。そしたら海の上では死なずにすむぞ」
「....」
どうしよう、一瞬考えてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
問題は山積みだった。まず、水と食料がない、これについては致命的だろう。そして昼と夜が全くもってわからない。太陽の光が当たらないことがこんなにも不安になるとは思いもしなかった。そして、もう一つの問題はだ。
「う....ぷっ」
「ハァ....ハァ....こっちに樽をよこせ....イマイシキ ショウ....」
「もうちょ....おえぇっ」
二人とも船に弱かったということだ。
「レギナさんも....弱いものがあったんですね....」
「遠征で....船に乗るのはこれだから嫌だったんだ....う....っ」
確か民間療法で遠くを見ると船酔いが改善されると聞いたことがあるが、あいにくここに窓なんてものはない。外の景色を見ることなんかできるわけもなかった。
「にしても人間て脆いわね。こんな揺れ程度で戻しちゃうなんて」
「う....っ....精霊って何食べて生きてるんですか....?」
「何って....」
人間の魔力よ。
「え....?」
「あれ? サリーから聞いてないの?」
いや、何となく想像はしていたが。しかし、俺は彼ら精霊のことを何も知らないに等しい、知っているのは人間に対して随分と傲慢な態度をとるということぐらいだ。
「精霊術師とか昔いたそうだけど、私たちの基本的に生存に必要なものは魔力ね。精霊術師は精霊を使役する対価として人間が魔力を与え、その代わりに精霊が力を貸すというものだったの」
「魔力って、どのくらい....」
「そうねぇ....今の人間20人くらいから搾り取ってようやく一人かしら?」
暴利だ。それにしても20人分でようやく一人ということは、現在俺は仮契約とはいえ、サリーの力を使っているわけでつまり一回力を使うたびに俺の体から20人分の魔力が流れ出ているということになる。恐ろしい話だ。
「他にも精霊って....」
「いるわよ、緑の精霊とか黄の精霊とか、あと私の妹で白の精霊とかいるわね」
妹までいるのか。ともかく精霊についてはとても横暴な存在だということは十分わかった。にしても、人間との契約で魔力を得て生きているというわけだが、もし契約できない精霊は一体どうやって生きているのだろうか。
「にしても最近の人間はみんな魔力が薄わね。昔はもっと濃い人間が多かったのだけれど」
「昔って....」
「今から1000年くらい前かしら?」
精霊も相当長生きだそうだ。そして、その前に俺たちの寿命が尽きる。船に乗り込んですでにどのくらい経ったかわからない。個人的にはすでに1日経ったと思ったが、現実では出航して4時間も経ってないだろう。こんな調子で乗っているのなら確実にリュイにたどり着けない。
試しに食料はないかと、積荷の一つを開けてはみたが中に入っているのは剣や槍、そして魔石の類だった。おそらく戦争で使う代物なのだろうが、以前リーフェさんと風呂を作った経験から魔石で水を作れないかと思った。しかし、あの時大量に発生した水で危うく洪水を起こしかけたことを思い出し、船でそんなものを、ましてやこんな狭い空間で行ったら確実に溺れ死ぬ上に船が沈みかねない。
「あぁ....食欲は起きないけど....喉が渇いた....」
大量に水分を消費した二人は確実に喉が渇いている。そして、もう一つの問題が。
「....トイレに行きたい....」
「....」
レギナも静かだが、おそらく同じことを考えている。野宿とかではお互いに不可侵で地面に穴を掘ったりなどと、サバイバルなトイレをしていたわけだがここは森の中でもなければ民家でもない。船の中であり、海の上である、そして積荷を入れておく倉庫である。トイレなんてあるわけがない。
そういえば、さっきゲロした樽がまだそこらへんに....
と思い、辺りを探して気づいた。暗い中にしばらくいたために、目が暗闇に慣れている。おかげで小さくなったウィーネや、グロッキーになっているレギナの姿もよく見える。
ということはだ。レギナにも当然よく俺の姿が見えるわけであって、つまり....
トイレをしているところがお互いよく見えてしまうということになる。
さすがに限界だった。
まずは天井。当然ながら木製だ、そして壁、これも木製である。ここに入る前の船全体の構造から考えたら、壁の向こう側は海だろう。問題は天井だ、積荷の木箱の上に立ち、天井に耳を当ててみる。すると、数人の歩き回る音が聞こえてきた。つまりこの上では人が活動して言うということがわかる。
次に、積荷をかき分けて奥の方へと進んで行く。方向で言えば船首の方だろう。再び積荷を踏み台にして天井に耳を当ててみる。今度は足音が聞こえてこない、となるとここの上は無人だ、となると船の性質から考えて人があまり踏み込まない場所は、武器庫、火薬庫、食料庫のどれかだろうか。
とりあえず、今はトイレであってほしい。
「....何をしてる....」
「とりあえず、穴を開けます」
腰のパレットソードを引き抜き、剣先の方を天井に突き立てる。そして、天井を削るようにして持ち手をクルクルと回して行く。すると、天井が削られて行き、削られた木の粉がパラパラと顔に落ちてゆく。
とにかく小さく穴を開けて上がどうなっているのかを確認しなくては。適当に穴を開けて上の人と鉢合わせというのは御免こうむりたい。
しばらく掘り進めること数分、剣を回す手が軽くなった。どうやら貫通したらしい。それにしても神話級の剣をこんなことに使うとは誰も思っていなかっただろう。
空いた穴に目を近づけて中を覗いてみる。穴の向こう側は、どうやらランプで中を明るくしているらしく、何かの部屋と思われる。しかし、人はいない。出られるとしたらここか。
再び剣先を穴に突っ込みクルクルと回して行く。やっていることは完全に器物損壊だが、レギナが何も言わないところを見ると相当参っているらしい。そして剣の幅と同じくらいに穴が広がると、そこから剣を動かして行き、板を丸く切って行く。ノコギリではないため切るのに大変苦労したが、それでも何とか人一人分通れるくらいの大きさの穴ができた。
「イマイシキ ショウ。何が見える」
穴に顔を突っ込み、その上に何があったのかを見る。
「....どうやら、火薬庫のようですね」
残念ながらトイレでもなければ食料庫でもなかったみたいだ。しかし、トイレではなくてよかったと思った。トイレの床に穴が空いていたらそれは不自然だろう。
「とにかく、上に上がってトイレを探してこい。今すぐに....っ!」
「は、はい....っ」
しかしレギナさん。先にトイレを見つけたら俺が先に入らしてもらいますからね。そう思いながら、両手を使い穴の端を掴みながら上へと登って行く。探すのはトイレ、食料庫は二の次だ。
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