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裁判
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幽閉されて四日目、本日は裁判の日、お天気は青空!うん!裁判日和だね!
今朝は早朝から起こされることもなく。
もう水を汲む必要も無いからでしょうね。
いつもよりは少し遅くに、水を汲む必要が無いからか、昨日の昼と夜に来た騎士が一人で朝ご飯を持ってきました。
安定の具の無い薄いスープに硬いパンでした。
窓辺に置いてあるリンゴを見て、言いました。
「食べなかったのか?」
「この状況で食べる気になる人、居る?」
「これ…母が焼いたんだ…お前にって…。」
紙に包んだクッキーを出しだしてきた。
息子を助けて欲しいのでしょうね…。
「…ありがと…。」
クッキーを受け取り、パンやスープには手を付けず、クッキーだけ食べた。
「裁判は午前中にやるそうだ…1時間かそのくらい経ったら、迎えのものが来るから。
俺は兄を運んでおくから…。」
クッキー以外は食べるつもりも無かったので、さっさと昨日の残り水で顔を洗い、身支度を整えて…と言っても、何も出来る事は無いけど、座ってその時を待っていた。
扉が開き、いつもとは違う騎士が二人、立っていた。
「これから王宮内の裁判所へ連行する。途中、暴れるような事があれば、容赦はしないから、そのつもりで。」
私は無言で立ち上がりました。
騎士に挟まれるように歩き、塔の外へ出ました。
塔から裁判所のある棟へはかなり遠い様で、罪人が乗る、鉄格子の嵌められた馬車に乗せられました。
更に馬車を降り、裁判所へ入っていくと、昨日の騎士と、車椅子に乗せられた、真っ青な顔でぐったりとした青年が居ました。
裁判が始まり、予想通り私を魔族で、国に仇名すものと決めつける内容の罪状を挙げられていきました。
そうそう!聖女じゃないのに聖女を名乗ったというものもありました。
私、一度も自分を聖女とは言っていない…何なら何かの間違いではないかと言っていましたが。
「何か反論はあるかね?」
「まず第一に、私は自ら望んでこの国へ来たわけではありません。
あなた方に無理やり、私の意思を無視して連れてこられたものです。
第二に、私は魔族ではありません。
そもそも聖女かどうかも、私は最初から一貫して何かの間違いではないかと訴えていたものを、聞かなかったのはあなた方です。
そして私に加護を与えてくれた守護獣ですが、あれも魔物ではありません。
龍と言って、私の居た世界では、神獣です。」
私が述べると、騒然となりました。
全て私を批判する声でしたが。
「裁判長!一つ確認があります!」
「述べよ…。」
例の騎士が、挙手をして立ち上がりました。
「この方が聖女なのか聖女じゃないのか、聖女でなかったのだとすれば、兄が失敗したという事になります。
しかし兄に問いただしたくても、この通り、兄は昏睡状態のままです。
どうかここで、この方に兄の治療をお願いしたいのですが!本当に聖女なら、兄を目覚めさせられるはずです!」
「…まあ…どうせ無理だろうが…よかろう…試してみるが良い。」
「ノエル殿…お願いします。」
実は昨日、渋々ですが、私の汚名を少しでも晴らすためにも、法廷であの魔術師を助けるという事になったのでした。
やり方は、姿は隠したままで、ロンが私の耳元で教えてくれることになっていました。
私は、車いすの前に膝立ち、耳元でロンが言う通り、両手をその青年の両手に重ねました。
目を瞑り、私の力を注ぎこむようなイメージで念じました。
やがて、彼の手がピクっと動いた気がして、目を開けると、目の前の青年が両目を開いてこちらを見つめていました。
何が起きたのか、私は分からなかったのですが、後で騎士に聞いた話では、私が白っぽく光り出し、やがてその光が魔術師の中へ注ぎ込まれるように入っていき、魔術師も光り出し、彼の光が収まった時、彼の意識が戻ったそうです。
「せ…聖女さま?!私は召喚に成功したのか?!」
嬉しそうな彼の顔とは裏腹に、私の顔は少し引き攣っていました。
しかし法廷内は騒然となりました。
「やはり本物の聖女なのではないか?」と言い出すもの。
「そんなはずはない!あの女は魔族だ!魔族の魔法でやったんだ!」と言い出すもの。
私を聖女ではないかと言い出した声は、魔術師に多く感じました。
神殿関係者は、魔族であると言い張りました。
結局、国王陛下と裁判長による審議の結果、私は魔族であり、魔物の森へと追放となりました。
まあ処刑されないだけマシだね…。
「…では…魔族を召喚してしまった兄の罪は、私が被ります。私もともに魔物の森へ行きます。
どうか兄の事はお助けください。」
騎士はそう国王陛下に申し上げた。
「分かった…お前たち兄弟のこれまでの功績に免じ、お前の兄の罪は問わないものとしよう。
そしてお前はその魔族とともに、魔物の森へ追放するものとする。
二度と我が国へは立ち入らないように!良いな!」
「え!?何を言っているの?!追放されるのは私だけで充分でしょ?」
「いや…これまでの罪と、そして兄を助けてもらった恩があるから、これからはお前を守る…。」
そんな様子に、意識を取り戻したばかりの魔術師の兄も、何が起きているのか理解が出来ず、オロオロするばかりだた。
騎士と私は、文字通り着のみ着のままで、罪人を運ぶ馬車へ再び乗せられた。
鉄格子に魔術師の兄が縋り付いてきたが、他の騎士や魔術師に引き剝がされた。
こうして私たちは、国境沿いにある、魔物だらけの森、魔物の森と呼ばれている森の入口へ連れてこられた。
私たちを下すと、連れてきた騎士の一人が、腰の剣を一本、差し出してきた。
「取り上げられていただろ?これを持っていけ!死ぬなよ!」
そういって馬車は去っていきました。
今朝は早朝から起こされることもなく。
もう水を汲む必要も無いからでしょうね。
いつもよりは少し遅くに、水を汲む必要が無いからか、昨日の昼と夜に来た騎士が一人で朝ご飯を持ってきました。
安定の具の無い薄いスープに硬いパンでした。
窓辺に置いてあるリンゴを見て、言いました。
「食べなかったのか?」
「この状況で食べる気になる人、居る?」
「これ…母が焼いたんだ…お前にって…。」
紙に包んだクッキーを出しだしてきた。
息子を助けて欲しいのでしょうね…。
「…ありがと…。」
クッキーを受け取り、パンやスープには手を付けず、クッキーだけ食べた。
「裁判は午前中にやるそうだ…1時間かそのくらい経ったら、迎えのものが来るから。
俺は兄を運んでおくから…。」
クッキー以外は食べるつもりも無かったので、さっさと昨日の残り水で顔を洗い、身支度を整えて…と言っても、何も出来る事は無いけど、座ってその時を待っていた。
扉が開き、いつもとは違う騎士が二人、立っていた。
「これから王宮内の裁判所へ連行する。途中、暴れるような事があれば、容赦はしないから、そのつもりで。」
私は無言で立ち上がりました。
騎士に挟まれるように歩き、塔の外へ出ました。
塔から裁判所のある棟へはかなり遠い様で、罪人が乗る、鉄格子の嵌められた馬車に乗せられました。
更に馬車を降り、裁判所へ入っていくと、昨日の騎士と、車椅子に乗せられた、真っ青な顔でぐったりとした青年が居ました。
裁判が始まり、予想通り私を魔族で、国に仇名すものと決めつける内容の罪状を挙げられていきました。
そうそう!聖女じゃないのに聖女を名乗ったというものもありました。
私、一度も自分を聖女とは言っていない…何なら何かの間違いではないかと言っていましたが。
「何か反論はあるかね?」
「まず第一に、私は自ら望んでこの国へ来たわけではありません。
あなた方に無理やり、私の意思を無視して連れてこられたものです。
第二に、私は魔族ではありません。
そもそも聖女かどうかも、私は最初から一貫して何かの間違いではないかと訴えていたものを、聞かなかったのはあなた方です。
そして私に加護を与えてくれた守護獣ですが、あれも魔物ではありません。
龍と言って、私の居た世界では、神獣です。」
私が述べると、騒然となりました。
全て私を批判する声でしたが。
「裁判長!一つ確認があります!」
「述べよ…。」
例の騎士が、挙手をして立ち上がりました。
「この方が聖女なのか聖女じゃないのか、聖女でなかったのだとすれば、兄が失敗したという事になります。
しかし兄に問いただしたくても、この通り、兄は昏睡状態のままです。
どうかここで、この方に兄の治療をお願いしたいのですが!本当に聖女なら、兄を目覚めさせられるはずです!」
「…まあ…どうせ無理だろうが…よかろう…試してみるが良い。」
「ノエル殿…お願いします。」
実は昨日、渋々ですが、私の汚名を少しでも晴らすためにも、法廷であの魔術師を助けるという事になったのでした。
やり方は、姿は隠したままで、ロンが私の耳元で教えてくれることになっていました。
私は、車いすの前に膝立ち、耳元でロンが言う通り、両手をその青年の両手に重ねました。
目を瞑り、私の力を注ぎこむようなイメージで念じました。
やがて、彼の手がピクっと動いた気がして、目を開けると、目の前の青年が両目を開いてこちらを見つめていました。
何が起きたのか、私は分からなかったのですが、後で騎士に聞いた話では、私が白っぽく光り出し、やがてその光が魔術師の中へ注ぎ込まれるように入っていき、魔術師も光り出し、彼の光が収まった時、彼の意識が戻ったそうです。
「せ…聖女さま?!私は召喚に成功したのか?!」
嬉しそうな彼の顔とは裏腹に、私の顔は少し引き攣っていました。
しかし法廷内は騒然となりました。
「やはり本物の聖女なのではないか?」と言い出すもの。
「そんなはずはない!あの女は魔族だ!魔族の魔法でやったんだ!」と言い出すもの。
私を聖女ではないかと言い出した声は、魔術師に多く感じました。
神殿関係者は、魔族であると言い張りました。
結局、国王陛下と裁判長による審議の結果、私は魔族であり、魔物の森へと追放となりました。
まあ処刑されないだけマシだね…。
「…では…魔族を召喚してしまった兄の罪は、私が被ります。私もともに魔物の森へ行きます。
どうか兄の事はお助けください。」
騎士はそう国王陛下に申し上げた。
「分かった…お前たち兄弟のこれまでの功績に免じ、お前の兄の罪は問わないものとしよう。
そしてお前はその魔族とともに、魔物の森へ追放するものとする。
二度と我が国へは立ち入らないように!良いな!」
「え!?何を言っているの?!追放されるのは私だけで充分でしょ?」
「いや…これまでの罪と、そして兄を助けてもらった恩があるから、これからはお前を守る…。」
そんな様子に、意識を取り戻したばかりの魔術師の兄も、何が起きているのか理解が出来ず、オロオロするばかりだた。
騎士と私は、文字通り着のみ着のままで、罪人を運ぶ馬車へ再び乗せられた。
鉄格子に魔術師の兄が縋り付いてきたが、他の騎士や魔術師に引き剝がされた。
こうして私たちは、国境沿いにある、魔物だらけの森、魔物の森と呼ばれている森の入口へ連れてこられた。
私たちを下すと、連れてきた騎士の一人が、腰の剣を一本、差し出してきた。
「取り上げられていただろ?これを持っていけ!死ぬなよ!」
そういって馬車は去っていきました。
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