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幽閉 3
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私の命はあと一日か…。
流石に今朝は、寝込みを叩き起こされる前に起きました。
身支度を済ませて待っていると、いつもの騎士たちがやってきました。
「何だ、今朝はもう起きていたのか…。水汲みの時間だ!桶を持ってついてこい!」
私は黙ってついて行きました。
あと一日だから、もう水も残り少なくても別に良いんだけどな…。
でも言い返すのも面倒だから、大人しくついて行きました。
それでもやはり階段はきついし、どうせもう余命わずかだしと思い、桶にはいつもの1/3しか水を汲みませんでした。
それでも十分、重いけど。
すると騎士の一人が言いました。
「何だ!それでは足りないだろ!」
「明日には裁判ですよね…どうせ真実がどうであれ、私は有罪になるのでしょ?私の命は今夜限り…だったらもうこれだけあれば十分です…。」
「…。」
投げやりな私の返事に、彼らも黙ってしまいました。
いつもは乱暴に置いて行くパンとスープも、心なしか、トレイを静かにライティングデスクへ置いて行きました。
食欲は無かったので、今朝もパンは半分しか食べず、残りはまた窓辺に千切って並べておきました。
そうしておくと、いつの間にか、鳥が食べて行ってくれるから。
何だかもう自暴自棄になりながら、元の世界で好きだった歌を口ずさんでいました。
それを聞いているものが居るとは思わずに。
昼過ぎ、そっと扉が開きました。
サッと入ってきたのは、いつもの騎士たちのうちの一人です。
「何か?」
私が聞くと、そのまま聞き返されました。
「お前はなぜ、ここにいる?」
「え!?あなたたちが聖女召喚の儀とやらで、無理やり私をこの世界に連れてきたんですよ?
でも私は、私が聖女だなんて、分からないし。
そもそも私は元の世界では聖女でも何でもなかったし。
だから本当に聖女なのかどうか、確認した方が?と提案して。
それで今度は聖女何とかの儀とか言って、ガラスの器に手をかざすように言われて。
その通りにしたら、出てきたものを見て、魔物だの私の事を魔族だの言い出して、そしてここに閉じ込められたんですよ?
好き好んでこんなところに居るわけじゃないし、そもそも好き好んでこの世界へ来たわけでもないです。」
「現れたものは何だったのだ?」
「白龍です…この世界ではどうか知りませんが、龍は私が元居た世界では、神様、神獣だったのですけどね。
それで…そんな事を聞いて、どうするのですか?
私は明日には裁判で、どうせ有罪ですよ…。
この世界の人たちって、本当に鬼畜ですよね…。
無理やり勝手に攫ってきて、気に入らなければ魔族だの何だのと…。
だったら最初から他所の世界の人間になんて頼らずに、自分たちのことは自分たちで何とかすれば良いじゃない!
そもそも相手の意思を無視して勝手に連れてくるとか、本当に最低だわ!」
もうここで処刑されても良いやと思い、最後に思い切り八つ当たりも込めて、やってきた騎士を罵りました。
「そうだな…お前からみたら、無理やり勝手に連れてこられたのだったな…。すまなかった…。」
「…まず!何であなたが謝るの?!連れてきたのはあなたではないでしょ。
謝るなら国王と神殿と魔術師でしょ!」
「その聖女召喚の儀を行った魔術師は、俺の双子の兄だ…。」
「だったらその兄に謝らせなさいよ!っていうか、元の世界に帰して欲しいよ…何で私、こんなところでこんな目に遭わなくちゃいけないのよ…。」
「本当にすまない…。兄は聖女召喚の儀で魔力枯渇となり、昏睡状態なんだ…。
お前なら兄を助けられるか?」
「いや、私、聖女じゃないから…。」
『助けられるよ…』
私が聖女じゃないからと答えると、どこからか、ロンが現れました。
「何だ?!魔物か?!」
騎士は咄嗟に腰の剣に手を掛けました。
「待って!待って!待って!これが龍だから!神獣だから!」
慌てて止めると、ロンはその辺を泳ぐように飛び回りながら言いました。
『ノエル!迎えに来たよ!この国の奴らなんてほっといて、行こう!』
「待て!待て!待て!お前は…いや、貴方様は本当に神獣なのか?!そしてこの女は本当に兄を助けられるのか?」
『…神獣だよ…それにノエルには、この世界の人間よりもはるかに強い魔力…というよりも神聖力を持っているから、助けられるよ…。でもノエルには助ける義理なんて無いだろ?』
「…っ…確かにそうなのだが…それでも兄を助けてもらえないだろうか?!」
「無理よ…私、ここから出られないし、明日には裁判で有罪でしょ?助けたいかどうかの前に、助けられないもの」
「…明日、裁判の前に、兄を法廷へ運んだら、助けてもらえるだろうか?」
その夜…最後の晩餐になるわけですが、昼間にこっそり来た騎士が、晩御飯を運んできました。
最後の晩餐らしく、いつものスープと硬いパンの他に、赤いリンゴが載っていました。
流石に今朝は、寝込みを叩き起こされる前に起きました。
身支度を済ませて待っていると、いつもの騎士たちがやってきました。
「何だ、今朝はもう起きていたのか…。水汲みの時間だ!桶を持ってついてこい!」
私は黙ってついて行きました。
あと一日だから、もう水も残り少なくても別に良いんだけどな…。
でも言い返すのも面倒だから、大人しくついて行きました。
それでもやはり階段はきついし、どうせもう余命わずかだしと思い、桶にはいつもの1/3しか水を汲みませんでした。
それでも十分、重いけど。
すると騎士の一人が言いました。
「何だ!それでは足りないだろ!」
「明日には裁判ですよね…どうせ真実がどうであれ、私は有罪になるのでしょ?私の命は今夜限り…だったらもうこれだけあれば十分です…。」
「…。」
投げやりな私の返事に、彼らも黙ってしまいました。
いつもは乱暴に置いて行くパンとスープも、心なしか、トレイを静かにライティングデスクへ置いて行きました。
食欲は無かったので、今朝もパンは半分しか食べず、残りはまた窓辺に千切って並べておきました。
そうしておくと、いつの間にか、鳥が食べて行ってくれるから。
何だかもう自暴自棄になりながら、元の世界で好きだった歌を口ずさんでいました。
それを聞いているものが居るとは思わずに。
昼過ぎ、そっと扉が開きました。
サッと入ってきたのは、いつもの騎士たちのうちの一人です。
「何か?」
私が聞くと、そのまま聞き返されました。
「お前はなぜ、ここにいる?」
「え!?あなたたちが聖女召喚の儀とやらで、無理やり私をこの世界に連れてきたんですよ?
でも私は、私が聖女だなんて、分からないし。
そもそも私は元の世界では聖女でも何でもなかったし。
だから本当に聖女なのかどうか、確認した方が?と提案して。
それで今度は聖女何とかの儀とか言って、ガラスの器に手をかざすように言われて。
その通りにしたら、出てきたものを見て、魔物だの私の事を魔族だの言い出して、そしてここに閉じ込められたんですよ?
好き好んでこんなところに居るわけじゃないし、そもそも好き好んでこの世界へ来たわけでもないです。」
「現れたものは何だったのだ?」
「白龍です…この世界ではどうか知りませんが、龍は私が元居た世界では、神様、神獣だったのですけどね。
それで…そんな事を聞いて、どうするのですか?
私は明日には裁判で、どうせ有罪ですよ…。
この世界の人たちって、本当に鬼畜ですよね…。
無理やり勝手に攫ってきて、気に入らなければ魔族だの何だのと…。
だったら最初から他所の世界の人間になんて頼らずに、自分たちのことは自分たちで何とかすれば良いじゃない!
そもそも相手の意思を無視して勝手に連れてくるとか、本当に最低だわ!」
もうここで処刑されても良いやと思い、最後に思い切り八つ当たりも込めて、やってきた騎士を罵りました。
「そうだな…お前からみたら、無理やり勝手に連れてこられたのだったな…。すまなかった…。」
「…まず!何であなたが謝るの?!連れてきたのはあなたではないでしょ。
謝るなら国王と神殿と魔術師でしょ!」
「その聖女召喚の儀を行った魔術師は、俺の双子の兄だ…。」
「だったらその兄に謝らせなさいよ!っていうか、元の世界に帰して欲しいよ…何で私、こんなところでこんな目に遭わなくちゃいけないのよ…。」
「本当にすまない…。兄は聖女召喚の儀で魔力枯渇となり、昏睡状態なんだ…。
お前なら兄を助けられるか?」
「いや、私、聖女じゃないから…。」
『助けられるよ…』
私が聖女じゃないからと答えると、どこからか、ロンが現れました。
「何だ?!魔物か?!」
騎士は咄嗟に腰の剣に手を掛けました。
「待って!待って!待って!これが龍だから!神獣だから!」
慌てて止めると、ロンはその辺を泳ぐように飛び回りながら言いました。
『ノエル!迎えに来たよ!この国の奴らなんてほっといて、行こう!』
「待て!待て!待て!お前は…いや、貴方様は本当に神獣なのか?!そしてこの女は本当に兄を助けられるのか?」
『…神獣だよ…それにノエルには、この世界の人間よりもはるかに強い魔力…というよりも神聖力を持っているから、助けられるよ…。でもノエルには助ける義理なんて無いだろ?』
「…っ…確かにそうなのだが…それでも兄を助けてもらえないだろうか?!」
「無理よ…私、ここから出られないし、明日には裁判で有罪でしょ?助けたいかどうかの前に、助けられないもの」
「…明日、裁判の前に、兄を法廷へ運んだら、助けてもらえるだろうか?」
その夜…最後の晩餐になるわけですが、昼間にこっそり来た騎士が、晩御飯を運んできました。
最後の晩餐らしく、いつものスープと硬いパンの他に、赤いリンゴが載っていました。
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